第36話 ドグラスさんの鍛治師魂に火をつけちゃったよ
地下32階層を攻略した翌日。
今日は完全休養日。絶対何もしないからね。
そしてその翌日、気力が回復したから外に出る。
今日もダンジョンには行かない予定。
街をぶらぶら歩いていると、宝石屋のショーケースにひと際輝く宝石を見つけた。
もしやと思い聞いてみると、ダイヤモンドだという。
この世界、ダイヤモンドよりも硬い金属もあるし、あんまりダイヤモンドって聞かないんだけど、装飾品としては結構取引されているみたいだ。
「ダイヤモンドって炭素が高温高圧の環境で作られて、マグマの噴火で地表に出てくるんだったっよな。
収納に溶岩がたくさん入ってるけど、この中には含まれてないのかな?」
まさかと思いながらインベントリを開いてみると....あったよ、ありました。
大量のダイヤモンドの原石。
幾つか手に取ってみると結構大きい。ソフトボールくらいはごろごろあって、中にはバレーボールくらいのものも。
たしか地球上で産出された最大の原石が600グラムくらいで野球ボールよりも少し小さいくらいだって聞いたことがある。
それよりもデカいのがごろごろなんて。
最大の原石がいくらかは知らないけど、少なくとも数千億円くらいはするんじゃないかな。
「金は有り余ってるし...誰にも言わずにそっとしておこう。うん! きっとそれが一番だよ」
ちなみに、その宝石屋で売っていたダイヤモンドの値段は日本で買うのと同じくらいでした。
宝石屋を離れてぶらぶら散歩は続く。
街の中心部に向かって延びる何本かの放射状道路のうちの一本、高級店が並ぶ商店街を歩いている。
さすがに高級店が並ぶ商店街だけあって、道も広くて綺麗だ。
大型の馬車が4台は並んで通れる道の左右には、絢爛豪華な装飾の店が軒を連ね、そのショーケースは眩いばかりの光を放っている。
道行く人もまばらで、この辺りに来る人のほとんどは馴染みの店に馬車で乗り付ける。
道幅が異常に広いのも、店の前に場所を横付けしても通行の妨げにならないようにするためだ。
そんな高貴な場所に何故俺がいるのかって?
俺んちからドグラスさんの店までこの道が近道だからだよ。
実はドグラスさん、世界が認める超一級の鍛治集団であるドワーフの中でも、超一級と言われるぐらいの超スーパー鍛治師なのだ。
本来ならこの高貴な通りに店を構えていても何ら問題ないのだが、本人が嫌っていてこの通りから裏路地を2本ほど入った場所に店を構えている。
俺の屋敷からはこの通りを少し歩いて、横切るのが最短距離なんだ。
ガラガラガラ
「いらっしゃい...って、ハヤトか、よく来たな」
この店、ドワーフ特有の無愛想な塩対応と、あまりにも高価すぎる価格のせいで、NPCはめったに買いに来ない。いや来れない。
そんなんじゃ潰れるんじゃっていうなかれ。
ドグラスさんはゲームの中で攻略に必要な武器をいくつも作ってくれるキーマンなんだから、経営難で潰れるわけがない。
そう、プレーヤーの出入りは激しいのだ。
俺もプレーヤーだからその存在を知っていただけなんだ。
「こんにちは、ドグラスさん。今日は装備をメンテして欲しくって来ました」
「どれ、見せてみろ...ふん、だいぶ傷んでいるな。ダイヤモンドの状況はどうだ?」
「ええ、地下32階層まで攻略しましたよ。ただ、地下32階層は溶岩とマグマが飛び散る火山地帯でして、この装備にかなり助けられました」
「なるほどな、ミスリルと竜皮がこれほど傷むとは、よほどのことだな。
しかし弱った。補修するにも竜皮が足りんのだ」
「これって使えます?」
俺はインベントリから竜皮を大量に取り出す。
「おおっ!!!なんじゃこの大量の竜皮は!!!」
「ダイヤモンドの地下20階層以下にはドラゴンが大量に出てくるんですよ。
他にはこんなものも」
ドラゴン以外にも採取しておいた様々な魔物の部位を取り出しては並べる。
「あひゃーーー!!見たことも無い素材が満載じゃ!!
創作意欲が湧いてきたぞい!!ハヤト、これ置いていけ!最高の逸品を作っといてやろう!!」
「よろしくお願いします」
もうドグラスさんはこちらを見ていない。しばらくは閉店の看板が掛かってそうだな。
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