第37話 拉致されて王様に会うぞ

ドグラスさんに新装備をお願いした翌日、商工ギルドに行くと、ショウコウさんにいきなり拉致られた。


無理やり豪華な服に着せ替えられ、これまた豪華な馬車に乗せられる。


しばらく進むと、転移門に到着した。


この転移門、ゲームの設定では、超古代文明の遺物で、全世界に20ほどあるらしい。


この街が栄えているのはダンジョンがあるからだけではなく、この転移門があるからだ。


逆に言えばダンジョンがあるから転移門があるのかもしれないが。


そんなゲームの都合はさておき、この世界の転移門がある場所のほとんどは王都かダンジョン都市である。


「ショウコウさん、転移門って、どこに行くんですか?」


「ああ、すまない言ってなかったな。王都だ。お前さんを陛下が呼んでおられるのだ」


「陛下って、王様?この国の王って、えーーっと、名前が思い出せん」


「名前だって?陛下は陛下だろ」


うん、ゲームの進行に関わる重要人物じゃないみたいだ。


「で、その陛下がなぜ俺を?」


「それはお前が聞け。俺も分からん」


さいですか...



衛兵に導かれ、馬車ごと転移門を潜るとそこは王都である。


まっすぐに延びる綺麗な街道を馬車が走り出すと、10分ほどで白亜の巨城が見えてきた。


さらに40分くらいで巨大な門の前に到着。


お城からの使いの人に渡されたという割符を見せると、あっさり城内へと入れてくれた。


そしてそこからおよそ30分。綺麗に手入れされた庭園を馬車で進むと、ようやく目的の建物へ到着。


どうやら王家の人達が私的な面会に使用する迎賓館のようだ。


何か法律に触ることでもしたのかと不安でいっぱいだったが、私的な面会ということでとりあえずは安堵する。


だが、まだ安心は出来ないぞ。


ショウコウさんと共に建物の中に入って行く。


建物に入ったからってそこらにある壺を割ったりはしないよ。


あれは、そういうゲームだからね。NPCの俺がやったら大ごとだ。


長い通路の途中で、ひとりの男性が立っていた。


「陛下よりの使いの方が来られましたので参上いたしました」


「わたしは、王室の私的秘書です。この度はご足労いただき有難うございました。

陛下の元までご案内いたしますので、こちらへどうぞ」


ちょっと無機質なんだけど、この人も名乗らないからAさんにしとこうかな。


「陛下、お客様をお連れ致しました」


「Aか、入ってもらえ」


ごめんね陛下の秘書さん。


見るからに高価な扉を開けると、中は...結構シンプルな造りの16畳ほどの部屋でした。


ソファーに腰掛けている陛下が立ち上がり、こちらへ来いと手招きする。


「ファンタスで商工ギルドのギルドマスターをしておりますショウコウと申します。

陛下のお呼びにより、参上いたしました。


こちらは同行を求めておられましたハヤトでございます」


ショウコウさんの丁寧語は慣れないから吹き出しそうになるけどジッと我慢の子。


「ハヤトでございます。本日はお呼びにより、参上いたしました」


「よく来てくれたな、ショウコウ、ハヤト。今日は公式の場ではない。よってそんなに硬くならんで良いぞ」


そんなことを言ったって、あんた王様だからね。この国の最高権力者だからね。


「そこに座るがよい」


指示されたのは王様の前にあるソファー。見るからにふかふかで一回座ったら立てそうにない気がする。


「では」


ショウコウさんが座ったので、俺も座る。やっぱり沈む。結構沈む。ぎり立てるかな。


「実はあまり時間が取れないので手短に言おう。ハヤト、お前はダイヤモンドのダンジョンを探索しておるのじゃな。


何処まで行った?」


「はい、地下32階層をクリアしたところです」


「なに!地下32階層だと!

もうそんなところまで行っておるのか!!ならば好都合、是非頼まれて欲しいことがあるのじゃ」



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