第32話 新たな疑問と仮説

ダイヤモンドのダンジョン地下30階層で感じたモヤモヤ感。


気になるんだけど、危険なことはできるだけ避けよう。


その日はそこで探索を止めて冒険者ギルドへ戻った。


順調にレベルアップしていて、この前は転移魔法も覚えたしね。


戻って来るのもかなり楽になったぜ。


モヤモヤの件はボウケンさんに報告。


ボウケンさんも気になるみたいで、ギルドにある古い文献も含めて調べてくれるって。


ひと通り報告を終えて、屋敷に戻る。


久しぶりの帰宅も、セバスさん達が温かく迎えてくれる。


幸せを感じるね。


風呂に入って汗を落とした後は、執務室でセバスさんから留守中の報告を受ける。


冒険者ギルドと商工ギルドから送られてくる報酬の明細を見て驚いた。


最初の頃よりもゼロの数が2つほど増えてた。


ちなみに俺の冒険者としての預金も馬鹿にならない。


だって竜を大量虐殺してるんだからね。


ギルドに持ち帰るのはほんの一部だけど、それでも潜るたびに中級冒険者の年収くらいはあるからね。


莫大な預金があるんだけど、それでも驚くぐらいの金額が屋敷に送られてくるんだからね。


もしかしたら俺の資産って、国家予算くらいあるんじゃねえかって思うよ。しらんけど。


俺の判断が必要なことなんかほとんど無いんだけど、セバスさんの報告を聞き終えると、今度はマリーさんからの報告を受ける。


こちらは屋敷内のことについてがメインかな。


この屋敷のことについては皆んなの方が詳しいんだから適当にやっておいてくれれば良いんだけど、律儀に報告してくれる。


こちらも特に俺の決裁が必要なものもなく、30分ほどで完了。


さぁ、夕飯の時間だ。


いやぁ、食材も豊かになったもんだ。


収納魔法を覚えてからは、ダンジョン内で採れる貴重な食材を持って帰れるようになった。


収納内は時間が止まってるから、いくらでも入れておけるし。


それを屋敷の料理人に渡すと、料理人魂に火がついたみたいで、様々に趣向を凝らした料理が出てくるようになったんだよ。


大量の塩コショウについても、俺の収入がとんでもないことを知ってるから、不信感を持たれることもない。


だから、うちの料理人の腕前はうなぎのぼりなんだ。


そして嬉しい誤算が。


向こうで買ってきた食材もダンジョン産だと言えば何でもオーケーなんだよね。


だから最近は夕飯に白米と味噌汁が出てくるようになったんだ。


ダンジョン万歳ってとこだね。


楽しい夕飯を終えたら久しぶりのあの時間。


そう、屋敷の地下にあるダンジョンの探索だ。


これもしばらくぶりになる。


深い縦穴から横に伸びる何本かの横穴。


上から順番に攻略している。


ほとんどが碁盤目状の人工的に作られたような造りになっている。


今は上から5番目の横穴を探索中。


ここも碁盤目状になっている。


「やっばりここも行き止まりの先に空洞がありそうだ。


あれっ?このモヤモヤ、ダイヤモンドのダンジョンで感じたあれに似てるぞ」


そう、久しぶりで気付かなかったんだけど、ここの1番上の横穴から感じていたモヤモヤ感、これと近いんだな。


「もしかしたら、この先の空洞が、ダイヤモンドのダンジョンに繋がってるんじゃ…」


この縦穴ってかなり深いし、今いるここも結構深い位置になるだろう。


「ダイヤモンドのダンジョンの地下30階層と同じ深さだったらとしてもおかしくないな。」


あくまでも仮説ではあるが、もしこの仮説が正しければ、この人工的に作られたダンジョンの存在自体が意味を持ってくる可能性が高くなる。


そして、屋敷の地下室から繋がっていることも……


「これは調べなきゃな」


独り言ちながら、これまで放置していたこのモヤモヤの先へと進む決心をしたんだ。

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