第31話 地下30階層には何かありそうです

魔法瓶の試作品が完成してからおよそ3ケ月。


俺の元へは金貨が山のように運ばれて来ている。


ビールの売れ行きは凄まじく、1リットル当たり金貨1枚の価格にも関わらず、3ヶ月待ちの状態だ。


その上、魔法瓶の販売も半端ない。


技術的にも作れるのがドグラスさんだけなので、こちらもミスリル製で金貨5枚、ドラゴンの火袋製については金貨30枚の価格にも関わらず、こちらも5ヶ月待ちの有様である。


そして鑑賞用としてのビール樽の売上も好調なようである。


もう分からんよ。


俺はといえば、2日に1回くらいは向こうに戻って、安売り酒店で大量にビールを買い込む毎日。


少し前に屋敷と商工ギルドの間に地下パイプラインを引いたから楽になったけど、それまでは夜中にリュックで何往復もして運んでたんだからね。


パイプラインは屋敷の地下室から引いてある。


だからセバスさん達は気付いていないはずなんだ。


もしかしたら、昔からこの屋敷に住んでるセバスさんはこの地下室の存在を知ってるかもしれないけど、まぁ、気付かれたらその時はその時だな。

なんとかなるでしょう。


そんなこんなで慌ただしい日々が続いているのだが、その間もルビーのダンジョンでの採掘は続けられている。


まだ6階層目だけど、アダマンタイトが出てきたとかなんとかって大騒ぎになってるみたいだね。


これまでも大量のミスリルが埋蔵されていることが分かり、ミスリルの流通量がかなり増えたらしい、


これまでは高嶺の花だったミスリルが豊富に出回ったため、結構な数のミスリル製品が出回っているようだ。


まだまだ需要が大きく供給を上回っているから価格の下落は起こって無いけど、時間の問題じゃないかな。


そしてこのミスリル製品を求めて、他の国からも買いに来る冒険者や商人が増えて、街は空前の好景気に湧いている。


税収も大幅に増えて、領主様もご機嫌だってショウコウさんが言ってた。


「なぁハヤト。そろそろダイヤモンドのダンジョン攻略を再開せんか?


忙しい理由はなんとなくショウコウから聞いてはいるんだが、最近ダイヤモンドの新しい情報が途絶えていることに、とやかく言ってくる奴らが増えてな」


冒険者ギルドのギルマスであるボウケンさんが俺の屋敷にやって来て、ダイヤモンドダンジョンの探索を再開して欲しいと言ってきた。


どうやら、マスコミが新しい情報を提供せよとうるさいらしい。


一応、俺の存在は隠されているので、俺のところへは来ないんだけど、その分ボウケンさんが矢面に立っているようだ。


よし、ここは1つ謎の冒険者ハヤト様がひと肌脱いでやろうじゃないかと、その翌日、ダイヤモンドのダンジョンにやって来た。


地下18階層まで到達してから結構時間が経ってしまってる。


気を引き締め直して、攻略を再開するぞ。


19階層からはドラゴンがメインになっている。


地竜、水竜、亜竜が次々と出て来る。


さすがにルビーを攻略した時の装備では心許ないので、ミスリルと竜皮をふんだんに使った装備をドグラスさんに作ってもらった。


お陰でそれほど苦労せずに順調に進むことが出来ている。


ただ、地下20階層からは、かなり広くなっているみたいで、これまでのような速度での探索は難しくなった。


単純に攻略するだけならそれほど難しくないんだろうけど、俺の場合は地図を作成するのがギルドからの依頼だからね。


時間が掛かってもしっかり全てを調べなきゃ。


そして地下30階層まで降りてきた時、俺は違和感に気付くことになる。


「この壁の向こうに何かあるんじゃないか。

なんとなく気になるなぁ」

それは地下30階層の最奥にある壁。


ドラゴンがうじゃうじゃしていたモンスターハウスを抜けた先にあった、何の変哲もない行き止まりの壁なんだけど、サーチで調べると、向こう側に靄が見えるんだ。


完全な行き止まりであれば真っ黒で、空間が広がっていれば白く感じるはずなんだけど、なんかモヤモヤしている感じなんだよね。


壁を壊してもいいんだけど、文字危険な物質が出てきても困るし。


でもなんかこのモヤモヤ、覚えがあるんだよな。なんだっけか?


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