第28話 ビールの販売も順調に行けそうですね

ショウコウさんの元へ軽い気持ちで持ち込んだ缶ビールだったが、以外にもショウコウさんの食い付きが凄かった。

ビールと樽を別々に販売してはどうかとのアドバイスを貰う。


「なるほど、ビールは他の容器に詰め替えて、エールよりも少し高めに設定し、樽は樽で、それなりの価格を付けて売るわけですね。

なるほどなー………


それなら別の容器を商工ギルドに発注することで、マージンを取ることも出来るということですか。


いやぁ、ショウコウさんも考えましたねー」


「バカヤロー、俺がそんな小さな商いを考えると思うか。


ところで、お前さん、これを他のもんに見せたか?」


「いえ、真っ先にここに持ってきました」


「そうか、それなら大丈夫だな。


お前さん、このビールを樽ごと俺に卸してくれ。


俺が上手く売ってやる。


いいかよく聞けよ。これは間違いなく儲かる商品だ。


だが、売り方も難しい。


もしお前さんが自分で売り出したら、すぐにそれを横取りしようとしてくる奴らが現れるだろう。


そうすると、お前さんだけでなく、屋敷の使用人達にも危険が迫る恐れがある。


俺なら、商工ギルドの名を使って上手く売り捌くことが出来るし、仕入先であるお前さんの情報を明かすことは絶対無い。」


そうか、厄介な連中に付け回されるより、卸しに徹した方が楽だもんな。


「分かりました。ショウコウさんにだけ卸すことにします。」


「よし、それでいい。早速契約書を作ろう。


ところで、質問なんだが、お前さん、このビールをどうやって冷やしたんだ?

氷魔法でも使ったのか?」


「そ、そうですね。氷魔法で、冷やすと美味しいでしょ。」


「…うん?その間はなんだ?


まだ隠し事がありそうだが、それは置いておこう。


このビールの美味さの半分は、このキンキンに冷えていることにある。


商売にするに当たって、ここは大きいな」


「それなら、氷魔法を使える冒険者を雇って販売前に凍らせるのはどうですか?


数時間後が飲み頃になるし、半分凍ったビールも美味いですよ」


「なるほどな、その手はあるな。


よし、それはボウケンに相談してみるか。


しかし、飲みたい時にすぐに飲める必要もあるな」


「うーーん、魔法瓶でもあればしばらくは冷たいまま維持出来るけどなーー」


「お前さん、今なんと言った?


魔法瓶だと!それはどんな魔法なんだ?」


しまった、つい口に出てしまった。


「えーーと、魔法瓶っていうのは魔法を使わない容器なんですけど、冷たいものは冷たいまま、温かいものは温かいまま、しばらく維持出来る容器なんです。


あくまでも俺のアイデアの産物で、実際には存在しないんです」


「よし、分かった。その魔法瓶のアイデアを買い取ろう。


商工ギルドに入ってる奴で腕利きの鍛冶屋がいる。


ドグラスって言うんだが、知ってるか?」


「ええ、ドグラスさんなら、俺の装備を用意して貰いました」


「ほう、あのドグラスが、お前さんの装備をな。


それなら話しは早え。


ドグラスにアイデアを話して、作って貰え。


アイツなら作れるだろうよ」


「分かりました。行ってみます」


「よし、ところでお前さん、ビールをまだ持ってるだろう。


買い取ってやるから全部置いていけ。


俺がこれから優良顧客になりそうなところに紹介してきてやる」



話しがとんとん拍子に進み、出来たばかりの契約書を持って、俺は商工ギルドを出て、屋敷に戻ることにした。


俺が出た後すぐにショウコウさんがビールの樽をいくつか抱えて出ていったのを見た。


やはり商工ギルドマスターのショウコウさん。


フットワークが軽いね。


あの調子なら、今日中にはドグラスさんのところにも話しは行っているはずだ。


明日にでもドグラスさんのところに顔を出してみよう。



屋敷に着いたのは陽も落ち出した夕暮れ。


ちょうど夕飯の用意が出来ていた。


今日もやっぱり肉中心。


だけど最近は少し違うんだよね。


塩コショウがふんだんに使われているんだ。


実は、商工ギルドに行く前にマリーさんに使ってくれるように渡しておいたんだ。


街で売られている価格を知っているマリーさんはその量に驚いていた。


やっぱり、何事も加減は大事だよね。



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