第27話 新たな商売のネタが出来そうです
ルビーのダンジョン最下層からの帰還は……徒歩でした。
皆、無口です。はい、責任感じてますよ。
わたしが悪うございました。
でも、ダイヤモンドのダンジョン攻略は止めないけどね。
5人で教会まで戻ってきた。
「じゃあな。またチャットで連絡するよ」
「そうね、お疲れ様」
「お疲れ様でした」
「次はダイヤモンドを目指そう」
「…………オツカレ…」
ハルオミを先頭に皆がセーブして消えていく。
「はーーー、俺も一旦戻るかな」
俺はため息をつきながら、コントローラーで『保存して終了する』を選択した。
「なぁんか、後味が悪いよな」
モニターに映るゲームのロゴ画像を見ながら、またため息をつく。
「よし、気持ちを切替えて、現実モードに行くか!」
電源をオフオンしてメニューから現実モードの最後のセーブデータをロードする。
すっかり慣れてしまった浮遊感を終えると、屋敷地下にあるセーブポイントの前。
地下室に戻ると、そこには置いておいたリュックがそのままになっていた。
「ちょっとテストすっかな」
リュックを開けて中を覗き込む。
缶ビールが変換された小樽が入っている。
ひとつ取り出して上の穴を塞いでいる栓を抜く。
スパンッ!
うんいい音だ。恐る恐る口をつけてグイッと喉に流し込む。
「う、美味い。温度も冷えたままだ」
向こうにいる間は時間が止まってるんだから、当たり前なんだけど、ゲームモードでもおんなじみたいだな。
1缶いや1樽飲んで、リュックごと書斎へ移動。
いくら元貴族様の屋敷だからと言っても、冷蔵庫なんてものはこの世界には無い。
ビールが常温になってしまうのは残念だ。
「そうだ!ショウコウさんとボウケンさんに持っていってやろう。
いつも世話になってるしね」
「旦那様、お出掛けでしょうか?」
「あぁ、冒険者ギルドと商工ギルドに行ってくるよ。
夕飯までには戻ってくる」
「行ってらっしゃいませ」
リュックを背負って、玄関まで出てきたところでマリーさんと軽く会話を交わして、ショウコウさんの元へと向かった。
「こりゃ、美味いなー!
冷えているのがこんなに美味いなんてな。
いや、それだけじゃない。このシュワシュワ具合、苦味とコク、いつも飲むエールとは全くの別物だな!」
「飲んでみて下さい」って言って渡したら、その場で樽ビールを口にしたショウコウさんの反応。
うん、気持ちはよく分かるよ。だって、比べものにならないくらい美味いからね。
「それに、この精巧な樽。小さいのにこんなにも精度が高い。
中身も美味くて価値が高いが、この容器も高価な値段がつくだろうよ。
お前さん、これ、どこで仕入れたんだ!」
怖えぇよ。こんなショウコウさん、ルビーのラスボス攻略した時以来だ。
「ほら、吐けよ。楽になるぜ。ほら、ほら。」
執拗な追撃につい話してしまいそうになるけど、グッと堪える。
「仕入先は秘密ですよね。商人の鉄則じゃないですか」
「うっ!そ、そりゃそうだが…
そうだ!これは定期的に仕入れられるのか?
量はどのくらい確保出来る?」
「うーーん、そうですね。
これだと一回の仕入れで50くらいですかね。
頻度はうーーん、確認してみないと分からないです」
あまり情報を出し過ぎるのもなんだし、少し曖昧にしておく。
「なるほど50か…多過ぎもせず、少な過ぎもせずってとこだな。
この旨さなら奪い合いになることが予測出来る量だな」
「予約制にしたらどうですか。
事前に予約券を配っておくのです。
入荷時期はあえて曖昧にしておくことで、プレミアム感が増すんじゃないかと」
「なるほど、いつ入手出来るか分からないけど、確実に手に入れることができるという優越感を持たせるわけだな。
金持ちどもが喜びそうな企画だ。
お前さん、商才もバツグンだな。
ところで、この樽も毎回付いてくるのか?」
「はい、もれなく。」
「そうか、このエール、いや名前を変えたほうが良いか。
この飲み物はなんという名なんだ?」
「ビールですね」
「ビール…か、なかなか良い名だ。
エールを連想させるし、文字の順番でも、連なっているしな。
よし、ビールの名を使おう。
それでだな、このビール、これは単体でも爆発的に売れるだろう。
そして、この樽も同じだ。
この樽自体も非常に価値が高い。
これだけでも、かなり高額で売れるぞ。
どうだ、分けて販売してみないか?」
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