第23話 NPCでも忙しくなってきたようです
「14階層以降は、初めて見た魔物が多かったですね。あっそうそう、17階層で初めてドラゴンを見ましたよ」
「地下17階層でドラゴンが出ただと!!」
この世界のドラゴンは神格化されていて見ることは稀だそうだ。
時折、その存在を確認されるが、どこに住んでいて何をしているのかは全く分かっていないらしい。
そういえば長いことゲームしてたけど、噂だけで会ったことはなかったな。
「そ、それでドラゴンと戦ったのか?」
「いいえ、どうやら気まぐれに出てきたようで、じろじろ見られたと思ったら、プイっと何処かへ去っていきました」
「そ、そうか...それで、他の魔物はどうだった?」
「そうですね、16階層以降は人型の魔物が多かったですね。
16階層はギガントやマジカルギガント、17階層はギガントの亜種ですかね、恐らくギガントハンターだと思います。かなり敏捷い奴で、結構手こずりました。
18階層では、マジカルギガントやギガントハンターが連携して襲ってきました。
俺単独では、18階層辺りが限界ですかね」
「そうか、ギガントか...それも亜種と来るか...
ギガントも十分神話上の魔物なんだがな。
まあ、よくそれだけの情報を持ち帰ってくれたよ。ありがとうハヤト。十分休養をとってくれよ」
ボウケンさんは自分の席に向かうと重そうな袋を持って戻ってきた。
「これが今回の報酬だ。受け取ってくれ」
俺はそれを有難く受取り、ギルマスの執務室を後にした。
相変わらず冒険者達の様々な面相に見送られて階段を下りて、外へと出る。
次の目的地は商工ギルドである。
実はダンジョンの階層を攻略しながら、そこで採れる鉱石や宝石などを少しづつ採取していたのだ。
これを商工ギルドに持ち込む。
販売するためというよりは、商工ギルドからの依頼で、調査が目的である。
採れた鉱石やその埋蔵量でダンジョンの評価をするらしい。
一応、冒険者ギルドに提出した地図とは別に鉱石の分布を描き込んだ地図をショウコウさんに提出することになっている。
ボウケンさんに渡した地図には魔物の分布や罠の場所など冒険者が攻略するために必要な情報を、ショウコウさんには鉱石の採掘に必要な情報をそれぞれ書き込んであるわけだ。
「さすがだな、お前さん。どれもこれもすごく高い純度だ。特に18階層のものなんて精製する必要がないんじゃないか。こりゃ素晴らしい!」
「俺の鑑定結果でも、極上って出てましたからね。それに地図を見てもらったら分かると思うんですが、かなり広くて、埋蔵量も半端無さそうです」
「ああ、そうだな。この階層までに埋蔵されているだけでも、これまで発掘された全てを大きく上回りそうだ。
良くやってくれたな。ありがとう」
ドスッと机の上にかなり重そうな袋が置かれる。
「報酬だ、取っといてくれ」
冒険者ギルドでも商工ギルドでも報酬額を事前に決めてなかったんだけど、俺の予想を大きく上回る量がもらえた。
しばらくどころか、年単位でも使い尽くせない額がありそうだ。
「これからは昼食なんだ。一緒にどうだ?」
「頂きます」
しばらく雑談していると、女性がパンとサラダ、それとステーキを持ってきてくれる。
ステーキはいつも通り謎肉なんだけど、冒険者が狩ったばかりの新鮮な食材だから、それなりに美味しそうだ。
だけど塩コショウが少ししか使われてないのか、味が今ひとつってどこだね。
そうそう、塩とコショウは俺が商工ギルドに卸している。
もちろん、日本から調達してきた物だ。
結構な量を運んでいるんだけど、ほとんどが王都で捌かれるため、手には入りづらい。
最近はここファンタスでも高級料理店で使われだしたんだけど、貴重だから使われるのは雀の涙程度だな。
「それでだな、鉱石や宝石の加工についてのアドバイスについてなんだが、どんなもんだ?」
「そうですね、今考えている最中なのですが、アイデアとしては記念日に男性から女性に贈ることを前提としたキャンペーンをするとかどうでしょう?」
「結婚式とかか?それなら今もあるぞ」
「例えば、結婚3年目や5年目、10年目などにそれぞれ宝石を割り当てて、記念日にするとか、プロポーズの時に年収の3年分の宝石を贈るとか」
「...なるほどな、記念日をでっち上げて購買のタイミングを仕掛けてやるんだな。やはりお前さん、大したもんだな。
それなら、若いうちは安くて良く取れる銀の指輪とかにすれば良いし、年齢を重ねて収入が良くなれば、それに合わせて手頃な金額の宝石を当ててやればいいな....ふむふむ、なかなか素晴らしいアイデアだぜ。
その案、乗った!じゃあ、企画と宝石の種類とか含めて考えてくれねえか?」
「了解です。ちょっと時間が掛かるかもしれないけど考えてみます」
「頼んだぜ」
うん、こっちの世界でも忙しくなってきたな。
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