第9話 忍び寄る影
屋敷のインターホンが鳴らされる。
玄関の監視カメラを確認すると、一人の青年が立っている。
ユーリはボイスチェンジャーで低い男性の声を出して応答する。
「どちらさまでしょうか」
「急にお尋ねしてすみません。実は家出した妹を探してまして」
青年は愛想の良い声で、申し訳なさそうにこう説明する。
「年齢は16歳で、身長は165cmくらい。見た目は黒髪のショートヘアにアンバーの瞳。服は黒のジャケットにショートパンツ、ハイカットスニーカーを履いています。何かご存じありませんか」
それを聞いてユーリは無言になる。
その家出少女とやらの特徴は、まさにライラそのものだった。
「いいえ、何も知りません。お力になれず申し訳ありません」
ユーリはそう言って、静かにインターホンの通話を切った。
そして無表情のまま、隣のライラにこう尋ねる。
「兄弟、いるんですか?」
「・・・んなわけないでしょ」
ライラは苦虫を噛み潰したような顔で答える。
「組織の追手だと思う。もしかしたらここに隠れてる事もバレてるのかも」
そう呟くと、焦った表情で親指の爪を噛む。
そんなライラの様子をみて、ユーリは何でもなさそうな顔でこう言う。
「心配なのですか?では、調べてみましょう」
ユーリはPCへ向き直ると、画面上のアイコンをクリックした。
すると、部屋中のディスプレイに町中のありとあらゆる場所の映像が映し出される。
商店街から学校、道路、果ては個人の家の玄関先まで。
中には個人宅の内部の映像も混じってる。
「なにこれ」
ライラは訳が分からず、驚いた目で映像を見つめている。
ユーリは特に顔色も変えずにこう答える。
「町中の監視カメラです。この辺は高級住宅街なので、玄関先や建物内に監視カメラを設置する家も多いんですよ。それで組織の人間の動向でしたね?確認しましょう」
カタカタとPCを操作すると、ディスプレイ上で画面がいくつか切り替わる。
しばらくすると、例の青年が個人宅の玄関前に立っている映像が映し出される。
インターホン越しに何かを尋ねているようだ。
「あ、さっきのお兄さんいました。・・・ああ、聞き込みをつづけてますね。まだあなたのこと探してるみたいですよ。ここに隠れていることはバレていません、良かったですね」
ユーリはディスプレイを見たまま淡々と説明する。
「あんた、何者なの?」
ライラは絶句している。
ユーリがくるりと振り返る。
その瞳からはやはり何の感情も読み取れない。
「前にも言ったでしょう。ただのプログラマーですよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます