第72話 砂

番外地に最近、砂屋という店が出来た。

番外地の路地に、香港やらベトナムやらの路地の店を思わせる店構えだ。

アジア風の笠をかぶった店主は、あらゆる色の砂を扱う。

それは着色であったり、

石英などが砕けた砂だったりする。


砂屋が奇妙なのは、

砂が混じらないことだ。


普通、砂を袋に入れていれば、

動かしているうちに、やがて混じってしまう。

しかし、砂屋の砂は、

袋に入れる時にストライプの模様だったとすれば、

ストライプがずっとくずれない。

袋に穴があいて、

砂がこぼれてもストライプだ。

砂があちこちに散らばっても、ストライプだ。


「砂の意志を読み取れば、このくらい何てことないですよ」

と、砂屋は笑って見せる。

「はい、この模様の砂だったよね」

と、砂屋は代金と引き換えに、きれいな模様をした砂袋を子どもに渡した。


砂屋が砂を手に入れるには。

これもよくわかっていない。

ただ、時折高そうな石を砂に変えているという情報は入っている。

赤い砂はルビーの砂?

青い砂はサファイアの砂?

砂屋には高価な石より砂の方がいいらしい。


砂屋は逆のことも出来るらしい。

即ち、砂を石に変えること。

それは砂屋があまり好まないので、やってくれない。

サファイアの砂を大量に持っていけば、

もしかしたら誰も見たことのない大きなサファイアが出来るかもしれない。

けれど、そういう作業は砂屋は好まない。

砂屋は砂がいいらしいのだ。


「砂は、本来なら混じることなくそこにあり、私はその手助けをしているんです」

色とりどりの砂に囲まれながら、

砂屋は新しい砂袋を作りはじめた。

注文されたものだろうか。

それとも、趣味で作っているものだろうか。

おそらく砂屋は趣味で砂屋をやっている。

それでもやっていけるあたり、ここは斜陽街なのだ。

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