第16話 占い

占い屋という店が二番街にある。

ここは、幾つか個室があり、その一つ一つに占い師がいる。

好きな占い方で占ってもらえる訳だ。

ここを総括のするのが通称「マダムクィーンビー」こと、マダムだ。

パリのコレクションに出てきそうな、身体にぴったりした服をいつも着ている。

泣きぼくろが印象的だ。


マダム自身も針占いという占いをする。

細く長い針を筮竹のように使うのだそうだ。

当たるも八卦当たらぬも八卦というが、

番外地のスカ爺よりは当たっているようだ。


「うーん…旅行は控えた方が吉ね。恋愛ごとに関してはいい卦が出てるわ…」

マダムは真剣に針を見る。

「あと…あら、あなた変わった卦を持ってるわね…」

マダムの目が妖しく光る。

「ねーぇ」

マダムが微笑む。

「あたし変わった人って大好きなの…どう、時間ある?」


このあとのやり取り次第で運命は変わる。

というのも、マダムは変わった人間をコレクションするという困った趣味があり、

やり取り次第では針で眠らされ、マダムのプライベートルームに並べられてしまうかもしれないのだ。

番外地の探偵などは一度眠らされそうになった所を妄想屋に助けられている。

それ以来この場所が苦手になっているとかいないとか。

電脳系などならともかく、生体系は洒落にならないらしい。


妄想屋の夜羽は占い屋で時々占いをすることがある。

占ってもらうのではない、占うのだ。

マダムに言わせれば結構評判はいいらしい。

「妄想屋なんて儲からない商売やめて、占い屋になればいいのに…」

ある時マダムはそう言った。

「僕は妄想屋が一番です」

そう、さらりと返された。


マダムのプライベートルームの中はよくわかっていない。

ただ、休憩中プライベートルームに引きこもっていたマダムが出てきたとき、

涙のあとが残っていたのをある占い師が目撃している。

「泣いていたんですか?」

そうたずねたら、

「ちょっと昔を思い出しちゃってね…」

そういってマダムは微笑んだ。


占い屋のマダムは変わっている。

変わっているのが好きな人はもしかしたら友達になれるかもしれない。

その際は、コレクションにならないよう注意が必要だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る