第17話 玩具

斜陽街三番街、がらくた横丁という所に玩具屋はある。

玩具屋は、いわゆるおもちゃ屋だ。

空缶などの金属から店主が小器用におもちゃを作り出す。

店主は40才代くらいのひょろりと細い中年で、

少々ヘビースモーカー、店内は煙草の匂いがする。


気が向くときに寝起きしては、煙草を吹かしながらおもちゃを作るのが店主の日課になっている。

店主は、空缶おもちゃや、ブリキなんかのおもちゃを作ることを好む。

無論その他のおもちゃもある程度揃えている。

ぬいぐるみや人形だってあるし、テレビゲームだってある。

ただ、それらはここで作っている物ではないようだ。

しかし、玩具屋の店主は頼めばそれらも修理してくれる。

手先の器用さでは斜陽街一二を争うそうだ。


「おじちゃあん」

「じっちゃあ」

小さな兄弟が首の取れた人形を持ってくる。

「こわれちゃったぁ」

「ああ、壊れちゃってるねぇ…よしよし、捨てずによく持ってきたね。すぐ直してあげよう」

それでも子どもは不安な目をしている。

そんなときには直る過程を子ども達に見せてあげる。

「ここをこうして…」

玩具屋の手が器用に人形の首を繋げていく。

「ここをちょちょいと…」

子ども達の目に光りがともる。

「こうすれば、出来上がりだ」

そんな時にはもう子ども達の目はきらきら輝いて。

「ありがとう、おじちゃん」

「ありがとー」

礼もそこそこに駆け出していく。

玩具屋はそんな子ども達の目が好きだ。


おもちゃの置かれている棚の中に、一つだけ、非売品になっているおもちゃがある。

夕焼け色の可愛らしい服をまとった、小さな猿がシンバルを叩くおもちゃだ。

「ああ…それは…昔友達だった猿がいましてね…」

その思い出なんですよ…

店主は少しはにかんで笑った。


玩具屋の棚には、今でも、猿のおもちゃと空缶ぽっくりが並んでいる。

その意味を知る者は、あまり多くないそうだ。

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