第15話 八卦池

斜陽街の番外地には八卦池と呼ばれる池がある。

まぁるい池があり、そのまわりに黄色地に黒で八卦の模様が並んでいる。

スカ爺と呼ばれる爺さんがその池のほとりに住んでいる。

一番街の電脳娘々とは血縁関係があるらしい。

スカ爺と呼ばれるゆえんは…どうも彼のする占いがいつも「スカ」であることからついたとかどうとか…

はっきりしたことはわからない。


スカ爺のなりは…仙人を思い浮かべていただければいい。

頭はあんなに長くないが、はげた頭に長い着物。

そしてのびた白いひげ。

視線がどこを見ているかはよくわからない。

謎めいた爺さんだ。


八卦池は電網・電脳にアクセスすることが出来るらしい。

スカ爺曰く、

「霊(ゴースト)の世界だからでござる…」

電網は身体を離れて魂が遊ぶ世界で、

八卦池はその手段、そういうことになるらしい。

スカ爺は当たったことを言わないからスカらしい。

これも眉唾かもしれない。


スカ爺に話を聞くと、「霊(ゴースト)」という言葉がよく出てくる。

きっとどこかで聞きかじった程度のことなのだろうが、

スカ爺は構わずによく使う。


聞く所によれば八卦池にはその霊が集まるらしい。

彼の言う霊の集まる時間帯にいくと、

スカ爺が八卦池を覗き込んで何やらふんふん頷いているのを目撃することがある。

チャットのような物をしているらしい。

八卦池にはネットワークからはぐれたネットワーカーが集うという。

どうすればはぐれるのかはもじょもじょ言っていて聞き取れなかったが、

行き先も帰る先も見失ったネットワーカーが来るらしい。

寂しがり屋が来るのかもしれない。

或いは違うのかもしれない。


月の明るい晩。

「お主の行き先はあちらでござる…」

スカ爺は持っていた杖で八卦池をかきまぜ、中にアクセスしていた誰かに道を示す。

タプン、と、水が揺れ、また静かになる。

こんな風景を見たという噂もある。


スカ爺についてはわからない部分の方が多い。

それでも彼はマイペースに八卦池のほとりでうとうとしているのだろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る