☆レファス降臨 新たなる騒動の予感②
——(フィオナ視点)——
ルアト王国の外れ。隣国との国境に面する大森林。
国土の1/4を占め、その過酷な環境ゆえ、人の侵入を許すことの無いその密森は、ルアト王国にとって他国からの侵略を防ぐ天然の防壁としての役割を果たしている。
その密林を切り裂くように、一筋の光が閃いた。
森の奥へと一直線に放たれたその光を追いかけるように、一泊遅れて強烈な衝撃波が森の中を駆け抜けた。
周囲の木々を巻き込みながら大爆発を引き起こしたその力は、密林に即席の一本道を作り上げた。
「くっ……、レファス様! さすがに、やりすぎではありませんか!?」
降臨ゲートから現れたレファス様に、ガーラ様が連れ去られた経緯と、トルカ教団の潜伏先を報告するや否や、一直線にここまでやって来た彼が、まず最初に行なったのが、先ほどの『神の
「これでも抑えているんだ。本気なら
我が
移動に特化したその『
本来なら、『天界人』で、しかも『元・王族』であるレファス様が、この地に来ることなど、考えられないことなのだ。
私自身、レファス様に直接、緊急連絡を入れはしたが、以前の王女救出作戦時もそうであったように、レファス様は天界から支持を出すものだとばかり思っていた。
しかし、レファス様は『ガーラ様がギラファスに攫われた』という報告を聞いただけで、すぐ下界に降臨して来た。
それほど、ガーラ様のことを特別視していると言ってもいい。
(やはり、レファス様は今も王妃様のことを……)
擬似体に宿ったガーラ様は、消滅してしまった王妃様によく似た見目をしていた。
レファス様はその面差しに、消滅してしまった王妃様の姿を重ねているのだろう。
『真実を見抜く目』を持つ私だからこそ、分かっていたことがある。
それは、ガーラ様の中に『王妃の名残り』があるということだ。
ガーラ様と王妃様では、『魂』的に見て『全くの別人である』ということは分かっていた。
だが、ガーラ様の分身『アル』は、消滅してしまった王妃様と全く同じ『魂』をしていた。
そのことから、私は『ガーラ様は王妃様の魂の生まれ変わりなのではないか』と思っている。
そして、『アル』はガーラ様の中に僅かに残った『王妃であった部分』が寄り集まったモノなのではないか、とも……
そんな『アル』だが、彼女は『分身体』としても『魂』としても、存在し続けるには霊魂量があまりにも少なすぎ、いつ消えてしまっても不思議ではなかった。
であるにも関わらず、今も存在し続けていられる理由の一つが、『転生中の休眠』だと、私は考えている。
ガーラ様の話によると、『アル』は、霊界へ帰還した僅かな間しか覚醒していない。
しかもそれは『霊界へ到着したその日のうちに転生する』といった、ガーラ様のライフスタイルに合わせた短い間の覚醒で……
『アル』にとっては、不満だらけのその覚醒時間は、結果的に劇的な延命措置としての役目を果たしていたのだろう。
しかし、その延命にも限界がある……
さらに、
そのため、私はこの事実をレファス様に報告しないでいた。
表面的ではあるが、やっと落ち着きを取り戻した
だが、この事実をレファス様が知ってしまったら、一体どうなってしまうのだろう……
王妃の魂の生まれ変わりと思われるガーラ様と、分身体として辛うじて存在できている王妃のアル。
その二人が、再びギラファスの手によって攫われた。
そんな事実が明らかになってしまえば……
(ガーラ様…… どうか、レファス様のためにも、何事もなく無事でいて下さい……)
神気が溢れることも
◇◆◇◆◇
そこは、一見すると森の中のちょっと開けた場所にしか見えない、ごくありふれた地点だった。
しかし、レファス様の放った『神の
ここに、王族の
「『幻覚』のスキルが使われておりますが、ここで間違いないかと……」
ザッと周辺を見回して周囲を確認した私は、レファス様の傍らにサッと控えて、簡潔に状況を報告した。
レファス様は
「ここに、結界に隠された教団のアジトがある! 使者ガッロルはここに連れ去られている可能性が高い! 二人一組になって捜索を開始するんだ! ただし、怪しい点を見つけたら、迂闊なことはせず、必ず報告するように!」
レファス様が精鋭使徒部隊に指示を飛ばすと、ペアを組んだ使徒たちが、それぞれの能力を使いながら懸命に周辺の捜索を始めた。
私もまた『真実を見抜く目』を発動させると、結界の弱点を探り始める。
「っ!! これは……!」
思わず目を見張ってしまった。
ガーラ様から、前もってこの場所の情報を聞いていなければ、到底、見つけ出すことは不可能だったに違いない。
そう言わしめるほど、綿密に練り上げられた
『結界幕』にも弱点らしい部分は無く、こうして『
「どうだ?」
私のすぐ脇までやって来たレファス様が、見えない結界に目を向けたまま問いかけてきた。
「ただの結界ではありません。これは、時空軸を絡めたかなり高度なモノで、下手に刺激すると時空が歪み、亜空間が開いて、周辺ごとそこへ引きずり込まれてしまうかと……」
「……そうか」
レファス様は静かに呟くと、視認不可能なその結界をジッと見つめ続けていた。
その瞳に宿る怪しい光に気付きながらも、結局はどうすることもできず、私はその隣で、只々静かに控え続けることしかできなかった。
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