第12話 映画を見よう

一通りの買い物を終えた俺たちは当初の目的だったボーリングを取りやめて映画を見ることになった。

これは柊さんが運動が苦手という理由からだったが、俺はボーリングの話題は一切出さず出来るだけ自然に映画へと秋也の目線を向けた。


「皆は何を見たいんだ?」


「私は恋愛物が見たいです!」


「右に同じです。」


やはり女性陣は恋愛ものが好きらしい。


「俺は何でもいい」


俺は全ジャンル映画を見るので周りに合わせることにした。


「んじゃ恋愛物か。となると今やっているのは『自殺した幼馴染を過去に戻って甘やかす』だな。」


凄いタイトルだ…。でも案外面白いかもしれない。評価も高いらしい。


「それじゃあ席は…。って四人並んで見れないな。」


「まじか・・・。やめるか?」


俺の書いた小説内では4人並んで鑑賞していたはずなので席が空いてないのは予想外だった。

流石に秋也と離れた方が可哀想だろう。

そんな事を考えていると後ろから声がかかった。


「カップルシートが空いてますね。これなら4人並べます。私は白銀さんの横を希望します。」


そんな爆弾発言をぶっこんで来たのはまさかの柊さんだった。

何が起こっているのか分からないまま有原さんも同調し、あっという間に席が決まっていた。


解せない。彼女の考えが読めない。

だが俺が端っこになって秋也をヒロインで挟めば何も問題はない。

少し距離は近いが触れなければ問題もない。

というか予想外のことが起こりすぎて、少し疲れてきている。

映画の最中くらいゆっくりと考え事をしたい。

そんな事を考えながらポップコーンとジュースを買いに行く。

カップルシートを買うとカップルセットというものを安く買えるらしく、それを買うことになった。

気恥ずかしくもあったが俺たちはそれを購入することになった。

購入には手を繋ぐ必要があり、柊さんは俺と手を繋ぐ羽目になってしまった。

本当に申し訳なく思いながら、俺は彼女の手を握る。


「すまない。少しだけ我慢して欲しい。」


そう告げると首を振る。


「私では嫌ですか?」


なぜかそんな事を言われた。

嫌なはずはない。役得だ。今回限りだし、俺と彼女が交わることなどない。

首を振って手を握る。

この一回しかない幸福を俺は素直に受け入れた。

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