第11話 雑貨屋にて
雑貨屋では男子女子で分かれて店内を散策していた。
秋也はシャーペンで悩んでいるようで結局二つ手に取りこちらに向かってきた。
「なぁ颯。お前は柊さん狙いなのか?」
「ぶっ!何言ってんだ!俺は生涯結婚する気すらないんだぞ・・・。」
「でも柊さんはいいとこの嬢ちゃんだろ?金目当てでもなく顔目あてでもなくお前と付き合えそうじゃん。」
「はぁ・・・。俺の恋愛はお前に彼女が出来たら考える。」
「そっかぁ・・・。俺有原さん普通にタイプだから今後次第ではもしかするかも・・・」
「そうか。頑張ってくれ。」
おい柊さん。さっそくレースで負けかけてるぞ・・・。何もできずに負けるのは可哀想だ。彼女には巻き返しを図ってほしい。
そんな事を考えながら散策していたところ、
「白銀さん!」
「うぉ!びっくりしたぁ」
考え事をしながら歩いていると自分の名前が大声で呼ばれる。
突然後ろから声をかけてきたのは柊さんだった。わざわざ俺に声をかけてくる理由がわからない。
俺に構う暇があれば秋也と香織に構えと思う。
俺はあくまで傍観者なのだから。
「先ほどから声をお掛けしていたのですが、気づいていただけなかったので声を大きくしてしまいました。申し訳ありません。」
「いや。良いんだ。考え事をしていてね。何か用かな?」
「二人とも会計に向かいましたので白銀さんはどうかなと思い声をお掛けしました。御迷惑だったでしょうか・・・?」
「いや有難う。俺も会計に行くよ。一緒に行こうか。」
欲しいものがあったわけではない。
だがカモフラージュとして筆記用具をいくつかカゴには入れていた。
家に帰ればいくらでもあるし、こだわりも無いので買う必要など当然無い。
「はい」
静かに微笑む彼女が美しすぎて見惚れてしまったのは仕方ない事だろう。
だがすぐに首を振る。
俺と彼女の間に特別な感情などいらない。
「それで?何を買ったんだ?」
会話がないのはまずいと思って適当に会話を振ると柊さんが少し頬を赤く染めた後にカゴを見せてくる。
中には女の子らしい可愛らしい柄のものが並んでいる。この子は可愛いものが好きな年相応の女の子だ。
クールだと勝手に勘違いされているが、実はこう言うギャップがあって、そこが可愛いのだ。
柄は可愛いが、ちゃんと実用的な物が入っている。評価の高い文房具メーカーだ。
「見る目がいいな。俺もそこの会社の万年筆を使っているよ。」
白銀グループと提携している会社の商品は颯が使って意見を出していた。
その結果売り上げが伸びたものも多い。
「白銀グループと提携してますものね。」
そう言われて感心した。
ちゃんとそういう事もわかっているらしい。
年相応に悩む女の子という部分ばかり書いていたのでその辺の深掘りはしていない。
「あぁ。だから使う事は多いな。悪くはないと思うぞ。」
ぶっきらぼうに言ってしまう。
そろそろいいだろう。
あまり深い仲になって掻き乱すのは本意ではない。だから今はこれでいい。
そう考えながら二人で会計に向かった。
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