第2話 目覚め

(……ここはどこだ? そういえばゴール後に意識が飛んで!?)


 目覚めると白い天井が見えた。体はちょっと重く動きは鈍いが動かせる。手足には配線やら色々な医療器具が取り付けられていて、点滴もしてある。周囲を見回すと、どうやら病室の様だ。広々とした個室である事から結構入院費が掛かってしまうな。余計な事を考える。


 病院服を着ている事から、僕はあの後病院に搬送されたのか? しかし、心臓が停止する感覚があった。

一応ナースコールのボタンがあるので呼び出してみる。


『あっ!ハイ!きゃっ! 目覚められたのですね! 直ぐに伺いま~す』


驚きつつも、うわずった声で応えてくれた。直ぐに看護師が来て、その可愛さに驚いた。


 身長は165cm位だろうか、茶色なボブヘアーで引き締まったウエストに見事な胸部装甲をしていた。童顔なのかJKにしか見えません。何よりもアイドルかと見紛うばかりの可愛いさである。


「え~と~すぐに先生もこちらに見えます。ご気分はいかがですか? 体に違和感とかないですか?」


看護師は赤面しつつ、体をもじもじさせた。


「いえ。特にないです。ありがとうございます」


看護師は赤面しつつも驚いた表情を見せる。


 やがて医師が到着して病室内に入室してくる。何と! 女性医師であり眼鏡を掛けているが、八頭身のモデルの様なとても美しい女性で思わず赤面してしまう。


 年齢は20代半ばくらいだろうか? 女性にしては高身長で僕と同じ170cmくらいはありそう。黒髪ショートヘアーでキツめな顔だが、目鼻立ちが整った美人だ。白衣から覗く長いエックス脚がとてもセクシーである。


 女性医師は一礼後に僕に近付いて来てから話しかけて来る。


「漸く目覚めたね。気分はどうかしら?」


僕の顔をジッと見つめて女医は尋ねる。


「特に問題ありません。ありがとうございます」


普通に答えたつもりだが、女医は若干驚いた表情を見せる。


「自分の氏名はわかるかい?」


「はい “甲斐田かいだ 天馬てんま”です」


僕は女医のあまりの美しさに赤面しつつも問いかけに答える。


「では甲斐田君、私の氏名は“おき 奈月なつき”、僭越せんえつながら君の主治医を勤めさせて頂いてる。以後もよろしく頼むわね」


「わたしは~甲斐田様の看護師を勤めさせて頂いてます“佐山さやま 朱里あかり”25歳で~す」


ウインクしながら看護師は自己紹介してきた。

(専属と独身を強調していた様な…ってか…見事な胸部装甲をお持ちで)


「よっ…よろしくお願いします」


苦笑いしながらも、それに応える。


「先ずは甲斐田君、診察をするので医療器具と点滴を外させてくれないかな」


僕は先生に言われた後に、取りあえず上半身のみ脱ぐ。すると二人共驚き固まる。


「「!!」」


「あの~? どうかしましたか?」


2人が上気した顔で暫く固まる。数十秒程してから二人共再起動すると、赤面した沖先生が僕に慌てて話しかけてくる。


「きっ! きみはっ! 女の前で肌を見せるなんて!」


かなり慌てている。佐山さんも赤面し口を手で覆っていたが、僕の上半身をガン見していた。


「えっ? 何かマズイ事しました?」


上半身裸になること自体、何て事ないのに意味がわからなかった。


「とっ! とにかく! 早く服を着なさい!」


沖先生は慌てて僕の服とタオルを差し出す。僕は言われるまま、また服を着る。

(これでは器材を外せないし、診察とかどうするんだろう?)


沖先生と佐山さんは、服の下から手を入れて器用に心電図の電極パット等を外していく。

軽い問診後に聴診器を当てる際、僕はシャツを捲り上げるが、また二人共赤面する。


「ホントに君はっ!女に肌を見せるなんて! 襲われるぞ!!」


聴診器を持つ手が僕の胸の前で止まった状態で沖先生は慌てる。


「はっ? こうしないと聴診器当てられませんよね?」

(聴診器を当てられる時は上半身を捲るでしょ?)


僕はいつも通りしているつもりなので、2人が何故赤面して慌てているのか? 襲われる? とか、全く意味がわからなかった。


「君がそこまで言うなら仕方ない…か……」


先生は赤面しながらも僕の上半身をガン見し、震える手で聴診器を当て診察をする。佐山さんは僕の上半身を刺すような視線でガン見している。


「診察は終わった。特に異常はみられない」


先生はキツめな表情に変えて僕に向き合い話し出す。


「君……もとい…甲斐田君は、何故ここに搬送されたのか、わかるかい?」


「いえ。確かS国際マラソンのゴール後に……倒れた? のかな?」

(そういえば、心臓の鼓動が止まった様な感覚があったのだが)


沖先生は続けて僕に質問する。


「今日の日付はわかるかい?」


「2018年5月○日」


「・・・・!」

僕の答えに先生は眉をひそめ、佐山さんは驚いた表情をする。


「実は……甲斐田君は5日前に道端で倒れててね。心肺停止の状態だったのよ。蘇生したんだけど、その後意識が戻らなかった」


先生は衝撃の事実を僕に告げる。

(5日間も意識がなかったなんて……かなりの重症じゃん!)


「実は沖先生が偶々近くを通りかかってたから、直ぐに蘇生処置が出来たんですよ」

後ろに控えていた佐山さんがフォローする。


「えっ! どうゆうこと? 道端で? ゴール後に倒れたんじゃ? 大会救護員は? チームの皆は?」

(ゴール後に倒れたのは自覚した。大会救護員が搬送したんじゃないのか?)先生から道端で倒れていたと言われた事に混乱する。


「甲斐田君……医師として色々聞きたい事があるの。いくつか質問してもよろしいかしら?」


何かメモ用紙とカルテを取り出してから、とても落ち着いた口調で僕の顔に近付いて先生は話す。ゆっくりな口調なので、とても落ち着けた。


「はい」


僕は先生の目をジッと見つめて答える。とても美人な先生だな。


「では……………」

僕は先生の質問に一つ一つ丁寧に答えていく。

現在の日付、生年月日、年齢24歳で独身である事、身長体重、自宅住所や勤務先(所属実業団)と所在地、チームメイトの氏名、出身大学(おおよその所在地も)とS国際マラソンに出走しゴールした事。中学から陸上競技を始めた事。最近のニュースや総理大臣の名前、家族構成や生い立ちに至るまで先生の質問に全て答えた。


先生はメモを取りつつも時折顔を歪ませる。


全ての質問を終え、僕の答えを書き込んだメモやカルテを眺めながら考え込む沖先生。


「質問に答えてくれてありがとう。私見ではあるが、意識のなかった5日間で記憶の混乱が見られるみたいね。専門外だから断定はできないが」


そして淡々とした口調で先生はこれまでの経緯を説明する。


「甲斐田君が搬送時に身元を証明する物はなくてね…。付いてたゼッケンを元に、各所に身元を照会して頂いたんだけど、該当しなかったわ……。それで……採血もして照会したんだけど……やはり該当者はなかったわ。そこで色々質問させて頂いた次第なの。氏名と年齢は一致してるわね」


更に先生は話しを続ける。


「それと甲斐田君……男性が24(歳)で独身である事自体があり得ないの。ましてや…男性が実業団に所属してるのもあり得ない事だし、ここ最近で男性がマラソンに出場したと言う話しも聞いた事がないわ! それに……君は男性にしては高身長で無駄な脂肪もなく筋肉質だ。この様な男性を私は見たことがないわ!」


先生は驚いた口調で説明する。更に先生は困った様な表情をする。


「嘘は言ってないみたいだし、女性への忌避感も見られない。う~ん……体中にあざもないし~長い間監禁されてた様子も見受けられないし……」


先生の言っている意味が理解出来ず、益々僕は混乱する。


「甲斐田君、よーく聞いてね。先程君が言った住所……居住先なんだけど、そこは総合運動公園よ! それに…今日は2018年の1月3日よ!」


沖先生が僕の顔に近付いてそう言い放つ。


「……?! どうゆうこと?」


◆◆◆◆


2018年1月17日


 ——あれから2週間が経った。

これまでの経緯や現在いる世界線? かな? を僕なりに整理してみた。


 ここに至るまでの経緯だが…『S国際マラソン大会』にてゴール後に意識が薄れて倒れ、おそらく心臓が停止したのだろう、そのままのユニフォーム姿で、信じ難いが男女比が1:12と男性が少なく男女の立場と貞操観念が逆転したパラレルワールドのような世界へと転移した様だ。


 転移時、心肺停止で倒れているところを偶然居合わせた沖先生が発見し、蘇生処置を受けてから『東相大学病院とうそうだいがくびょういん』(聞いた事がない大学病院)へと搬送された。5日間の意識不明の後、2週間前に目を覚ました。現在は『男性専用病室』と書かれた病室で入院中である。


 元の世界では2018年5月だったが、こちらの世界では1月であり、4ヶ月前に戻っていた。文明レベルは元いた世界線と同じで、言語も文字も貨幣価値も一緒だったが、常識や価値観は全く異なる。


 僕の居住先も出身大学も勤務先も存在してなかった。自宅住所は現在入院している病院の隣にある総合運動公園となっていた。これには流石に驚いた。

警察と市役所職員(全て女性)が事情を聴きにきて、沖先生と佐山看護師と院長の立会いの元、事情を話した。


問診を受けた時と全く同じことを話したのだが、全く信じていない様子だった。その後は精神科や心療内科を受診し、精神鑑定も行われたが、特に異常はなかった。


 僕には24年間生きてきた記憶があり夢ではない。顔も体も変わっていないため、精神的に異常があるとは考えにくい。

本来ならば、身元不明の男性は然るべき施設に保護されるらしいのだが、僕が保護された時の状況と、意識不明時にされた血液検査や? の検査結果も含めて、政府上層部にまで報告が上がった事に依り、施設での保護はなくなった。


 目覚めてから10日ほどすると、警察と市役所からの聞き取りがなくなり、代わりに『男性保護庁』なる初めて聞く官庁の職員4名(全て女性)が、院長と沖先生と佐山看護師を立ち会わせた上で事情を聞きにきた。


 男性保護庁の担当者である「北川きたがわさん」が僕の意識がなくなる前の状況と、元いた世界の話しをメモを取りながら詳しく聞いて来た。スカートスーツ姿の北川さんは年齢は20代半ばくらいであろうか? 身長が僕よりも高くキツい狐目で、妥協を許さないキャリアウーマンといった印象があるが、とても美しい女性だ。


僕の話をどこまで信じてくれているのか、北川さんや他の職員たちの表情からは読み取れない。

僕は何気に北川さんに元の世界への戻り方を尋ねてみた。


「それで僕は戻れるのでしょうか?」


 北川さんは僕の目を直視した後に、院長と沖先生、佐山さんを見渡してから僕の質問に答える。


「まずは……甲斐田さんについてですが、これから話すことは、くれぐれも他言無用でよろしくお願い致します」

皆に一礼した後に、北川さんは話しを続ける。


「率直にご説明させていただきます。信じがたいことなのですが……私たちの住む世界とは異なる歴史を辿り、異なる価値観を持った“”が一つ存在します。甲斐田さんの住む世界線からは30年くらいの周期でこちらに迷い込んで来てるのです。只、共通するのは日本国の男性のみです。甲斐田さんは所謂『迷い人』であり『稀人まれびと』と私たちは呼んでおります」


「「「「!!!!」」」」

僕も含めて4人は言葉を失う!一呼吸おいてから北川さんは続ける。


「更に大変申し上げにくいのですが……甲斐田さん。残念ながら元の世界に戻る術はございません。今まで戻られた方もおりません。研究は継続しておりますが、これまでの事案から……男女比が同等の世界線がある事実はわかってるのですが、そもそも何故? こちらに転移するのか? さえ不明なのが現状なのです。ですので……甲斐田さんにとっては残酷なのですが、この世界で生きて下さる様、宜しくお願い致します」


北川さん含め、4名の男性保護庁の職員が深々と僕に対して頭を下げ懇願する。数十秒程してから頭を上げて北川さんは話しを続ける。


日本国にっぽんこくは、甲斐田さんを保護致しますし、生活面に於いても、ご希望に添える様尽力致します。研究や種付けたねつけのために監禁することも致しません。何卒、こちらの世界で生活して下さる様、よろしくお願い致します」


 北川さん含めて職員らも僕に対してまた深々と頭を下げる。

この時の僕は只呆然とするばかりで、何も答える事が出来なかった。


 更にその翌日には北川さんの案内で、院長・沖先生・佐山さんらの同行で首相官邸まで行き、今度は総理大臣や閣僚らにこの世界線で生きていく様に懇願されたのである。総理大臣以下全てが女性であった事には、とても驚いた。


 そして、男性保護庁の”北川恵美きたがわえみ”さんが、僕の生活面等のサポート役として専属担当となったのである。首相からは、「何事も北川に相談して下さい」と言われたのである。


 男性保護庁の職員からは、近々僕の戸籍を登録してもらえることになり、国が住居を提供してくれることにもなった。それまでの間、病院での生活を提供され、治療費や入院費用は国が負担してくれることとなった。転移時に着ていたユニフォームとシューズは男性保護庁で検査されることになった。


◆◆◆


 僕なりにこの世界の事を色々と調べてみると、ここは文明レベルは元の世界とほぼ同じな日本だが、国名は『日本国』である。

男女比が1:12と極端に男性が少ない世界であり、世界規模でも男性が極端に少ない。身長と筋力も女性の方が上で、男性は女性に守られる側であり、背丈も低く筋力も弱い。正に女性中心な社会で貞操観念も逆転していた。

 

多くの女性が1人の男性を共有するシステムが築かれ、一夫多妻の複婚制(重婚制)ともなっていて男性は平均して10~12人程の妻を持つのが常識となっている。


 ネットでこの世界線の歴史も調べてみたら、歴史上の偉人や歴代の総理も全て女性で性別も逆転していた。明治維新までは殆ど元の世界と同じではあったのだが、それ以降は大分異なっていた。

更に驚くことに……この世界線でのこの国『日本国にっぽんこく』は、政治・経済・軍事に於て世界一であり、この世界の中心国となっているのである。


 様々なスポーツの記録を調べてみると、プロスポーツに関しては女子しかなく男子のプロは皆無であった。

陸上競技に於いては、元の世界での女子の記録とそれ程の差はなかった。こちらの世界では女性の方が筋力が上とは言え、僕が元いた世界の女性と、それ程の差はない様である。こちらの女性と実際に力比べをしていないので何ともだが、只単に男性が極端に体力と筋力が弱すぎるだけなのではないかと思われる。但し、女性の身長は若干高めで、美しさとスタイルを併せ持つ女性ばかりである。


 様々なスポーツの記録を見て気付いたのだが、ほぼ女性の記録しかなく、男性の記録は皆無に等しかった。稀に男性の記録があっても、とてもレベルが低く記録に残すにはどうか? と思えるものばかりである。この世界ではどうやらスポーツは主に女性が中心で、男性は殆ど関与していないのかもしれない。


 男性の平均身長が152㎝で女性の平均身長は165㎝と、男性を大きく上回っている。僕の身長が172㎝なので、この世界での男性としては、かなりの高身長という事になるのか。


 貞操観念が逆転している事もあってか、性犯罪や痴漢(こちらでは痴女)行為も女性が男性に対して行うものであるという。

女性の方から襲ってくるなんて! とても信じがたいし、僕にとってはご褒美としか思えない。

男性は保護される立場で、「男性保護法」という法律がほぼ全世界に浸透していて、男性であるだけで様々な特典や特権があるようだ。


平行世界線へいこうせかいせん”……しかも女性過多で貞操観念も男女の立場も逆転したいびつな世界へ転移。という事実に当初僕は理解が追いつかなかったが、日にちが経つにつれ、気持ちも落ち着いた事もあってか、元の世界線に戻る術はないのを理解した。戻る事が叶わないのであるのなら、この世界線で生きていくしかないのであろう。と覚悟を決めるしかなった。


◆◆◆


 男女の立場が逆転した世界観を実感したのは、先日、佐山さんに付き添われて近くの公園を散歩したときだった。初めて外に出て見たが周りは女性が多く、稀に男性を見かけるが、5~6人くらいの女性に囲まれた状態で覇気の無い表情をしていた。


 男性と一緒ではない女性は、皆、僕を見るなり驚いた表情を浮かべ、好奇な目で追いかけ、中には全身を舐め回すかの様な性的な視線を向ける者までいた。僕の常識では “性的な視線” は、通常男性が送るものであり女性は見られる側の筈だ。しかし、ここでは男性が見られる側で貞操観念が逆転していることを実感した。


病室に戻ってから佐山さんに先程の女性達からの視線について尋ねてみた。


「佐山さん。何か僕に対する…刺すような視線が凄かったのですが、それって一体何なんでしょう?」


「甲斐田様が男性にしては、とても背が高いからですよ。それに…とても魅力的な体で……色気も……凄いし…」


佐山さんは頬を紅く染め上目遣いで言った。どう見ても女子高生くらいの童顔な佐山さんのその上目遣いは破壊力が凄く、圧倒的な可愛らしさで僕を赤面させた。


 病院内にて他の男性を何人か遠目で見かけたのだが、外出時に見掛けたのと同様、皆背丈が低く華奢な体つきであった。但し、皆とてもイケメンではあった。佐山さんの話しから、僕に関しては背の高さと体型だけでなく、何か他の要因もあるようだ。


 これまで病室から出た事はなかったからなのだが、今回、周囲の女性達の熱い視線を実感した事で、沖先生と佐山さんのこれまでの熱い眼差しや対応は…僕への好意なのだろう。美しい二人にそんな視線を向けられるのは嬉しいことだ。


◆◆◆◆


 入院中(2週間の間)にはさまざまな検査が行われたが、特に異常は見られなかった。実際、沖先生は僕の体力測定結果に驚き、「アスリート以上!」と言っていた。


 検査の一環として『精液検査』という初めて聞く項目も含まれていたが、沖先生からは「必要ないわ……」と言われた。その際、佐山さんが一瞬だが殺気立つ視線と圧力を先生に向けていた。


 学力検査も実施されたが、僕は大卒レベルの学力を有しており、特に問題はなかった。ただし、歴史上の偉人や歴代の総理大臣たちが男女が入れ替わっていて、全て女性であったことには驚いた。


◆◆◆


 それから3日後(1月20日)、男性保護庁の僕専属の担当者である「北川さん」他3人の関係者が病院に訪れて、僕の戸籍が登録された旨の報告をして下さり、僕はこの世界で一国民となった。新しい住居の方は、もう少しだけ待って欲しいと言われた。

北川さん他男性保護庁の職員や尽力して下さった方達に、お礼を言ったところ、彼女らは驚きの表情を浮かべていた。


ただし、北川さんからは、ここで生きていく上での条件として、3人の女性と早急に婚姻することが求められた。


 何でも…この世界では20歳までに最低3人と、30歳までに更に7人の女性と婚姻を結ばなければならない義務があるというのだ。相手がいなければ、お見合いも設定して下さるとの事。それでも結婚相手が決まらなければ、国がランダムで選定した女性と強制的に婚姻させられるのである。


 つまり、30歳までに最低10人の女性と結婚しなければならないが課せられることになった。それだけではなく、僕のある検査結果?(意識不明時に実施された検査)の数値がとても素晴らしかったらしく、また、僕が『稀人まれびと』でもあるので、婚姻後も国がランダムに選んだ女性との定期的な『種付けたねつけ』もお願いされたのである。


 僕的には…それって倫理的にどうなのだろうか?と思うが、こちらの世界線ではこれが常識なのであろう。僕はもう元の世界には戻れないので、こちらのルールに従わなければならないな。


隣で話しを聞いていた沖先生と佐山さんが突然色めき立つ。


「甲斐田君! 私で良ければ……どうかな?」


沖先生が赤面しながら僕に近づき腕を絡めて求婚してきた。


「私は~甲斐田様を絶対に幸せにします!」


佐山さんは鼻息を荒くして反対側の腕を絡めてきた!


2人の美女に挟まれた状態で迫られて戸惑ったが、何とかその場はうまくやり過ごした。


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