あべこべ世界でのランナー ~マラソン日本記録保持者が女性過多で貞操観念も逆転した世界線に転移し無双する~

アサノ 霞

第1話 プロローグ


 スゥッスゥッハァーッハァーッ、スゥッスゥッハァーッハァーッ、………。 二回吸って二回吐く。マラソンで走るときの定番の呼吸法。 ランナーは孤独なスポーツであり“”だと昔から言われていた。


  しかし、自分から言わせると、それは“嘘”である。確かに走っているのは1人でレース中は誰も助けてくれない。とても苦しいし、少しでも気持ちが切れてしまえば、それで終わりとなってしまう。


 だが、そのレースに至るまでの過程で、実に多くの人たちのサポートに依って支えられてるのである。

 単に選手は支えてくれる者達(チーム)の代表としてレースに出場しているだけであって、決して単独で出場しているわけではない。


 マラソンという競技は、あくまでも個人競技ではなく“”なのである。


~~~~~


 あと少し……ラスト400m! ラストは息が乱れ、心臓が口から飛び出そうでとても苦しい! 腕を大きく振るも、体は重くフォームは乱れてしまって限界を超えている!


 ここに至るまで実に長かった! 大学では故障のため、某駅伝大会には出走できなかった。実業団に進み1年以上掛けて練習を積み重ね、ついにチャンスを掴み取ったのだ。

オリンピック出場のために、チームの皆は僕の練習をよくサポートしてくれた。今この瞬間、日本記録を見据えた“栄光のゴールテープ”を切るためだけに。ここに至るまでの辛く苦しかった過程が頭をよぎる。


 そして感極まって涙を流しならのゴール! ゴール後に時計を見ると、2時間05分55秒と日本新記録(2018年)をマーク! と同時に日本人1位の成績と来年のMGCマラソングランドチャンピオンシップ出場を確定させた瞬間でもあった。


 僕は渾身のガッツポーズと共に最高の笑顔でチームの皆に駆け寄る。チームの皆も涙を流しながら僕に駆け寄る。


 次の瞬間……達成感の余韻に浸る間もなく、目眩と同時に周りの喧騒が聞こえなくなり、心臓の鼓動もゆっくりとなる。周りの動きもスローモーションのように感じる。(えっ!何?どうした?)


 周りの景色が歪み、息も絶え絶えな状態となり、僕はゆっくりと倒れる。ゴールで待つチームの皆が驚いた表情で駆け寄ってくるが、スローモーションのようにゆっくりとした動きだ。やがて周りは薄暗くなり始めるが、チームの皆は驚いた表情でスローモーションのようにゆっくりと駆け寄ってくる。その姿が僕が見た最後の景色となるのである。


—— そして、まぶたが重くなり、目をゆっくりと閉じ意識を失うのであった。


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