第9話 委員長の意外な一面
放課後の練習が終わった。
「ふぅ、今日も疲れたなー」
練習が終わり、俺は帰り道を歩いていた。
時刻は18時。空はオレンジ色に染まっている。
住宅街を歩きながら、俺はグーッと空に腕を伸ばした。
「(さーて、今日の夕飯は何にしようかな)」
疲れたし、たまには出前でもいいか? いや、いすずの健康のためにも何かを作った方がいいか?
なんて考える。
「あ、あの」
「そういえば、ピザのチラシがあったっけな。割引券付きの」
「日ノ出くん?」
「サラダは手作りして、よっし!今日はこのメニューで」
「あの! 日ノ出くん!!」
「わっ!? って委員長?」
気がつくと俺の横に、委員長がいた。
委員長はスクールバックを両手で抱えながら、上目遣いで俺のことを見つめている。
「委員長の帰りこっちじゃないよな?」
「その」
「どうかしたのか?」
ジッと委員長の顔を見つめる。すると委員長は顔を赤く染めながら、「あっ」とか「うっ」とかいってる。
「あ、あのね」
「うん」
「きょ、今日は助けてくれて、ありがとう!!」
「へ?」
首を傾げる俺に、委員長は言った。
「リレーの時、みんなを止めてくれたでしょ? きっと日ノ出くんが止めてくれなかったらみんな帰ってたと思うんだ。だから、本当に本当にありがとう!」
俺の目を真っ直ぐ見つめながら、何度も何度もお礼を伝えてくれる委員長。
「(わざわざ、それをいうために?)」
なんだかそれがむず痒くて……俺はポリポリと頬をかいた。
「別に気にしなくたっていいって」
「そ、それでも、私は助けられたから!」
「……そか」
「だから、ありがとう!」
「どういたしまして」
「うん」
「……」
「……」
それから、シーンと2人の間に沈黙がおりた。それは必然だったと思う。
なんせ委員長とまともに話したのは、今回が初めてだったからだ。
……なんだか、気まずい。
「(どうしたらいいんだ?)」
なんか話題を出した方がいいのかな? いやでも委員長と共通の話題なんて知らないし……。そうだ、こういう時は、天気の話をするといいってたしか本に書いてあったな。
そう思っていると、委員長が先に口を開いた。
「きょ、きょ今日は、いい天気だねー」
「そ、そうだな」
「夕陽がキレイで、ずっと眺めたくなっちゃうよね」
「あ、あぁ」
どうやら、俺と同じで委員長も気まずかったらしい。
俺も必死で委員長の話題に食いついた。
「たしかに、キレイな夕陽だよな」
「だ、だよね! ゆ、夕陽といえば最近の水9の"夕陽のせい"ってドラマ観てる?」
「あ、あぁこの間見たよ」
その瞬間、委員長の目がキラッと輝いた。
? どうしたんだ?
「私、主演俳優の太陽くんのファンで毎週楽しみにしてるんだ!」
一瞬ドキッとしたが、俺はなんでもない顔で委員長の話題に乗った。
「へぇー、真上 太陽(まがみ たいよう)のファンなんだ。どんなところが、好きなの?」
「聞いちゃう」
「へっ?」
「それ聞いちゃう? 時間大丈夫?」
「う、うん大丈夫だけど?」
俺がそういうと、嬉しそうに委員長をキラキラ目を輝かせた。
「太陽くんはね、とってもカッコいいの! もう生きてるだけで尊くてねー、太陽くんの姿や声を聞くだけで、毎日頑張れるんだー(ペラペラ)」
饒舌に語る委員長。
俺はそんな委員長の新たな一面に驚いた。
なぜなら、いつもおどおどしている委員長が饒舌に語り出すとは思わなかったからだ。
「それで、太陽くんがね!」
それから1時間。委員長は、真上 太陽について語りまくった。その顔はとてもうれしそうで、本当に真上 太陽が好きなんだなぁって思った。
「でね!……って、もう1時間も経ってる!? ご、ごめんなさい! ひ、日ノ出くんの時間を奪っちゃって!」
「いや、気にしなくていいって」
「本当にごめんなさい!」
委員長は、ペコペコと頭を下げた。
別に頭を下げなくていいんだけどな。
だって話を聞けて、楽しかったし。
ふと委員長の顔を見ると、どこか暗い顔をしていた。
「ひ、引いたよね。私って太陽くんの話になると熱中しちゃって、周りからは引かれちゃうんだよね」
シュンと落ち込む委員長に、
「引いてない。むしろ、話を聞けてよかったよ」
「へっ?」
俺は本音を伝えた。
「き、聞いてて楽しかったし、それに、委員長の新たな一面が見れて俺はよかったって思ったけどね。また話してよ!」
親指を立ててグーサインをする。
「っ!」
すると委員長は眼鏡を外し、ハンカチで目をゴシゴシ拭いた。
何か思うところが、あったのかもしれない。
「……ありがとう、日ノ出くん」
嬉しそうに、そしてどこか恥ずかしそうに笑う委員長。
そんな委員長の顔を、俺はジッと見つめた。
今まで話したことがなくて気が付かなかったけど……委員長って、
「日ノ出くん、どうかしたの?」
「いや、委員長って顔が整ってるなって思って」
「ふぇ?」
長い髪の毛をおさげにし、黒縁の丸い眼鏡をかけ、真面目な印象を受ける委員長。
けどよく見ると目はぱっちりしてるし、鼻はすっと高い。かわいらしい顔をしていた。
「コンタクトに変えて、髪型を整えたらさらに可愛いくなると思うんだよなー。今も充分かわいいんだけどさ」
「ひ、ひひ日ノ出くん!?」
「あっ悪い」
あまりに熱中し過ぎて、委員長の顔に近づきすぎていた。委員長は顔を真っ赤にしながら、「あわわわっ」っと呟いている。
「それにしても、委員長の顔、かわ……」
「わかった! わかったから!」
「そうか? もうちょっと」
「これ以上いわれたら、キャパオーバーしちゃうよ!!」
目に涙を溜めながら顔を赤らめる委員長の姿は、可愛かった。
*
あの後委員長を家まで送り、家に帰った俺。(ちなみにその後、キラ☆ルリトークで盛り上がった。委員長はキラちゃん推しらしい)
さて、出前でもとりますか。
リビングに向かっていると、
「おい、こら」
ドンっ!
「へっ?」
誰かに腕を強く引かれ、壁に押し付けられた。そして足の間に足をドンと入れられた。いわゆる、股ドンっというやつだ。
犯人は、誰かわかってる……ってか1人しかいない!?
「女の子と帰り道、何イチャイチャしてるの? お兄ちゃん」
ニコッといすずは笑っているけど、目はまったく笑ってなかった。
こ、怖っ!?
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