第二の鑑定 戻ってくる手毬 4-5
お玉がぽつりと口を開いた。
「はい、何ですか?」
代表で甲斐が答える。
「竹田屋に新しく店番に入ったサダ吉っていう男を知ってるかい?」
「ええ、さっき会いました」
「あのサダ吉……はっきり言って、どんな奴だと思う?」
「……えっ?」
受け答えをしていた甲斐は、微妙な顔で雪緒たちを見つめた。
しかし、雪緒も中津川もそれに答えられるはずはない。何せサダ吉とはつい先ほど会ったばかりで、殆ど初対面なのだ。
雪緒はなんとなくサダ吉のことを思い返してみた。印象に残っているのは、まずあの細長い馬のような顔と、鼻の横の黒子だ。それに、何度か銀蔵に叱られていたことと、ひょうきんな立ち姿。一言で言えば、ちょっと抜けている感じのする人物である。
だが当然、そんなことを正直にお玉に言えるはずもなく……。
「俺たち、さっきサダ吉さんと初めて会ったので、詳しくは何とも……」
結局、甲斐が言葉を濁すように答えた。お玉は残念そうな顔で頷いた。
「そうかい。それじゃ仕方ないね。いやね、竹田屋の銀蔵さんは昔馴染みだから、あたしもサダ吉の馬面くらいは知ってるんだけどさ、人となりが分からないんだ。……よく知らなきゃ、縁談も勧められないからねぇ」
「え、縁談?!」
雪緒の声が過剰に裏返った。縁談、および結婚という言葉は、雪緒にとって厭な思い出を引き出す呪文のようなものだ。
「さ、サダ吉さんと……どなたの縁談なんですか?」
震える声で、雪緒は尋ねた。対照的にお玉はにこにこしながら言った。
「キヌちゃんの隣におしずっていう娘が住んでるんだけど、その娘とサダ吉の縁談さ」
「えぇ、おしずさん?!」
「おしずちゃんもキヌちゃんと同じで身寄りがないから、こういう話は大家のわたしが手配しないとねぇ」
大家が店子の結婚を世話するのは珍しいことではない。旧時代から続く風習の一つだ。
だが、それにしても意外な組み合わせだと雪緒は思った。ひょうきんな顔つきで少々騒がしかったサダ吉。ただひたすら奥ゆかしい感じの漂うおしず……。こう言ってはなんだが、二人は見た目からして正反対のような気がする。
「何でまた、おしずさんとサダ吉さんなんですか?」
雪緒と全く同じことを考えたのだろう。甲斐がまっすぐに疑問をぶつけた。すると、お玉は平然と答えた。
「何でってそりゃ、結婚するなら、好き合ってたほうがいいだろ? サダ吉はおしずちゃんに気があるのさ」
「う、うえぇぇぇっー?!」
雪緒はとうとう叫んでいた。失礼なのは承知だが、頭の中で『サダ吉』と『懸想』という単語がどうしても結びつかない。
「気があるとはどういうことでしょう。サダ吉くんは、おしずさんと知り合いだったのですか?」
頭の中が大混乱に陥っている雪緒の横で、中津川が訊いた。いつも通り、淡々としていて冷静な口調だ。
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