第二の鑑定  戻ってくる手毬 4-6

「いやー、おしずちゃんは身よりもなければ友達もいないって言ってたからねぇ。以前から知り合いだったわけじゃないだろうよ。でも、サダ吉がおしずちゃんに気があるってのは間違いない。ありゃ、一目惚れだね」

 お玉は腕組みをしながらしみじみと言った。

 中津川は一歩前に足を踏み出した。顔つきがいつもより少し真剣になっている。

「一目惚れ……。お玉さんがそう判断した根拠は何でしょう」

「サダ吉はね、この近所でおしずちゃんのことを聞き回ってたんだよ。わたしゃここら一帯の大家だから、そういうことも耳に入ってくる。あの馬面ったら、おしずちゃんが越してきた時期だとか、前はどこに住んでただとか……ああそうそう、通っている銭湯のことまで根掘り葉掘り聞き出してたらしいよ」

「銭湯……?」

 雪緒は思わず顔を顰めた。女性のお風呂のことを探るなんて、何だか少し下品な気がしてしまう。

「なんでも『おしずちゃんはどこの銭湯に通ってるのか』とか『同じ銭湯に通っている娘はいないか』とか、相当しつこかったらしいねぇ。恐らく、風呂帰りに偶然のふりをして声を掛けようとしてたんだろうよ」

 一言で言えば軟派な誘惑が目的らしい。

 ……こんなこと聞かなきゃよかった、と雪緒が呆れて溜息を吐くと、お玉もやれやれと苦笑して最後にこう言った。

「でも、おしずちゃんは恥ずかしがり屋で、銭湯にいかずに長屋で湯浴みをしてるんだ。サダ吉はそのことを聞いて、ちょっとがっかりしてたみたいだねぇ」

「ふむ……なるほど」

 中津川はしばらく考え込むような仕草をした。しかしやがて、ずり落ちた眼鏡を指で押し上げ、薄く笑った。

「お玉さん。貴重なお話ありがとうございます。……誉、雪緒くん。行こう」

 ばさりと袴の裾を揺らして、中津川の長身が翻る。

「もういいのか、一臣」

「待ってください、先生」

 甲斐と雪緒も慌てて踵を返した。

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