第二の鑑定  戻ってくる手毬 3-3

「それじゃ、儂はちょっと店の方へ行かせてもらうよ。手毬のことは店の者みんなに話してある。このサダ吉も知ってるから、儂が戻ってくるまでこいつと話をしててくれ。……サダ吉。そういうことだ。頼むぞ」

「へぇ」

 銀蔵は板の間を出て行った。残されたサダ吉は、雪緒たちをきょとんと見つめている。

 サダ吉の顔は縦に少し長く、いわゆる馬面だった。鼻の横に大きな黒子がある。年は二十代半ばと言ったところだろう。

 背は、中津川や甲斐と同じくらい高い。ひょろりとしていて、背中を丸めるようにして突っ立っており、そんな顔つきや立ち姿が、どことなくひょうきんな感じを漂わせている。

「えーと、例の手毬のことって、何を話せばいいんですかい?」

 サダ吉は鼻の横の黒子を指で掻きながら言った。

「サダ吉くん。店で働く人たちの間では、手毬の件はどういう風に言われてるのかな」

 質問をするのは、やはり中津川だ。

「そうですねぇ。あっしらみんな、不思議に思ってますよ。不思議って言うより、もう不気味と言ったほうがいいかもしれねぇ……。なんてったって、同じことがかれこれもう四度ですぜ?」

「そんなに不気味なのに、きみたちは誰もキヌヨさんに手毬を返してしまおうとは思わなかったのかな。手毬をキヌヨさんに返して、買い取った時のお金をキヌヨさんから戻してもらえばいい。そうすればこんなことにもう巻き込まれないで済むよ」

 中津川の言うことはもっともだと雪緒も思う。

 手毬が勝手にキヌヨのところに戻ったのは一度や二度ではない。当事者ではない雪緒でも気味悪く思うのだから、竹田屋の者たちはなおのこと不安だろう。

「はぁ。実は手代が旦那に『こんなに変な毬、キヌヨさんに返してしまおう』って言ってみたんですけどねぇ」

「で、銀蔵さんはなんと?」

「『一度買い取ったものを戻すのは良くない。キヌヨさんは儂を信用してここに来てくれたんだから』と言って聞き入れませんでした。そういうお人なんです。うちの旦那は」

 銀蔵の人柄の良さは、ちょっと話しただけの雪緒にもよく伝わってきた。豪快なところもあるが、根は優しい人物だ。

「うちがあの手毬をキヌヨさんに返しちまったら、同じ値段で買い取ってくれる店は他にねえはずです。うちの旦那はあれに特別いい値段をつけましたから」

 サダ吉の答えを聞いていた中津川の眉が、そこで少しだけぴくりと動いた。

「銀蔵さんは、キヌヨさんとは親しいのかな。……客の中でも特別に」

 すると、サダ吉は「ええ! そりゃもう」と目を輝かせた。

「キヌヨさんが店に来ると、旦那はいつも寄っていって長く話し込むんです。あっしはここに来てまだ半月ですが、それでもすぐ気が付くほど旦那の顔がにこにこするんでさぁ。キヌヨさんが手毬を持ってきてくれた時なんて、小一時間は話しっぱなしでしたしねぇ」

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