第二の鑑定 戻ってくる手毬 1-2
雪緒はてきぱきと人数分のお茶を用意した。それが出揃ったところで中津川が口を開く。
「誉、話を聞こう。お前が来たってことは、『あれ』だろう?」
「ご察しの通りだよ一臣。『鑑定』を依頼したいんだ」
甲斐の顔を見た時から雪緒も何となく分かっていたが、これから始まるのは中津川の『副業』に関する話だ。『曰くの真贋鑑定士』。これが、画家・中津川一臣のもう一つの顔である。
「で、今回はどんな代物なんだい?」
中津川が尋ねると、甲斐は笑顔で答えた。
「うん。まず問題の品の持ち主の話をしようかな。持ち主はある女性だ。俺の知り合いの店に来たお客さんで、今は深川の方に住んでいる」
「ほう。……で?」
「その女性はあるものを処分したんだ。だが翌日、それが勝手に家に戻ってきた」
「えっ、捨てたものが戻ってきたんですか?!」
驚愕の声で叫んだ雪緒に、甲斐はこくりと頷いて見せる。
「そうなんだよ。前の日に手放したはずのものが、朝、家の軒先に置いてあったらしい」
処分したはずのものが戻ってくる。……何とも奇妙だ。そんなことがあるのだろうか。
雪緒が首をひねっていると、お茶を飲み干した中津川が口を開いた。
「捨てたはずの人形が戻ってきたという話を、何度か聞いたことがある」
「えっ、先生、何ですかそれ」
訊いてはみたものの、厭な予感がした。どうも平穏無事な話ではなさそうな気がする。
「言葉通りさ。新しい人形を買って古いのを捨てたのに、それが戻ってきたんだよ。相当使い込んだ人形だったから、髪は半分抜け落ちて、顔は割れてた。それが一人で歩いて戻ってきて、最後は寝ている持ち主の枕元に立っていたらしい」
「うぅ……気味悪い」
枕元に立つぼろぼろの人形の姿を想像して、雪緒は縮み上がった。もしそんなものが自分のところに現れたら、たまったものではない
「人形はその名の通り人の形をしているから、怨念が宿りやすいんだ。人形としては、捨てられたくなかったんだろうね。……で、今回の品は何だい。やっぱり人形かな」
不気味すぎる結論を述べたあと、中津川は淡々と甲斐に訊いた。それを受けた甲斐もこの手の話には慣れているようで、顔色一つ変えずに答える。
「いや違う。問題の品は……手毬だ」
「手毬ってあの、子供がぽんぽんついて遊ぶ、あれですか?」
毬突きの動作をしながら雪緒が問う。
「うーん、それとはちょっと違うかな」
甲斐は軽く首を傾げ、そのあとさらに笑顔を浮かべた。
「俺が話すより、実際に見た方が早い。これから持ち主の女性と会うことになってるんだ。一緒に行かないか?」
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