「うわーん！どうしようシオナぁ！」

　帰ってくるや否や、お姉ちゃんがそう言って私に抱きついてきた。

「ど、どうしたのお姉ちゃん！？」

「うぅ…聞いてよシオナぁ…」

　・・・・・・

「なるほど…つまりお姉ちゃんの自業自得ってことだよね？」

「う゛っ！！ま、まあそうだけど…そうなんだけど！！思わせぶりなことするケーキ君も悪いと思わない！？」

「仮にお兄さんがお姉ちゃんのことが好きだったとしても、あの人はもっとTPOも準備も整えると思うよ？」

「う゛っ！！シオナ…ケーキ君のことよく分かってるじゃん…」

　それは…ずっと思ってますから…

「まあ、この話はこれ以上はいいよ。とりあえずお姉ちゃんは、お兄さんにお弁当を作ってあげたいんだよね？」

「うん！」

「じゃあ頑張って再現してみようよ」

　するとお姉ちゃんはうつむき気味に言った。

「ウチにできるかなぁ…」

「完全再現する必要は…ないと思うよ？元から地力の差は明らかなんだし」

「シオナ！？さっきから言い方にトゲあるよ！？」

　・・・・・・

「なるほどね、メニューはそれで全部？」

「うん…ホントは写真撮ろうと思ってたんだけど…」

「分かってるよ、でもこのメニューならネットのレシピで似た感じにはなると思う」

「ホントッ！！！？」

　そして私に教わりながらお姉ちゃんは慣れない手つきでお弁当の具材を作っていった。

　そして……

「出来たっ！！」

「結構ちゃんとカタチになったね」

「うんっ！ありがとっ！シオナ！」

　そう言うとお姉ちゃんが私に抱きつく。お兄さんにもこんな感じなんだろうか？

「でもあまりに美味しくなかったらダメだし、まずは食べようよ」

「うん！それじゃあ一緒に食べよ♪」

　そして一通り運び終わると私とお姉ちゃんはおもむろに卵焼きを口に運ぶ。

　うん、流石にレシピのまんまだから不味いことはない。でもお弁当なら塩っぱい卵焼きのほうがいいかな？

　なんて考えているとお姉ちゃんが不意に口を開いた。

「違う…」

「え？」

「なんか…これも美味しいし何が違うのって言われるとウーンって感じだけど、なんだかケーキ君のやつの方が美味しく感じる」

　……そういわれてしまうと私に出来ることはきっと何もないだろう。

　だってそれは作り方とか味付けが問題じゃなくて……

「大丈夫だよ。十分美味しいよ」

「で、でもっ！！！」

「それより、何でそんなにお兄さんにお弁当を作るのにこだわってるの？」

　するとお姉ちゃんは急に耳まで真っ赤になってボソボソと話し始めた。

「えっと…最近ケーキ君にお世話になりっぱなしで感謝を伝えたかったっていうか…お弁当食べてもらって胃袋掴めないかな…とか、もっとウチを見て欲しいっていうか…」

　こ、このお姉ちゃん…ウブだ！！

　乙女どころか女子小学生すぎるよお姉ちゃん！！

　でも…やっぱりお姉ちゃんもお兄さんのことが好きなんだよね。

　やっぱり私の出る幕なんてないんだな…

「と、とりあえず運動会までは時間あるから…それまで頑張ろう？」

「う、うん！一緒に頑張ろう！シオナ！」

　そう言ってお姉ちゃんは満面の笑みを浮かべた。

　きっとお姉ちゃんは私のお兄さんに対する気持ちを知ることは無いんだろう。

　一体私はどうするのが正しいんだろう？