第13話 胃袋キャッチ大作戦
「お弁当の作り方…?」
「そう!簡単なのでいいから!!」
僕は突然の頼みに戸惑いながらも答える。
「別にいいけど…どうしてお弁当なんかを?」
「今月運動会あるでしょ?その日は購買混むらしいから…」
自分で作っておきたいってことか…
「分かった。とりあえず明日、星谷さんでも作れそうなお弁当を持ってきますね」
・・・・・・
てことで今日は2人分のお弁当か…けど、中身は簡単なものでいいんだよな。
それなら、玉子焼きとアスパラベーコン、常備してる浅漬けに…冷凍してるハンバーグのタネがあるしピーマンの肉詰めにしようかな。
よし!あとは卵焼きを詰めるだけっと…
そこで僕はあることに気づいた。
「ちょっと地味か?」
実際はそんなことはない。お弁当の定番が入ってるし彩りもある。けれど相手は星谷さんだ。こんな普通の弁当を喜んでくれるだろうか…
玉子焼きをこうやれば見栄えも少しは…
そう思いながらは玉子焼きを切ってハートの形になるように並べる。
「よし!これならいいでしょ!多分…」
あとは、星谷さんが気に入ってくれるかだ…
・・・・・・
今日はケーキくんがお弁当を作ってくれる日だ。それと…初めてケーキくんとお昼を食べる日でもある。
「はっ!ダメダメ!ニヤけるなー、ニヤけるなよー」
「どうしたの?星谷さん」
「に゛ゃ!?」
「にゃあ?猫の何か見てたの?」
「い、いやいや!見てないよ!?それより!お弁当作ってくれたの?」
ウチがそう尋ねるとケーキ君は笑顔でお弁当を渡してくれた。この笑顔だけでもう満腹だ。
「ありがと♪ケーキ君」
そう言うとウチはケーキ君が隣に座るのを待ってお弁当を開ける。
「うわぁ……!すっごいちゃんとお弁当じゃん!」
ウチは思わず感嘆の声をあげてしまった。それほどまでにこのお弁当は絵になっていた。
そんな中、ウチはあるものに目が止まった。
玉子焼きが、ハート型だ…
ウチは思わずケーキ君のお弁当を覗き込む。そこに入っている玉子焼きは普通だった…
これってつまり…
さりげなくウチにアピールしてるってことぉぉぉぉ〜〜〜〜〜〜!!
ええ〜〜!いきなりそんな告白なんてぇ〜!恥ずかしいっていうか〜心の準備がっていうか〜!
あんなニブちんのケーキ君がいきなりそんなぁ〜〜照れるぅ〜〜!!
ハッ!!もしかして今までニブちんだったのもまさか告白に驚いてもらうための演技だった!?
えぇ〜〜〜!ウチまんまと騙されちゃったってこと〜〜〜!!
「……さん、星谷さん!」
「あっ!ケーキ君!賃貸に住むとしたら防音がしっかりしてるところにしようね!」
「えっ?何の話ですか?」
はっ!いけないいけない、現実と妄想がごっちゃになってしまった…
「い、いや。"まだ"なんでもない話」
「…?そっか、急にお弁当を凝視しだしたから何かあったのかと…」
「えっ!?あ、いや…この玉子焼き、ウチのだけハート型だったのなんでかなって思って」
「ああ、それは…」
一瞬、ウチの中で緊張が走る。
「星谷さんのために、少しでも映える感じにしたくて…」
「あっ、そっか………………」
なんだか、脳内で盛り上がってた自分が恥ずかしくなってきた…やっぱりケーキ君はニブちんだった。それどころかウチをその気にさせるニブちんだ…流石に少し怒ってしまっている。でも好き。
「えっと…やっぱり気に入らなかった?」
「………べっつにぃ〜」プクッ
そんな色んな感情が渦巻いて、ウチは思わずそんな子供みたいに応えてしまった。
「えっと…答えと表情が一致してないんですけど…」
「そんなことないもん、ごちそうさま。すっごくすっっっごぉぉく!美味しかったです!」
そう言うとウチは立ち上がりトイレへと向かった。
けれど、トイレに着いてウチが致命的なミスをしたことに気づいた。
「レシピ聞いてなかった…」
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