第66話
そうしてボス部屋の扉をくぐり抜けた私は、
キェエエエエエエ!
「こ、これが――フェニックス!」
そんな鋭い叫び声をあげる馬鹿でかい鳥に迎えられることとなる。
全身が業火に包まれており、見ただけで圧倒的な迫力を感じさせた。室内でも、グツグツとマグマが燃え盛っており圧巻の光景であった。
一言で言ってしまえば、とても熱そうな空間である。
「こ、これは食べ応えがありそうですね!」
私がそんなことを考えていると、
「うわっ」
突如、地面が消失し――
「あつつつつつっ!?」
地面からマグマが吹き出した!
全身を炎に包まれ、大慌てで飛び出す私。
「び、びっくりしました! この炎、普通の炎じゃないですね!」
おそらくはフェニックスの能力だろうか。
見たところ身にまとう炎を、ボス部屋の中なら自在に操り、敵に飛ばすことができる能力?
(おもちくんが言っていたデュラハンの料理に使えるのは、これのことかな?)
(たしかに便利そうです!)
「いきなりやってくれますね!炎耐性と灼熱耐性がカンストしてなかったら、溶かされてたところです!」
「カンスト、ッテ、ナニ!?」
一瞬、聞こえたのはおもちくんの悲鳴。
ボス戦が始まってから、おもちくんは、そわそわ私の方を見ている。
きっとフェニックスという強敵と戦う私を、心配してくれているのだろう。
「大丈夫です、この通り傷一つありません!あの程度の炎じゃ、私には一切のダメージを与えることは出来ません!」
「ソ、ソンナ……」
私は、にっこりと微笑み、おもちくんをハコベールに放り込む。
(万が一にも、攻撃が飛び火したら大変ですからね!)
そうして私は、フェニックスに向かって歩みを進める。
「だから、それは効きません!」
バカのひとつ覚えのように、フェニックスは炎を飛ばしてきた。
時には灼熱の弾を飛ばしてきたり、地中からマグマが噴出したり、部屋全体に熱風を起こしてきたり……、すべて私の耐性で、シャットアウト出来てしまうタイプの攻撃である。
(いったい、どんな奥の手を持っていることか――)
最初は警戒しながら距離を詰めていた私であったが、
(…………?)
(…………あ、あれ?)
油断はしない。
油断はしないけれど…………、
キ、キェエエエ?
気がつけば、あっという間にフェニックスを追い詰めてしまう私。
眼の前には、パタリパタリと悲しく羽ばたくフェニックスさん。
私とばっちり目が合うと、フェニックスは、
「えぇぇええ!?」
フェニックスさん、まさかのくるりと反転。
出口に向かって一目散に逃げ出そうとするではありませんか!
「逃がしません! 焼き鳥、焼き鳥!」
私はフェニックスに飛びかかり、地面に叩き落とす。
フェニックスはごうごうと燃え盛っており、熱さに弱い人なら、近づくだけで大ダメージを受けそうですが、やっぱり私にとっては、ほんのり熱い程度でしかなく……、
「あっはっはっは、ボスが逃げるなんて許しません! 私の糧になれ!」
ドカン、ドカンとフェニックスに拳を叩き込み……、
「一丁上がり!」
あっさり討伐に成功しまうのだった。
――一方、その頃。
"レイナちゃんつえぇぇええええw"
"久々に捕食者の貫禄見せつけられたなこれ!?"
"いったい何を見せられたんだw"
"深層のボスって逃げるんだ・・・(驚愕)"
"あんなの見せられたらしゃあないw"
レイナが見ていなかったコメント欄は、すっかりお祭りムードになっていた。
お祭りというよりは、もはや困惑の嵐である。
コメント欄を見ていなかったレイナではあるが、当然、配信は繋がりっぱなしであり、
"ま、間に合った・・・!?"
"最前線ソロ配信と聞いて!"
"レイナちゃんは、珍しく無言の本気モードだ!"
"本気モード(虐殺モード)"
"【朗報】フェニックス、ノーダメージキル"
レイナの配信には、次々と人が集まり、どんどんカオスなコメントが広がっていた。
まず目立つのは、配信に間に合わなかったことを嘆くコメントだ。
"なんか来たら終わってたんだけど!?"
"え、実は深層ボスってクソザコだったの?"
"レイナちゃんが強くなりすぎたのよ・・・?"
"海外チームによると、フェニックスは当たったら攻撃全部即死らしいぞ。レイナちゃん、どうやって避けきったんだ・・・?"
"いや、なんか普通に全部真正面から受けてたぞ?"
"耐性でゴリ押しっぽいね"
"そんなアホなw"
次々と戦いの様子が書き込まれ、見ていない者は混乱していく。
そもそも深層のボスの情報など、ほとんど出回っていない。だとしても、あまりにも探索者の常識から、かけ離れた攻略法だったのだ。
"最初、マグマの直撃喰らっても驚いただけでピンピンしてた。あれ、たぶんダメージ受けてないように見える"
"ほ、本当に人間なのか・・・・?"
"なあなあ? 深層のボスって、いまいち凄さが分からないんだけど・・・"
"↑↑ドラゴン◯ールで例えると、下層まではヤ◯チャみたいなもんで、深層進むにつれてフ◯ーザ、魔◯ブウとインフレしていく"
"ワイはヤ◯チャに負け続けてるのか・・・"
最初にコメントを見た人々は、アーカイブで戦闘を見直し……、
"ダメだ、なんも分からんw"
"レイナちゃんの中では、このクソ鳥も攻撃してこない優しい鳥の扱いされてそう"
"流石にそんなことは・・・、そんなことはないよな!?"
"レイナちゃん「何したいのか分からないクラゲさん!」"
"南無阿弥陀仏"
"レベル! レベルはすべてを解決する!"
"まじで攻撃を耐性だけでゴリ押したのかこれ?"
困惑しているコメント欄をよそに、
「フェニックスをハコベールに詰め込んで――ボス戦、終わり!コメントも見直します。えっと、えーっと!」
そんな脳天気な声が、配信に載り、
"あ、そろそろコメント欄見てくれそうw"
"まあ本人の口から聞くか!"
"↑↑お? レイナちゃんから戦闘の情報得ようとかレイナちゃん初心者か?"
同時に、端末を操作するレイナが画面に映り込む。
歴戦の探索者たちは、ボス戦の振り返りをワクワクと待つのであった。
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