第67話
「フェニックスさん、攻撃してこない優しい鳥でした。まあ、今はそんなことより、これからの焼き鳥の方が大事です!」
私は、そんなことを呟きながらコメント欄を覗き込む。
「コメント、見ていきますね! 戦闘に集中しちゃってすいません!」
"ええんやで"
"いや、普通に命を大事にしてw"
"秒殺で草。戦いの解説がほしい!"
「戦いの解説?」
(そう言われてもなあ……)
私は、こてりと首を傾げる。
今回の戦いは、言ってみればあまりにも敵との相性が良かったのだ。
攻撃をシャットアウトできてしまったのだ。
正直、特に工夫したこともない単調な戦闘だったと言える。
「炎耐性、熱波耐性、灼熱耐性。この辺がカンストしていれば、そもそもダメージを受けることもなさそうだったんですよね。優しいボスだと思います――多分」
"??????"
"灼熱耐性って何w?"
"アカンw なんも参考にならねえ!"
"開幕、マグマ直撃したときはヤバいかと思った正直"
「流石に、ちょっと熱かったですけどね!でも、カメラも焼き尽くされないで良かったです!」
"たしかにフェニックスの攻撃耐えきったそのスマホは何者なのw"
"捕食者のオーラまとってるから・・・"
"捕食者なら仕方ない……"
「そんなことより!! 焼き鳥ですね!あれだけ大きければ食い手がありそうです。楽しみですね!」
"そ・ん・な・こ・とwww"
"あまりにもアッサリしているw"
"レイナちゃん的には、こっからが本番"
"ここまでは材料集めだからな!"
「おもちくん、おもちくん!」
私は、ハコベールからおもちくんを取り出し呼びかける。
「ツ、ツヨスギル・・・」
「おもちくんのおかげで、ガッツリトレーニングしてから挑んだおかげです!灼熱耐性は、今回のトレーニング中に生えてきたんですよ。カンストしてから挑もうって、ミライちゃんと話してたんですが、正解だったみたいですね!」
私がにっこりと微笑みかけると、おもちくんは泣きながらぷるぷると震えていた。
ボス攻略に成功したのが、泣くほど嬉しいようだ。
「グルメ担当、調理方法の解説に期待してますね!」
「マ、マカセテ・・・」
"そういえば、おもちくん黒幕説。やっぱり違いそうだね"
"たしかに、おもちくんいなかったら、ここまでレイナちゃんトレーニングに本腰入れなかっただろうしね"
"おもちくんが居なかったら、普通にフェニックスで苦戦してたのかもしれないね? 救世主と言っても良いのかも!"
"疑って悪かった、おもちくん!"
ちなみにおもちくん黒幕説とは、私に毒を勧めまくる様子を見たリスナーの一部が、毒殺を狙っているという噂を広めた事実無根の誹謗中傷のことである。
(おもちくん的には、美味しいものを勧めているだけのはずなのに!)
(めでたくおもちくんへの誤解も解けて良かったです!)
そんなコメント欄を見ながら、私はこれからに思いを馳せる。
「ここのボスは、耐性スキルとそれなりのレベルがあれば倒せそうですね。次はミライちゃんも連れてきますね!」
"《ミライ》やった~! 焼き鳥、食べ放題ッス!"
"パワーレベリングはじまるwww"
"弟子もバケモノみたいな耐性スキル持ってるのか・・・"
"↑↑実は、ミライちゃんの方が、防御スキルは多かったはず"
"ミライちゃんが見つけて、レイナちゃんが再現して取得する流れチートすぎるのよ・・・"
"今日、やばいなあ。新宿ダンジョンの攻略層が、一気に四つ進んだんでは??"
"裏で、ボス倒してたの未だに信じられないんだけど・・・"
「そういうわけで。いざ、焼き鳥です!剛腕さん。料理の方は、お願いします!」
"《剛腕の不死殺し@料理担当》おおう、その燃えてるの調理するの?"
"唐突な無茶振りが、剛腕ニキを襲うw"
"まあイーターズのメンバーなら、灼熱耐性ぐらいカンストしてるやろ"
"わい、深層潜ったことあるけど、そんな耐性名聞いたこともないけど・・・?"
「ミライちゃんも、千佳も!焼き鳥食べたい人は、深層のいつもの場所まで来てね!」
"《鈴木 千佳》うちは遠慮しとくで?"
"《鈴木 千佳》毒とか含まれてたら即死するしな・・・"
"《ミライ》行くッス!"
「千佳、そろそろ毒耐性どう?」
"《鈴木 千佳》遠慮しとくで・・・"
"ピュアな善意がつらいw"
む~、とむくれる私。
こういう時、千佳は頑としてダンジョンの食材を口にしてくれないのだ。
ほっぺたが落っこちそうなぐらい美味しいのに。
"深層にいけば、レイナちゃんたちのパーティーに混ざれるってま?"
"リア凸はガチで迷惑だからやめとけよ"
"↑↑てか、フェニックスの肉、めちゃくちゃヤバい見た目してるからな。多分、並の探索者だと食べたら死ぬ気がする"
"まず並の探索者は、深層までたどり着けないから"
ちなみに集合場所を深層入口に指定したのは、リア凸防止である。
深層までたどり着ける探索者は世界でもごくごく一部であり、さすがにモラル面でもわきまえてる人が多いやろ――と千佳が言ったのだ。
"そもそもリア凸したところで、レイナちゃんたちどうにかできる人がいるはずもないし"
"草"
"いや、そうじゃなくて、そうじゃなくてサインほしい人とか"
"ただの厄介リスナーで草"
"サインといえば、マインちゃんどうなった?"
「あ、マインちゃんとは深層入口で合流予定です!」
ついに、待ち望んだフェニックスの焼き鳥だ。
私は、配信のコメントを通じて、ダンジョンイーターズの面々と深層の入口で待ち合わせることを約束するのであった。
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