解れる糸
テスト期間に入った。とはいえ高校までと違い、大学ではテスト期間中でも部活動やサークル活動は禁止されてないため(自主的に活動を休止するところもあるらしい)、写真同好会の活動は普段通り行われる。そう、普段通り雑談をしたり、お菓子を食べたり、時々レポート作成や、講義の復習をしたり……。本当に例の活動を除けば、一見何をしているのか分からないサークルである。
そうして一週間のテスト期間も無事終えると、ついに夏休みに入った。もちろん、夏休みの間もサークル活動は行われ、俺はこの暑さの中、変わらず部室へと足を運ぶ。基本放課後の暇つぶしのような活動に夏休みまで要することがあるのかと疑問に思うところだが、夏休み期間である八、九月の写真撮影に、夏休み明けに行われる文化祭の準備と、それなりにやることがあるらしい。そのため、夏休み中は本来の活動日である月、水、金の三曜日を活動日として俺たちは部室へ赴くこととなった。
それでも活動日が多い気もするが「暇だしみんなでいつも通り好きなことして過ごしましょ」とのことで、特に夏休み中予定もない俺は従順に従うことにした。
部室に行くことにももう抵抗はない。いつの間にか、あそこは俺の中で裏庭の次に気安い場所へと変わっていた。
駅から十五分ほど歩き、少し汗ばみながら俺はようやく部室の前まで辿り着く。部室はクーラーも何も冷房器具が備わっていないが、不思議と風通しがいいため窓を開けておけば程々に過ごすことができる。早く涼んで本の続きを読もう。俺は軽くハンカチで汗を拭い、それからドアノブに手を掛ける。ドアを開けると廊下より幾分涼しい風がそっと肌を撫で、俺は無意識に息を吐いた。
「あ、お疲れさま諫早くん」
「諫早お疲れ」
「おつかれー」
「……お疲れ様です」
三人から送られるいつも通りの挨拶。俺もいつも通り返した。俺はゆっくりとドアを閉め、自席へ向かう。
「今日も暑いね」
「……そうだね」
「ねぇ、こうも暑いと何か涼しくなるようなことしたくない?」
「例えば?」
「そうね……」
俺は椅子を引き、鞄を机の上に置いて着席する。
「あ、肝試しとかは?」
「この辺りにお墓とかあったっけ?」
「お寺も神社すらないね」
「じゃあ学校は?」
「申請しないと夜は侵入禁止だね」
「肝試しって、申請通るかな?」
「うーん、そうね……」
……いや、無理だと思うけど。
汗も引いたところで俺は鞄から本を取り出し、そのまま鞄を机の傍へ掛け本を開く。
「じゃあ昼間は?」
「それって肝試しになるのかな?」
「怖くはないね」
……ペラ。
「じゃあ部室でホラー映画でも観ましょ」
「それいいね!」
「怪談とかも良さそうだね」
「あり! せっかくだし黒い布とか壁一面に貼って、部屋の中真っ暗でやりましょ」
「ロウソクとかあったら雰囲気出そうだね」
「黒い布か……。演劇部あたりから借りられたりするかな?」
「演劇部にいる友達にあとで訊いてみるわね」
「ありがとう架凛。じゃあ今度、ロウソクとかいい感じのやつ買いにいこうか」
「そうだね」
「ふふ、いつやろうかしら?」
……ペラ。
そのあとも話は脱線を繰り返しながら続いたようで、本を置く度に話題は変わっていた。
「そういえば紙幣の寿命って一万円札が五年で、千、五千円札が一年らしいわよ」
「俺さ、おでんはご飯のおかずにならないと思うんだけど、みんなはどう?」
「駅ビルの中に新しいお店増えてたよね。確かパンケーキ屋さんだって!」
毎度のことながら、どういう話のそれ方をしたらここまで話題が飛ぶのだろう……。
結局この日は雑談だけで終わった。日が暮れる前に俺たちは一緒に部室を出て、例の鍵を使って部室を施錠する。
夏休みに入る前に彼女に鍵を返そうとしたが「まだ持っていて」と言われ、なぜかまだ俺が持っている。葛城さんと並んで鍵当番をしてほしいということだったのだろうか?
「もうそろそろ来るわね」
正門へ向かう途中、西尾さんは突然そう話を切り出す。なんの話だろう……とは不思議とならなかった。
「そうだね」
「今からわくわくしちゃうね」
葛城さんと彼女もなんの話か分かっているようで後ろに顔を向け、笑顔で受け答える。
恐らく、三人が話しているのは……。
「写真同好会メインイベントー」
「花火大会!」
葛城さんの号令を機に、彼女と西尾さんの声がぴたりと重なる。茜色の空に二人の声が響いた。
「今年の開催は八月の第三土曜日に決まったね」
「ね! あと二週間ちょっとだよ」
「今年も去年と同じ場所で見たいわね」
「じゃあ今年も早めに行って場所取りしようか」
「そうね」
三人の会話にふと、俺は通りの傍に並んだ緑を眺める。それは芽吹きたての柔らかな新緑ではなく、青々と夏空に日焼けした深緑。
そっか、あの日から三ヶ月が過ぎようとしているのか。長かったような短かったような、なんだかよく分からない気持ちになる。……ただ、早く終わってほしいとだけ思っていたこの仮入部が、今は少しそれだけではないような、そんな気がした。
……もう、あと二週間。あと二週間でここにいる理由もなくなる、のか。
「それで、諫早はどう?」
「…………え」
西尾さんの呼びかけで俺は我に返る。あれ、俺は今、何を考えていたのだろう?
「……あ、ごめん、なんの話、だっけ?」
「もー諫早ったら。花火大会の日、午前中から集まろうって話。花火が始まるのが十九時だから、それまでどこかで遊んだりご飯を食べたりしましょって」
西尾さんは嫌な顔一つせず、もう一度会話の内容を話してくれる。俺は「ごめんね」と再度口にし、前を歩く彼女と葛城さんを見やる。その視線に二人はすぐ気づいたようでニコリと微笑んだ。
「楽しそうだし俺は賛成だよ」
「私も」
「……うん、俺もいいと思う」
いつも通り、意思のない曖昧な返事。けれど三人とも慣れたように頷き返してくれる。
「よし、決まりね」
「じゃあ具体的なことはまた次の活動で決めようか」
「うん! 今年は花火以外の写真もいっぱい撮ろうね」
「四人の写真、いっぱい撮るわよ!」
そうしていつの間にか正門まで辿り着いた俺たちは「またね」と、各自帰路についた。その日は家に着いてからも、なんだかぼうっとすることが多かった気がする。
夏休みに入って三週間が経ち、本日、花火大会の三日前。途中お盆休みを挟みつつ花火大会当日の具体的な予定も決め終わり、活動は文化祭へ向けて必要な書類の提出や、主に展示する写真の選別作業となった。……といっても、俺はこの作業には参加せず、勤しむ三人の傍で本を読んでいるのだが。
文化祭の頃には俺はもうとっくにこのサークルからいなくなっている。それでも今はまだ仮部員なわけで、できる限り三人の晴れ舞台の手伝いをさせてもらおうと思っていた。けれど机いっぱいに広げた写真を見た時、俺には三人ように写真を手に取ることができなかった。一緒になって写真を選ぶことにひどく違和感を覚えた。
このたくさんある写真の、その一つ一つに三人の大切な思い出が詰まっている。それを、ほとんど部外者である自分が取捨選択するなど、なんだか烏滸がましいような、不躾なような気がしてしまい、俺は身勝手ながらこの作業から遠慮させてもらうことにした。なんの力にもならない俺を、三人は二つ返事で許してくれた。
それでも本当に何もしないのは申し訳ないので買い出しや荷物運びなど、簡単な手伝いはさせてもらっている。今日はそんな野暮用もないらしく、俺は三人の邪魔にならないよう静かに本を読む。
いつものように、一枚一枚ゆっくりとページを捲っていく。一文一文に目を配りながらじっくりと読み進めていく…………ことができなかった。俺は少しも物語に集中できず、本の世界に身を投じることができなかった。
決して本の内容に問題があるだとか、三人が賑やか過ぎるだとかそういうわけじゃない。それに多少賑やかな中でも自分は読書に集中できると、自負している。
ではなぜこんなにも話が入ってこないのか。なぜ俺の内心はこんなにも落ち着いていないのか? ドキドキ、バクバク、ザワザワ、ソワソワ……。この気持ちを表現するのに、どれが一番適しているだろう。やはりこの間から少し調子がおかしい。
「キーンコーンカーンコーン」
構内に響く鐘の音に俺はハッと我に返る。腕時計を見ると時刻は十四時三十分だった。……そうだ、今日はこのあと用事があるんだった。
俺は机の傍に掛けている鞄を取り、本をしまう。もしかすると用事を忘れていた自分にどこか落ち着いていなかったのかもしれない。俺はそう無理やり腑に落とすことにした。
「あ、諫早今日はもう帰り?」
「……うん、先にお暇させてもらうね」
葛城さんに答えつつ俺は席を立つ。今日中に済ませればいい用のため特に急ぐこともないが、それでも夕方には済ませておきたい。
俺はそのまま机の中に椅子をしまい、鞄を肩に掛けようとした……その時、「あ!」という声と、ガタンっと椅子が動く音が前から聞こえてきた。
「私もそろそろだった!」
目の前の彼女を覗くと、彼女はそう言って机の上の写真とペンを慌てて片付け出す。途中、俺を見上げた彼女と目が合い「諫早くんちょっと待ってね、一緒に正門まで行こう!」と、彼女はまたすぐ顔を戻して机の上でトントンと写真を軽く叩き、整える。
俺はどこか既視感を覚えつつ答える代わりに鞄を肩に掛け、しまった椅子の背に手を置き、彼女を待つ。
「あぁ、そういえば今日だったわね」
ふと彼女の様子を隣で見守っていた西尾さんは思い出したような、納得したような声を漏らす。彼女はそれに「うん、そうだよ」と荷物をまとめ終えたリュックを背負い、嬉しそうに返す。
どうやら彼女もこのあと用事があるらしい。
「気をつけてね」
「ありがとう架凛ちゃん。お待たせ、諫早くん」
「……うん」
俺はドアの前まで移動し、ドアノブに手を掛ける。隣には彼女もいる。
「……お疲れ様でした」
「お疲れさま、またね」
「二人ともおつかれー」
「お疲れ。色葉はまた花火大会の日にね」
三人が手を振り合う中、俺はゆっくりとドアを開け部室を出る。彼女もすぐ後ろを付いてゆっくりとドアを閉めた。
二人分の足音が廊下に響く。なんとなく彼女の足音からウキウキと楽しげな音を感じた。
「花火大会まであと三日だね」
その足取りに劣らない声色で彼女は話を振る。こうして彼女と二人歩くのはあのお祭り以来だが、それよりも俺はあの商店街へ行った時のことを思い出す。……なるほど。さっきの既視感はこれだったらしい。
「……そうだね」
「当日は天気もいいみたいでよかったよね」
「……そうだね」
「早く三日後にならないかなー」
「……それは無理、かな」
「ふふ、本当に綺麗なんだよ。今まで見にいった花火大会で一番盛大だったかも。諫早くんは何回花火大会に行ったことある?」
「……俺は、ないよ」
「え、ないの? 一回も?」
「……うん、一回も」
そこで会話が止まる。隣を歩く彼女の歩調が変わった。
俺は彼女を窺う。彼女はキョトンとした表情で俺を見ていた。大きな目が真っ直ぐ俺を射抜く。その目は一体何を言い表しているのだろう。読み解けない俺はとりあえずこう答えた。
「……テレビとか写真でしか見たことないけど、見れば大体綺麗だな、とは思うよ。でも特に直接観に行きたいって思ったことはない、かな」
俺はもう一度彼女を窺う。すると、彼女は変わらず大きな目を俺に向けていた。次第に彼女の足が止まり、俺も合わせて止まる。
「じゃあ、目の前で花火を見ること自体、初めて?」
徐に口を開いた彼女は俺にそう問いかける。
「……そうだね」
「手持ち花火とかもしたことない?」
「……ないね」
彼女は再び沈黙を落とす。そして少し間を置いてから、改めて訊いた。
「それなのに、あの写真を見て興味を持ってくれたの?」
「…………そう、だね」
彼女のその質問で俺はようやく彼女の心理が分かった気がした。
恐らく、彼女が思っていることはこうだ。今まで花火を見ること、ひいては花火自体あまり興味のない俺がどうして「あの写真」には興味は示したのか、と……。
俺は視線を下げ、考える。確かあの時、葛城さんに気になった写真はあるかと訊ねられた。俺はそれに適当にでも何か答えようと写真を漁り、その中であの写真を選んだ。他の写真ではなく「あの写真」を。……でも、それはなぜ?
「……………………どうしてかは俺にも分からない、かな」
いろいろと思い返し思考を巡らせたが、結局答えは見つけられなかった。自分のことなのに歯がゆい。彼女も疑問が解消されず、モヤモヤしていることだろう。
俺は申し訳なく、遠慮がちに彼女を覗く。すると俺は面食らった。彼女は俺の予想とは裏腹に、なぜか嬉しそうに笑みを零していた。薄暗い廊下に彼女の灯った色はよく見える。
「そっか。……そっかそっか。じゃあ当日、楽しみにしててね!」
彼女は再び足を進める。その足音からはやはり楽しげな音が奏でられていた。
俺も足を進める。……やはり彼女はよく分からない。
廊下を曲がって九号館の出入り口を目の前にした俺たちは、そのまま外に出て正門へ向かう……ことなく、自然とそこで足を止めた。
それもそのはず、もくもくと白い雲を纏っていた空はいつしかそれを薄暗い雲へと変え、シトシトと雨を降らせていた。予報では今日は一日曇り空と言っていたが、どうやら運悪く一雨来てしまったらしい。
鞄の中に折りたたみ傘を入れておいてよかった。もうかれこれ一ヶ月以上重宝している気がする。そろそろ休みをあげないと可哀想かもしれない。
「……どうしよう」
鞄の中に手を伸ばそうとすると、消え入りそうな声で彼女が小さく呟いたのを俺は耳にした。
俺は伸ばした手を引っ込め、彼女を覗く。彼女は眉尻を下げ雨空を見ていた。やがて彼女は俺の視線に気づくと、眉尻を下げたまま口角を上げる。
「私、今日は雨降らないと思って傘持ってくるの忘れちゃった」
ついてないね、と彼女はそのまま肩を落とす。まぁこればかりは仕方ない。
天気雨かもしれないし部室で少し待ったら? そう言おうと開いた口は、咄嗟に部室での彼女と西尾さんの会話を思い出し、何も言わず閉じた。
確か彼女はこのあと用事があるようなことを言っていた。それは急を要するものなのか、後日に回せるものなのか、それは俺には分からない。けれど、この提案が彼女にとって有意なものになると、なんとなく俺は思わなかった。
「あ、諫早くんは傘持ってる? なら帰って大丈夫だよ」
私のことは気にしないでと言うように、彼女は笑って言う。
「……けど加賀さん、このあと用事があるんでしょ」
そう返すと彼女はさっきまでの笑顔を崩し、目を伏せ、また困ったように笑った。
「……うん。実はね、これから実家に帰るの」
「……実家? 今から?」
「うん」
以前、彼女は実家が遠いため一人暮らしをしていると言っていた。夏休みを利用して帰省すること自体、何も可笑しなことはない。けれどわざわざお盆を終えたこの時期に? そんなことを思っていると、彼女は答えを教えてくれる。
「今日ね、お母さんのお誕生日なの。だからお母さんのお誕生日会をするために、ね。……あ、けど明後日には戻ってくるから、花火大会の日は問題ないよ!」
急に一人で慌て出す彼女に俺は何も言ってないよ、と言いかけ、やめる。あれだけ当日を楽しみにしている彼女が来ないなんて微塵も思っていない。それに西尾さんは彼女に言っていた。また花火大会の日にね、と。
俺はとりあえず「うん」と頷いて答えた。彼女は平静に戻り、ニコリと微笑む。
「昔からお母さんのお誕生日は私がケーキを買いにいって、お父さんが仕事帰りにお花を買ってきてね。プレゼントはいつもお父さんと一緒に選んだものをあげてるの。ふふ、お父さんちょっとセンスが独特でね、一人だと変なもの買ってお母さんを困らせちゃうから。……でもね、お花だけはいつも自分で買うの。毎年同じお花なんだけど、それがお母さんの一番好きお花で、プロポーズの時もそのお花を贈ったんだって……」
楽しそうに、嬉しそうに家族のことを話す彼女の言葉の節々から、彼女がいかに家族を愛し、いかに愛されているかが伝わってくる。以前彼女の人柄について考えたことがあるが、きっとこの家族の温かさも彼女を形成する一部なのだろう。
「って、ごめんね、私ったらついおしゃべりしちゃって」
「……大丈夫だよ。それで、実家には何時に帰るの?」
「一旦荷物を取りに家に戻って、ツバメ駅から出る三時三十分の新幹線に乗って帰るつもり、なんだけど……」
彼女はポケットからスマホを取り出し画面を見る。俺は自分の腕時計を確認した。時刻は現在、
「……二時四十分、か」
俺と彼女は揃って空を見上げる。雨はまだ一向にやむ気配を見せない。
「やみそうにないね。……しょうがない!」
「……え?」
そう言うと彼女は突然背負っていたリュックを体の前で抱え出し、雨の届かないギリギリに立ち、今度は空ではなく目の前の道を見る。……これは、もしかして。
「え、加賀さん?」
「ん、どうかした?」
「……もしかして、このまま走って帰ろうとしてる?」
「そうだよ?」
……当たりだ。
「今から走って帰ればお風呂に入る時間はないけど、着替える時間くらいはあるから。……よし。じゃあまたね諫早くん!」
そう言うと彼女は再び外に目を向け、今にも走り出しそうな構えを見せる。俺はそんな彼女を慌てて止めた。
「ちょ、ちょっと待って加賀さん! ……これ、使って」
俺は鞄から急いで折りたたみ傘を取り出し、彼女に差し出す。彼女は目を見開いた。
「え、でも、それだと諫早くんが……」
彼女は困惑した顔で俺を見る。あぁ、きっと彼女はそう言うと思った。
「……俺は部室にもう一つ傘があるから、大丈夫だよ」
俺は予想していた言葉に装った言葉を返す。彼女はまだ困惑したままだ。
「本当……?」
「……本当だよ」
そう答えると彼女は俺を見て、傘を見、もう一度俺を見た。やがて彼女は俺の言葉を飲み込んでくれたようで、差し出した傘をゆっくりと受け取ってくれる。
「じゃあお言葉に甘えてお借りするね。ありがとう諫早くん。次のサークルの時、花火大会の日に返すね」
ふっと笑みを浮かべた彼女に俺は頷いて答える。彼女は抱えていたリュックを背負い直し、傘を開いた。
「……じゃあ気をつけてね」
「うん、ありがとう。またね諫早くん」
彼女は傘を持つ反対の手を振り、少し足早に校舎を出る。俺はそれに小さく手を上げ、校舎の奥へと戻る。
一歩、二歩、三歩……。廊下を曲がり、そこで足を止める。ここなら外から見えないはずだ。
俺は腕時計を眺め、秒針が三周するのを待つ。……そろそろ大丈夫、かな。
踵を返し、もう一度出入り口の前に立つ。彼女の姿はもうなかった。雨は相変わらず降り続いている。
とりあえず駅に着いたら最初に隣の駅ビルで傘を買おう。そのあと花とお菓子と、ロウソクはこの間サークル用と別に買っておいたから、あとはマッチだけ買えば大丈夫、なはず。
俺はもう一度だけ空を見上げる。……さて。この雨の中、火はつく、かな。
さっきの彼女のように鞄を抱え、俺はできるだけ早く雨の中を走った。
「くしゅん」
自宅のベッドの上、花粉症ではない俺がくしゃみをする時は大体決まっている。
あの日から三日が経ち、俺は……風邪を引いた。やはり雨に濡れたことが原因か、調子がおかしかったここ二週間は体調を崩す予兆だったのか。あの日帰ってからシャワーを浴び、晩ごはんを食べ、眠りについた翌日、妙な気怠さと寒さで目が覚めた。特に体が辛いわけでも熱が高いわけでなかったため薬を飲んで安静にしていれば二日で完治すると思っていたが、どうやら俺の体を蝕むウイルスは力は弱いながらもその持続力を売りにしているタイプだったらしい。現在、体温は三十七度五分。
「……はぁ」
少し熱を帯びたため息が自室に溶ける。
全く動けないわけはない。ただほんの少し頭がぼうっとするのと、喉が痛むくらい。これくらいなら全然出歩いても……とそこまで考え、俺はハッとする。
風邪を引いているのだから療養するのは当然。今までだって当然にそうしてきた。なのに、どうして俺は今日に限ってそんなことを思ったのだろう。
「…………」
俺は休む旨を伝えるためヘッドボードで充電されているスマホに手を伸ばす。画面を開き、スクロールしてメッセージアプリのアイコンを見つける。
「……え」
思わず声を漏れる。それは、見つけたアイコンの上の方に小さく「16」と表示されていたから。この数字は未読のメッセージ数を教えてくれるものだが、俺はこんなに溜まった通知数を見たことがなかったから。
元々このアプリを入れることになったのは彼女たちが原因だ。彼女たちが連絡をとるのに不便だからと勝手に俺のスマホにインストールした。そのためアプリには「写真同好会」のメッセージグループと三人の連絡先ぐらいしか入ってない。そして常に部室で一緒している三人とそんな頻繁にやりとりすることはないので初めて見た「16」という数字は、俺にはあまりにも衝撃的だった。
俺は恐る恐るアプリを開いてみる。未読のメッセージは全て「写真同好会」のメッセージグループから届いていた。
俺は写真同好会のメッセージグループを開く。
『今日は用事があるので休みます』
『了解!』
『オッケーよ!』
『ただいま帰りました!』
『おかえり色葉ー』
『おかえり! 思ったより早い帰りね?』
『うん! ギリギリに帰ってきて明日寝坊しちゃったら大変だから!』
『色葉の場合ワクワクしすぎて寝坊、とかありそうだけどね(笑)』
『確かに(笑)』
『た、確かになくはないけど、今日は九時には布団に入るから大丈夫だよ!』
『寝坊したら三人で見に行っちゃうからねー』
『写真楽しみにしててー』
『ひどい!』
『冗談だよ(笑)』
『明日はツバメ駅の西口に十時集合だからね! みんな遅れずに!』
『はーい』
『了解だよ!』
俺はメッセージを見て、指が止まる。さっきまで打とうとしていた文字が打てない。
三人はとても今日という日を楽しみにしていた。それは、このメッセージ見る以前から俺は重々知っている。こんなに楽しみしている三人に俺は休むと言うのか? 休むと言って三人はどう思う? がっかりするだろうか? いや、目的は花火を観ることで、そこに俺はいてもいなくても……。
ふと、三人の姿が頭に浮かぶ。浮かんでしまう。
『一緒に行こうよ! 諫早くん!』
『諫早にも目の前でこの花火を観てもらいたいな』
『四人の写真、いっぱい撮るわよ!』
『楽しみにしててね!』
「…………」
自然とスマホを握る手に力が入る。
三人は優しい。きっと俺が休むと言っても、三人は何も不満を口にしないだろう。逆に俺を気遣う言葉をくれるかもしれない。
三人は優し過ぎる。もしかしたら俺がいないことにがっかりするかもしれない。花火を楽しむ傍で、俺のことを思い出すかもしれない。
俺は、楽しむ三人に水を差してしまう……。
「…………」
結論は、案外早く俺の中に落ちた。俺は、ヘッドボードにスマホを置く。ベッドから立ち上がり、顔を洗うため洗面所へ向かう。……少しふらつくのはきっと気のせいだ。
「お、諫早来た」
「おはよ、諫早」
「おはよう、諫早くん」
集合場所であるツバメ駅の西口を出ると、いつもの時計台の下にすでに三人は集まっていた。俺は急いで三人に駆け寄る。
「……ごめん、お待たせ」
「いや、まだ三分前だから。……てか諫早、なんでマスクしてるの?」
葛城さんのその問いかけに、俺は思わずマスクに触れる。やっぱり気になる、か。
俺はマスクをつけて家を出てきた。三人に風邪を移さないようにと、察しのいい三人に勘付かれないようにするため。
「…………えっと、実は昨日の夜、窓を開けたまま寝ちゃって。朝起きたら喉痛めちゃってたんだ」
俺は電車の中で考えた言い訳を口にする。コホンコホンと咳払いをしてみせたが、少々わざとらしかっただろうか。
「……そっか。はは、確かに俺もこの時期よくやるよ」
「よくやるよ、じゃないわよ。冷える夜だってあるんだから気をつけて。諫早大丈夫? のど飴あるわよ、……はい」
「……うん、大丈夫だよ。ありがとう西尾さん」
二人は俺の返答に違和感を覚えた素振りなく、いつも通り会話を続ける。俺はその様子を見て内心ホッとし、西尾さんからもらったのど飴を早速口にした。
「あの、諫早くん」
彼女が俺を呼ぶ。俺は彼女の方を見やると、彼女はなぜかじっと俺を見つめていた。まさか彼女には何か引っかかるところがあっただろうか。俺は息を呑み、彼女の次のアクションを待つ。
すると彼女は俺の胸騒ぎを取り払うように、いつもように笑みを浮かべた。
「……この間は傘ありがとう、はい、これ」
そう言って、彼女は先日貸した折りたたみ傘を鞄から取り出し、俺に差し出す。
「…………どういたしまして」
俺は傘を受け取る。傘は綺麗に畳まれていた。
「それじゃあそろそろ行こうか。諫早はこまめに水分ね」
「……あ、うん」
三人は駅へと歩き出し、俺はそれに付いていく。三人の後ろで俺は前髪を軽く押さえ、いつもより深く目元を覆った。
電車に乗って俺たちが向かったのは、花火大会の会場付近の駅から一駅隣のショッピングモールだった。ここでご飯を食べたり、買い物をしたり、場所取りに行くまでの時間をみんなで好きに過ごすらしい。
それじゃあどこから見て行こうかと三人が最初に選んだのは、電気屋さんの中にあるカメラ売り場だった。普段の活動はスマホのカメラを使うことが多いが、もちろん普通のカメラを使う時もある。偶にカメラを構えているところを見ると、そういえば写真同好会だったと気づかされる。今日は確か「例の」カメラを持ってきているらしい。
三人がカメラ売り場で「望遠レンズ」というのものについて話しているのを、俺は少し離れて眺めた。
そのあと、お昼ごはんを食べに二階のフードコードへ向かった。みんながうどんやハンバーガーやサンドイッチなど思い思いの昼食をとる中、俺は食欲が湧かず近くの自動販売機で買ったペットボトルの水を飲んだ。三人から「食べないの?」と訊ねられたが、咄嗟に「朝ごはんを食べ過ぎてお腹が空いていない」と答えた。持続力が売りの彼が一瞬、俺を見た。
お昼ごはんを食べ終えたあとは適当に目に付いたお店を回った。服屋さん、雑貨屋さん、本屋さん、インテリアショップ、ペットショップ……。三時間ほど見て回り、俺たちは休憩がてら昼食をとったところと別のフードコードに入った。……ちょうどいい。
「…………ちょっとトイレ行ってくるね」
そう言って俺は四人掛けの席から立ち上がり、鞄を持って三人から離れる。途中からだんだん気分が悪くなり、頭もズキズキと痛むようになった。恐らく朝飲んだ薬の効果が切れてしまったのだろう。昼食の時、喉を痛めてると言っても流石に三人の前で薬を出すのは憚られ、飲めずにいた。
俺はフードコートから一番近いトイレに入り、薬を飲み直すことにした。各場所に点々と設けられているおかげか、それとも運が良かったのかトイレには誰もおらず、俺は一番奥の個室へ入った。
鍵を閉め、鞄をフックに掛ける。一時的にでも一人になった空間に今まで張っていた気がプツンと切れたようで足元がふらつき、咄嗟に便座に手をつく。
「は、は……」
呼吸が浅くなる。マスクを外して呼吸を整えようとするが胃の中がグツグツと煮えたぎるような感覚がし、食道から徐々に何かが込み上がってくる。
「……うっ」
目元に生理的な涙が浮かぶ。いくら吐こうにも昨日の夜から何も食べていない胃の中からは胃液くらいしか出てこない。それでも胃は何かを吐き出そうと必死に嘔気を促す。
「はっは、は……」
しばらくしてやっと吐き気も治まり、俺は息を整える。鞄の中から薬とペットボトルを取り出し、水を口に含み、ゆすいで便器の中へ吐き出す。ボタンを押すと勢いよく水が流れ、俺は便座のフタを下げてその上に座る。
……あれからどれくらい経っただろう。もうそろそろ戻らないと変に思われるだろうか。
俺はもう一度水を口に含み、今度は薬と一緒に飲み込む。何も胃に入ってないが少しくらい効いてくれるだろう。そんな淡い期待を抱きながら俺はマスクを付け直し、鞄を取り、ペットボトルをしまって、個室のドアを開ける……。
「…………え」
……なんで、どうして? 高まる体温が一気に下がった気がする。空気が薄くなった気がする。全身から血の気が引く。
個室を出ると、そこには見知った顔があった。いや、その顔は困っているような、悲しそうな、苦しそうな、俺が初めて見る顔だった。
なんで、なんで、なんで……?
「……なんで、葛城さんがここに」
俺は数歩先にいる彼の名を口にする。葛城さんはこちらに手を伸ばした状態で固まっている。
「……諫早」
ようやく葛城さんは一言発し、徐に手を下ろす。発すると言うより零れたと言う方が正しいかもしれない。
けれど葛城さんは再び口を噤む。その口は何か言おうとするが迷っているようで、何度かはくはくと動いた。
俺と葛城さん間に沈黙が落ちる。その間に俺は思考と心拍を落ち着かせる。
そう。冷静に、平然に……。大丈夫。
「……って、トイレに来てなんでっておかしいよね。ごめんね、変なこと言って」
俺は沈黙を破る。いつもの調子で彼に声をかけた。
きっと、彼はさっきの俺の様子で気づいているだろう。きっと、さっきの伸ばした手は俺に伸ばそうとしてくれた手だ。それでもその手を止めたのは、俺が出てくるまで声をかけなかったのは、彼の優しさだろう。大丈夫かと声をかけるか、このまま見ないふりをするか。葛城さんは俺が後者を望んでいることを知っている。俺は葛城さんが前者を望んでいることを知っている。だから、
「……ねぇ葛城さん」
だから俺は、込み上がる罪悪感を必死に抑え込み、言った。
「…………さっきのこと、二人には言わないでもらえない、かな。ちょっとだけ、本当にさっき、ちょっとだけ気分が悪かっただけなんだ。もう、大丈夫だから。本当だよ。本当だから……ね?」
俺は今できる精一杯で取り繕い、懇願する。前髪の隙間から葛城さんの方を覗くと、葛城さんが拳を固く握っているのが見えた。それはまるで、決断を迷っているよう。
……あぁごめんね。葛城さんの優しさに俺はいつも甘えてしまう。
「…………俺、先に戻るね」
俺は葛城さんの答えを聞く前に、葛城さんの答えが出る前に、彼の横を通り過ぎる。このまま一緒にいては俺の方が絆されてしまうと思った。今度は葛城さんの優しさに溺れてしまうような気がした。ドアを開け、ゆっくりと閉める。……ガチャン。
「は、は、」
俺は逃げるように足を急かす。
息が上がる。鼓動が早くなる。これはきっと急いで歩いてるせいだ。大丈夫。大丈夫。まだ、まだいける。……まだ、終わらせるわけにはいかない。俺はそう強く自分に言い聞かせる。
フードコートの前で俺は一度足を止めた。壁に手をつき、息を整える。乱れた前髪は反対の手で押さえつけた。……よし。
「…………ごめんね、おまたせ」
俺は平然に、悠然に、二人の待つテーブルに戻る。そのまま震える手がバレないよう、さっと椅子を引き、鞄を下ろして西尾さんの前に座った。
「おかえり。あれ、諫早一人? ナオと会わなかった?」
「…………あ、会ったよ。俺が戻る時にちょうどすれ違った、かな」
「……そう」
何かを含み西尾さんは押し黙る。
「ねぇ諫早くん」
今度は彼女が静かに声をかけた。
「…………なに?」
俺は彼女の方を見る。彼女は真っ直ぐと俺の方を見たまま何も言わない。西尾さんも黙ったまま。
沈黙の帳がここでも落ちる。さっきと違うのは、この帳が俺に時間を止まっているような錯覚を見せるところ。
彼女の視線が徐々に俺の心臓を圧迫する。息がしづらい。俺はこの空気に耐えきれず二人に声をかけようとした……その時。
「諫早!」
後ろから葛城さんの声が飛んできた。振り向くと、急いでここまで来たのか葛城さんは肩を上下に揺らし俺の方を見ていた。
「…………どうしたの、葛城さん」
そう言うと葛城さんの肩が一瞬止まる。そのまま下を向き数秒呼吸を整えると、再び葛城さんは俺の方を向いた。
「……帰ろう、諫早」
「…………え?」
俺は思わず声が漏れる。彼の言葉に、息が止まる。
「…………ど、どうしたの葛城さん。急に帰ろうなんて、……!」
「諫早!」
葛城さんが俺を呼ぶ声がする。慌てて俺に駆け寄る音がする。
俺は一瞬何が起きたのか分からなかった。どうやら俺は葛城さんの元に歩もうと椅子から立ち上がったその瞬間、ひどい目眩に襲われ、椅子の背を掴んだまま膝から崩れ落ちたようだ。今も視界が覚束ない。持続力が売りの彼が、いつの間にか俺のすぐそばにいる。
「諫早くん!」
「諫早!」
彼女と西尾さんも席を立ち、駆け寄ってくれる音がする。
「…………だいじょうぶ。少し、立ち眩んだだけ、だから」
そう言って俺は今できる最大限で笑みを真似る。すると、
「大丈夫な訳ないでしょ!」
西尾さんの荒げた声が飛んでくる。驚きのあまり立ち上がろうとした動きが止まる。
俺は恐る恐る西尾さんの方へ視線を向ける。西尾さんは口角を引き、何かを堪えるように口を固く閉じていた。
怒っている? 呆れている? 悲しんでいる? 西尾さんの感情が分からない。どうしよう。どうしよう。頭の中がぐるぐると迷走し出す。ざわざわとノイズが駆け出す。
そうだ、とりあえず謝らなきゃ……。
「…………に、にしおさ」
辿々しく出たその言葉に、西尾さんは一層口角を引く。俺は、言葉が詰まる。
西尾さんは、徐に口元の引きを緩めた。
「大丈夫な訳ない。だって諫早、トイレから戻って来た時からもっとひどい顔してるわ」
俺は、息を呑む。西尾さんの放つその小さく零れた言葉で、ようやく頭の中がしーんと静かになった。
あぁ、『もっと』ということは二人にも気づかれていたのか。どおりで俺が戻ってきた時二人とも黙ったわけで、どおりで今日は一枚も写真を撮っていないわけで、どおりでみんな今日はあまり口角を上げてない、笑っていないと思った。
「立てる諫早? 家まで送るよ」
穏やかな口調で葛城さんはさっき諦めた手を俺に伸ばしてくれる。けれど俺はそれに頭を横に振る。
まだ抗っている訳じゃない。自分でももう限界だと分かっているし、それに、三人はこれ以上俺がここにいることを許してくれないだろう。けれどこの手を取ってしまえば、きっと今日はこのまま解散になってしまう。そうしたら花火大会はどうなる。あんなに今日を楽しみにしてたのに、俺のせいで三人は花火を観ることも、写真を撮ることもできなくなってしまう。三人の思い出を空白にするだけじゃない、俺は、三人の思い出を汚してしまう。それは、それだけは、絶対に嫌だ。だから……。
「…………俺のことは気にしないで、三人で花火大会に行って」
……お願いだから。
祈るように手に力が入る。三人の深く息を吸う音が聞こえる。
「諫早くん」
答えてくれたのは今までずっと静かに見ていた彼女だった。初めて聞く、温度の感じられない彼女の声。
「……それは、できないよ」
「…………」
その一言で頭を殴られたような衝撃が走った。息が、止まってしまう。
俺は見開いた目で彼女の方を見上げる。すると前髪が流れ、彼女の大きな瞳と真っ直ぐ目が合ってしまう。……しまった。
その瞬間、ずっと見ないように意識していた彼女の「色」が嫌でも分かってしまう。そしてそれは雪崩れるように葛城さんと西尾さんの「色」までも、俺の目に映してしまう。
そこにはいつもの鮮やかさはない、ただ暗く淀んだ三色が悲しそうに俺を見る。その景色に、椅子を掴んでいた手がするりと落ちた。……あぁ俺はまた同じ過ちを繰り返してしまった。
「…………そう、だよね。俺のせいで楽しめる雰囲気じゃなくなっちゃったもんね」
「え、諫早くん?」
俺はこれ以上三人を見ないよう、よろけながら一人立ち上がる。
「…………ほんと、ごめんね」
そう言って、俺は鞄を取り三人から離れる。
……紡いでくれた糸は、いとも簡単に解れ、綻んでしまった
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