第40話 新入社員

 お見合いの日から時は経ち…

 今日はどこの会社も大体は入社式になるのかしら。私は新入社員じゃなくて、彼らの先輩。今年度は新入社員の教育係を担当することになったから、新入社員としてこの会社に初出勤した時ほどではないけれど、そこそこ緊張している。

でも、緊張は電線してしまうから、落ち着き払った振りをしている。

 今は新入社員に一言ずつ話してもらう自己紹介の時間。大人びた子、不安げな子、元気いっぱいの子、省エネモードな子と、パレットのように色々なカラーの新入社員が入ってきた。

 この会社をキャンパスに例えるなら、ひとつの目標という名の絵を描くのに、また新しい色が増えたことになる。既に絵に使われている色である私としては、まだ名前も知らない色が増えたことを嬉しく思う。新入社員に仕事を教えながら、私自身も彼らから新しく教えられることがあると思っているから。



「次の方。あ、最後ですね、自己紹介と何か一言よろしくお願いします」


「はい」



明るい声で返事をした青年に、その場にいた全員の視線が向く。

あれ、あの子誰かに似ているような…?



花星かぼし木蓮もくれんです。家族に頑張りすぎるなと言われているので、ほどほどに頑張ります」



確かに頑張りすぎは体にもメンタルにもよくないわ。そのことを堂々と言えるの、かっこいい新人ね。上司の何人かは苦笑いを浮かべていたけれど、私は好感の持てる子だと思う。

 会社側に是非、頑張りすぎずに働ける環境を整えてほしいものね。頑張りすぎないことと、頑張らないことの違いをわかってない人が多いから、誤解されてしまうことや難しいこともあるんだろうけど。



(ところで、花星…珍しい苗字だし、もしかしたら)



新入社員がオリエンテーションを終え社内案内のため移動してその場を後にしてから、蝶々は自分のデスクに戻って携帯を手にする。



『おはようございます、野薔薇です。花星さん、もしかして弟さんいらっしゃいますか?』

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