第534話 転職してどうなった?

 そのつもりがなかったとはいえ、なってしまったものは仕方がない。

 気持ちを切り替えてクラスチェンジをしたことによる変化の確認です。


 まず転職ボーナスとして、能力値を自由に――ただし〈運〉は除く――十ポイント上げることができるようになっていた。

 これはレベルアップ時に割り振れるものと同じだから、実質能力値は十レベル分のアップということになるね。うまうま。

 これを獲得するだけでも上位職へのクラスチェンジをする価値があると言われているくらいだったりします。


 まあ、十レベル分だものねえ。ボクなんて特にのんびりだったから、ここまでのレベルに到達するのにゲーム内時間でも七十日近くかかっている。

 高レベルになればなるほど、次のレベルアップに必要な経験値の量が増していくというのがゲームの常だ。よってこれまでと同じペースで進めていくとなれば、これから十レベル分上昇させるのに同じだけの時間がかかってしまったとしてもおかしくはない。

 能力値に限られるとしても、それがあっという間に獲得できてしまうのは大きいと思う。


 ちなみに、<シーカー>や<アルケミスト>などの技能習得を条件にしたクラスチェンジの場合は、このボーナスはなかったりします。

 代わりに、上位職へとクラスチェンジが可能となるレベルに上がった際に登場する仕組みとなっているのだとか。「転職ボーナス」というよりは「○○レベル達成おめでとうボーナス」と言った方が妥当な気がしてきたよ。


 閑話休題。さてさて、これを使って弱点を補うも良し、反対に長所をさらに伸ばすも良しということで、クラスチェンジを機に主に戦闘時のプレイスタイルを大きく変更させるプレイヤーも少なくはないのだとか。

 ボクの場合は中衛で臨機応変さを求められるから、全体的に底上げをすることになりそうかな。

 逆にほぼ前衛のミルファや後衛のネイトなどは、得意な方面に合わせて伸ばす能力値を絞った方が効果的に強くなれるかもしれないね。


 次に装備関連だけれど、こちらは特に変更も追加もなかったもようです。

 まあ、戦闘職とは違って<テイマー>や<サモナー>、<クリエイター>には可能、もしくは不可能な装備というもの自体が存在していないからね。

 ただし、キャラクター作成時に説明があった通り、〈筋力〉を始め能力値が装備条件となっていることも多々あるので、何でもかんでも装備できたりはしないようになっている。


 そして三つ目、技能関連。こちらは変化アリアリで、〔調教〕が〔中位調教〕に変更されていて、さらに〔共闘〕という技能が追加されていた。

 前者はテイムの成功確率がアップして、より強い魔物でも仲間にし易くできるようになったみたいだ。武器や魔法の技能と同様に、初期技能の純粋なパワーアップ版ということになりそうね。


 で、新規に追加された後者の〔共闘〕なのですが……。

 なんと!パーティーには入れられずにお留守番状態になっているテイムモンスターたちを、戦闘時に限り最大で一パーティー分の六体まで追加で呼び出して一緒に戦うことができるようになるのだとか!?

 つまりですね、今のボクで例えるならば、ミルファやネイトとのパーティーを解除しないままでも、うちの子たちを全員戦闘に参加させることができるということになるのです。


 もちろん、使用するにはいくつかの条件がある。ゲーム内時間一日当たりの呼び出せる時間が決まっていたり、低レベル――〔調教〕と同じく熟練度のない技能となる――の間は呼び出せる数も少なかったりといった具合だ。


 だけど、個人的にもっとも厳しいと思えるのは、「テイムモンスターたちが呼び出せる状態にある」という点だ。

 要するに、『ファーム』のようなテイムモンスターを入れて持ち運びができるだとか、テイムした魔物たちが普段いる拠点となっている場所と行き来できる『個人用転移門』――テイムモンスター専用でNPCはもちろんプレイヤーも通ることはできない――といったアイテムが必要となってしまうのです。


 余談だけど、『ファーム』はゲーム内通貨デナーで購入が可能だけれど非常に高価で、一方の『個人用転移門』は購入不可だが迷宮などで比較的発見がし易いそうだ。

 そのためか拠点となる土地を購入して、レベルアップも兼ねて迷宮で『個人用転移門』を探す、というやり方が現在のテイマープレイヤーの主流となっているらしい。

 ただし、『個人用転移門』は一カ所しか登録ができないため、拠点を変更する時には新しく別の『個人用転移門』を用意しなくてはいけないため注意が必要だね。


 それにしても〔共闘〕を用いれば最大で二パーティー分の戦力に戦うことができるというのは、とんでもない破格の性能ではないでせうか?

 確か<ハイテイマー>の追加技能の〔増援〕が似たような条件で一体だけ・・・・戦闘に追加させることができるというものだったはず。

 対してこちらは最初から二体は追加できるようになっているらしい。


 クラスチェンジ直後の段階で既に上位互換ですかい……。

 強力な分、反動のデメリットがどんな恐ろしいものになるのか、今から戦々恐々でございますわよ……。


 ま、まあ、とにかく今は確認を続けることにしようか。

 決して問題を先延ばしにした訳ではありませんのであしからず!


 とはいえ、技能関連もそれ以上変わった部分は見当たらなかった。装備関連同様<テイマー>と<サモナー>には特定の技能の熟練度が上昇しやすくなるといった恩恵はなかったからねえ。

 妥当なところと言ってしまえばそれまでのことだったのだろう。


 よし。クラスチェンジによる諸々の変更も理解できたことだし、例の迷宮に向かうための準備を本格的に始めることにしましょうか!

 まずは装備品新調のための魔物素材集めからかな。

 おっと、その前にどんな装備にするのかを熊おじさんに相談しに行かないと。どの魔物のどんな素材が必要になるのかを理解しておかないと、やれ肝心な物が足りないなどの余計な手間になってしまうかもしれないからね。


 はっ!転職ボーナスで能力値を底上げできた今なら、もしかすると森の魔物とも互角以上に戦うことができてしまう、なんてこともあるのではないでしょうか!?

 製作してもらう装備品の幅も広がって、さらにさらに、グロウアームズだってレベルアップできてしまうかも!?

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