第533話3 うっにゅおおおおおおおお!!!?

 うーむ。クラスチェンジ先に悩む。

 なので、ミルファとネイトに相談してみることにしました。それに、彼女たちもクラスチェンジできるようになっているのかも聞きたいしからね。


「わたくしですの?それならばもう<ソードマン>にクラスチェンジ済みでわよ」

「わたしも<ヒーラー>に決めて転職を終わらせました」

「え?」


 ちょっ!?ボク何も聞いていないんですけど!?

 そういうのってパーティー全体のバランスとかも考えるものなんじゃありませんかねえ!?


「考えた結果、こうなりましたの」

「そうですね。先頭に立っての攻撃役は必須ですから、いざという時に盾役もこなせるミルファは、そのまま今の強みを伸ばすべきでしょう。私はそれをサポートできるように回復能力を伸ばすことにしました」


 ネイトの補足に、「<マジックファイター>も少しは気になったのですけれど、大幅に動きを変える必要がありそうでしたので除外しましたの」と口にするミルファ。

 聞いてみれば納得の理由ではある。

 ただ、ね?


「あのー、そこにボクが入っていないように思えるんだけど……」

「え?ですがリュカリュカはテイマー系統の職になるのですよね?」

「あ、うん。<傀儡師マリオネッター>っていう選択肢も出ていたけど、そっちになるつもりはないよ」


 だって、当初の目的であるふわもこのちびっ子をまだテイムしていませんからね!


「それならこれからもテイムモンスターたちに指示を与えることになりますし、引き続きリーダー役を担って頂くのが妥当だと思います」

「つまり、リュカリュカの立ち位置に変わりはありませんわ」


 なるほど。なるほど?

 ……まあ、いいか。基本の役割に変化がないのであれば、戦闘中などでも混乱することは少ないだろうからね。

 それならそれでボクの方の相談に乗ってもらうことにしようか。


「レア職業ですの……。またとんでもない代物が飛び出してきましたわね」

「メリットやデメリットなどは分からないのですか?」

「それがさっぱりなのよ。メイションでも聞いたことがなかったくらい」


 あと、ゲーム内であれば『冒険者協会』になら資料くらいは置かれているかもしれないのだけれど……。


「スホシ村の、というより『フレイムタン』国内の支部には期待できそうにはありませんわね。仮に置かれていたとしても、対価として法外な要求をしてくるのがオチなのではなくて」


 お金ならばまだいい方で、強制的にどこかの貴族の配下にされてしまう、なんて展開も十分に考えられる。ここはすっぱり諦める方が無難だろう。


 ふと視界の隅の時計が目に入る。

 ああ、もう日付変更間際こんな時間になっていたのね。ダメ元でアウラロウラさんに問い合わせてからログアウトして、掲示板などの最新情報を軽く覗いてみるとしましょうか。



 翌日の土曜日。朝ご飯を食べる等日々の細やかな事柄を済ませてログインです。

 色々と漁ってみたが、<デスティニーテイマー>に関する情報は見つからず、さらにアウラロウラさんからもメールで、


「《お問い合わせの件ですが、上の者とも協議の結果、詳しい内容をお教えすることはできないという結果となりました。理由としては、プレイヤーの方々自身の手で色々な発見をしていただきたいからです。まあ、一部というか大分マスクデータもありますので、調査できる範囲はおのずと決まってくるでしょうが》」


 最後に皮肉が突っ込まれているのが彼女らしいと言いますか。とにかく返信が送られてきていたのだった。


「最終的に判断するのはボク自身ってことですかね……」


 リスクはないけれど極端なお得もない<ハイテイマー>か、それとも何かしらとんでもないメリットとデメリットが存在するかもしれない<デスティニーテイマー>か。


「……よし!決めた!」


 ボクは平穏無事にいきたいです!

 なので<ハイテイマー>に決定――、


「ところで、リュカリュカ。この後のことなのですが」

「え?なあに?」


 ポチッ。


 おや?呼ばれて振り返った瞬間に聞きなれない音がしたようだけれど、なんだか大事な話のようなので後回しです。


《一次上位職<デスティニーテイマー>にクラスチェンジします。本当によろしいですか?》

「わたくしたちの装備を新調してからスホシ村を発つ、という流れで構いませんの?」

「イエス。まあ、修復もしてもらったし、畑での一戦でドロップした魔物素材は全部推薦状を書かせるのに使っちゃったから、二人の武器を中心に、後はお金と素材の続くだけってことになりそうだ――」

《プレイヤー、リュカリュカ・ミミルが<デスティニーテイマー>へ転職しました》

「――はい?」


 ちょっと待って、本当に待って。

 今聞こえてはいけない言葉が聞こえてきたように思うのですが?

 というか、うん。視界の方にもしっかりとインフォメーションが表示されているよね。


「うっにゅおおおおおおおお!!!?」

「きゃ!?」

「ひゃ!?」


 突然のボクの奇声に二人が小さく悲鳴を上げていたけれど、それどころではないです!


「なんで!?転職ナンデ!?」


 しかも、よりによって<デスティニーテイマー>の方になっているではありませんか!?


 慌ててアウラロウラさんにチャット機能で問い合わせてみたのだが、


「(バグでも何でもなく、正式な手順を経てクラスチェンジが行われていますね。まず職業選択画面をタップ、続けてタップ連打による誤操作防止のための音声確認においても了承の言葉を述べられているようです。申し訳ありませんが、こちらを無効にするということは出来かねます)」


 説明と一緒に画像まで見せられては、ボクの方のミスであったことを納得せざるを得ない。

 音声確認はタイミングが悪すぎた気がしないでもないけれど、それを言うならあの聞きなれない音がした瞬間、確認をしておけば良かったのだ。

 それをおこたって後回しにしてしまったのはボクの失態と言うべきより他ない。


 ちなみに、やり直しリセットの効果はシナリオ関連のみにしか適応されないため、リセットさせたところで職業が元に戻る訳ではないそうだ。

 まあ、ゲームということもあって『OAW』では、レベルアップして能力値を上げたり技能熟練度を上げて新しい闘技や個別魔法を覚えることで問題を解決できるようになることが大半だからね。

 レベルや職業まで戻されてしまってはリセットの意味がない、ということになってしまうのだ。


 リュカリュカ・ミミル、意図せずレア職業の<デスティニーテイマー>にクラスチェンジしてしまいました……。






◇ リュカリュカの転職先に付いての補足 ◇


最終的に運命ダイスの神様に決めてもらいました。

1~3であれば<ハイテイマー>に、4~6なら<デスティニーテイマー>です。


そして結果は初っ端からなんと6!(笑)


しかし、これはさすがにリュカリュカちゃんが可哀想かもしれない、と思って全部で五回振ってみたところ、なんとなんと半分以上となる三回が6!(爆笑)


これはもうさすがにどうしようもねえやww、ということで本文中の展開となりました。



余談ですが、その後何度か振ってみたところ、1~3までが出ることの方が多かったという……。

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