第7話 修羅人の槍
支柱に向かって走って近づいていくと、黒煙が立ち込め視界がきかなくなっていく。
一寸先も見えない真っ黒な濃霧の中を走っているような状況だった。が、足元は赤くぼんやりとした光を放っていた。
体にオーラを張り巡らせているため熱さも、息苦しさも、目が染みるなども感じないが、普通の人間がこの中に飛び込んだらどうなってしまうのだろうか?
そんなことを考えながら黒煙の中を進んで行くと、足元の赤みは徐々に濃くなりだし揺らぎ始めてきた。
「マジか!」
黒煙を抜けた先はマグマ溜まりになっていて、真っ赤に波打っている光景となっていた。
空気に触れ固まったマグマの上を進んで来たのだが、ここから先は煮えたぎっているマグマの中を突き進んで行かないと支柱の前には辿り着けないようだ。
「本当にこの世の終わりのような光景だな」
真っ赤になったドロドロ状のものが跳ね上がったり、弾け飛んだりしている。その光景に恐怖感が湧き上がり足がすくんでしまった。
くっそー、何ビビってんだ俺は?
ソフロニアに大丈夫だとお墨付きをもらってんだ。
覚悟決めて早く飛び込めよバカやろー。
自分で自分を奮起させようとするが恐怖が勝ってしまい、なかなか一歩踏み出すことができない。
『サイード!』
「!!」
アブダビ、サモアの声が聞こえたような気がした。
今目の前に広がっている光景はまさに地獄。地獄に行ったお前らはきっとこれ以上の過酷な試練を強いられていることだろう。
負けてらんねーよな!
俺は覚悟を決めマグマの中に足を踏み入れた。
大丈夫だ、何も感じない。
「よし、いくぞ!」
俺はマグマの海を突き進んだ。くっそー、何をやっていたんだ、俺は、ただでさえ遅れているのに。
俺のヘタレやろー!
体にオーラを張り巡らせていれば、大丈夫だって言われていたじゃねーかよ!
マグマの海を見てビビってしまっていた根性なしの自分に、腹が立って仕方がなかった。
『人間よ、そこで止まれ、これ以上先に進むというなら、我の魔法により消滅させるぞ』
「はー?ふざけんなタコ!消滅させられるもんならしてみろよ!クソが!」
『何と下品な口を利く人間か!貴様、本当に人間界の英雄と呼べるような存在なのか?』
「あー?英雄だー?知るかボケ!俺は俺の信念でやってんだよ」
マグマの海から迫り上がるようにマグマ魔人は姿を現してきた。
「急いでんだ、実体を表す前に勝負つけさせてもらうぞ」
「オーラ槍撃ーっ!」
俺はオーラを込めた槍を振り上げ、迫り上がって来ている部分へ先制攻撃を仕掛ける。
俺のオーラ槍撃により振り下ろした場所を中心にし、マグマは綺麗に吹き飛ばされ地面が露わになった。
「よっしゃー、口ほどにも無い奴だぜ!」
俺の一撃はマグマ魔人を一瞬で吹き飛ばしてしまったようだ。それだけではなく周辺のマグマも吹き飛ばし、地面だけでなく支柱と思われるものも露わにさせていた。
よし、これにオーラを送り込めば任務完了だな、楽勝だぜ。と思った瞬間だった。とてつもなく強力なオーラが立ち上った。
「なんだ!」
マグマは渦巻状になりながら集まり出すと、人型へと変化させていく。人型となり火炎魔法を放ってきた。
槍にオーラを込め火炎魔法を弾き返す。
『こざかしい真似をしやがって、我が具現化する前に攻撃を仕掛けてくるとは、どうやら貴様は英雄ならざるもののようだな』
「はー?知らねーよ。油断してるテメーが悪いんだろ!」
『よかろう、ならば宣言通り貴様を消滅させてくれよう』
『我の使う魔法により溶解せよ、オーラフリクション!』
「!!」
なんだ!
「ぎゃーっ!」
俺はねじ上げられるように吹き飛ばされ、マグマの海に叩き落とされた。
やっべー、意識保たねーと、マグマで俺の体が溶解されちまう。
『ほー、かなり強いオーラにより守られているようだな。我の魔法でも溶解せぬか』
何だったんだ、今のは?急に体が沸騰するほどの熱に包まれたかと思ったら弾き飛ばされちまったぞ。
『ふふふ、だが、我の魔法の威力はこんなものでは無い』
そう言うと今までドロドロのヘドロみたいな形していたものが、完全な人型となりそこに聳え立っていた。
漆黒の金属製のもので表面を覆っていて、内部からは真っ赤な光を放っていた。西洋甲冑の中に赤色のライトが入っているような様相だった。
「なんかめちゃくちゃ強そうなんですけど!」
完全に具現化してしまったようだ。つーことは、さっき以上の攻撃が来るってことか?
『オーラフリクション!』
「ぎゃーっ!」
先ほどを超える威力の高熱と衝撃が襲ってきた。抗うことなどできる訳もなく吹き飛ばされ、再びマグマの海に叩き落とされる。
俺の体はそのままマグマの海の中へ沈んでいってしまった。
マジでやっべー、俺このまま死んじまうのかな、、。
東側、西側の支柱はすでに復活しているようで、温かいオーラを感じることができる。
中央からはオーラとオーラが衝突しているのが感じられる。皆んな必死で戦っているってのに、俺だけギブアップかよ。
ざけんじゃねーよ!俺が足手纏いだと!
俺は急先鋒として期待されているんじゃなかったのかよ!
負けられねー、俺だけこんなとこで、くたばっているわけにはいかねー!
その時だった、俺が愛用していた俺の国に神具として伝えられていた槍が光り輝いたのは。
槍は光を放ち、周辺にあったマグマを跳ね除け、飛び散らせていく。
そして俺の体を覆い始めた。
『驚いた!貴様は人間界の人間だよな?お前の持つその槍は、修羅界の人間が使う槍ではないのか?』
「はー?何言ってんだテメー?」
そういえば奏音にも似たようなこと言われたことあったな?でもそれが何だって言うんだよ。
「何じゃこりゃー!」
槍の装飾が俺の体に纏わりついているではないか!
槍の装飾がまるで鎧にでも変化したみたいになり纏わりついている。
そして槍からは、荒々しいまでの攻撃的なオーラが立ち上っていた。
何だか俺のオーラが槍に吸い取られていくような気がする。
いや違う!槍と俺のオーラが一体化していっているそんな感じだった。
頭の中に文字が浮かんでくる。何を意味しているか分からないがその言葉を口にしながら槍を振り上げた。
「ソーピシー槍撃ーっ!」
俺の薙ぎ払った槍はマグマ魔人の放つ魔法を薙ぎ払い、その勢いのまま胴体までも薙ぎ払った。
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