第40話 遭遇

ソラちゃんが探していたのはかき氷で、よく探したら入り口のすぐ近くにあった。まさか1番手前にあるとは私もソラちゃんも思ってなかったからお店を見つけた時は2人で笑い合った。


テントに戻って、買って来たかき氷とその他諸々を中に広げてお昼ご飯にする。かき氷を見つけるのに時間がかかったせいで最初に買ったウィンナーとかが少し冷めてしまったけど、海っていう特別な場所で食べたおかげか少し冷めてても美味しく食べることができた。



◇ ◇ ◇



「ママ!泳ぎにいこ!」


お昼ご飯を食べ終えると、お腹もいっぱい、いっぱい寝て疲れも吹き飛んだソフィーが海に行こうと言ってきた。


午前中に行った時はエリンのせいで楽しめなかったからね、今度こそは楽しまないと!


「そうね、貴女達も来るでしょう?」


「「はい!」」「もちろんです」




と、いうことでみんなで海に入った。

ソフィーとユキちゃんは浮き輪を着用。私、セラ、ソラちゃんは普通に泳げるため特に補助道具は無し(ソラちゃんは魔法で水を出して浮くようにしている)


「ナギサ様、少し失礼しますね」


沖の方に出てきてすぐにセラがそう言って海の中に潜っていったと思ったらすぐに戻って来た。そしてその手には


「ミルキーシェル、かなり大きめですね。夜ご飯に使いませんか?」


海の浅瀬(水深5〜10メートル付近に生息)でよく取れるミルキーシェルが握られていた。3つのうち2つはかなり大きめの物で、市場で売ればそこそこのお金になるんじゃないかなっていうくらいには大きかった。


「良いわね♪じゃあに入れといて」


ポケットから※【魔法の巾着袋】を取り出して中にミルキーシェルを入れる。


※魔法の巾着袋はナギサが作り出した特殊な袋。ここの中は空間属性の魔法で構築されていて袋の中は時間が一切進まない。そのため野菜や肉、魚を新鮮なまま保存することが出来る。ちなみに容量は当人の魔力量によって変動する(そのためナギサはほぼ無限に入れることが出来る)


「……………相変わらず便利ですね」


「ふふん、そうでしょ♪セラも作ったらいいのに」


セラは空間属性の魔法が使えるし、更に言えば魔力量も馬鹿みたいに多い。だからセラも作ろうと思えば作れるんだけど…………


「いえ、私はあまりしまっておくものがないので……………不要ですね。そういえば、海の中にもっと沢山あったので取りに行って来ますね」


………………………中にまだ沢山あった?


「ちょっと待って!!」


また潜ろうとするセラを止める


「…………!?どうしましたか?」


「良い機会だし、私達も潜ってみましょう!」


「「えっ!?」」「…………?」


私のその声にソラちゃんとユキちゃんは驚いたというか焦ったような声を、ソフィーは何を言ってるかわからないようなポカーンとした顔をしていた。


「あっ大丈夫、セラみたく素潜りじゃなくてちゃんと道具はあるから!」


私はそう言いながら巾着袋から銀のリングを4つ取り出す。いやぁ、流石にセラみたく素潜りはさせないよ。だってセラは一回の潜水でな ぜ か5分以上潜ってられるバケモ……………人だからね。


ソラちゃんとユキちゃん、ソフィーに銀のリングを渡す。


「これって……………もしかして」


ソラちゃんはこの腕輪に見覚えがあるみたい。


「人魚の宝具……………ですか?」


「………………惜しい!これは人魚の宝具を私が改造したオリジナルだよ!本物よりかは性能は劣るけど十分使えるから安心してね」


人魚の宝具は着けると水中でも息ができて会話もできる、視界も開けるし泳ぎも速くなる、さらに魚とかの海の生物の言葉も理解できるようになるちょー凄い物なの。で、私が作ったのは水中でも息ができるようにしただけの劣化品ってわけ。まあ人間からしたらそれだけでも良い物なんだけどね。


「さっ入ってみよっか!」


3人が腕輪を着けたのを確認して海の中に潜る。

ここの海は透明度がかなり高くて、遠くまで見通すことができる。


「みんな大丈夫?息できる?」


「すごい……………これが人魚の宝具の力」


「ママ!これ凄い!!」


ソフィーもしっかり効果を受けてるみたいで良かった。ソフィーは周りをぐるぐると見渡していて、初めて見る景色に目を輝かせていた。


「少し遠くまで行ってみようか」


ここだと、人が多くて魚とか海に住んでる魔物も少ない。もう少し先まで行けばきっと…………………


「ソフィー行きたい!」


「ユキも!」


「えぇ〜!?じゃ、じゃあ私も!」


好奇心旺盛の2人は絶対行くって思ってたし、その2人が行くならお姉ちゃんのソラちゃんも来るよね♪


「セラも来るよね」


「はい、勿論です」


「じゃあ行ってみよ〜!」



◇ ◇ ◇



「そうそう、みんな付けて」


私は袋から正八面体の透明な宝石のネックレスを取り出してみんなに渡す。


「ママぁ、これなにぃ?」


「これはね海にいる生き物から存在を感じられなくする特別な宝石なの」


海には食用の魚や魔物の他にも凶暴な魔物もいっぱいいる。そんな中に私たちが行けば魔物にとっては餌でしかない。戦闘の得意なセラにユキちゃん、私がいても守り切れるかはわかんないから念の為にね。



私の魔法で少し流れの速い海流を生み出して泳ぐこと10分、周りは沢山の魚に魔物で溢れかえっていた。


念の為全員で一箇所に集まってそこの周りに空間属性の魔法でバリアを作る。これで大きい何かが近づいて来ても多少は時間稼ぎができる。


「ママ見て!キラキラの亀さんいるよ!」


「お姉ちゃん見て!ゴールデンサーモンの幼体がいる!」


「あっちにはソードフィッシュもいる」


「ナギサ様、一狩り行って来ますね」


「お姉ちゃんお姉ちゃん!!スイートサンゴ!!取ってこようよ!」


「ユキ、スイートサンゴには毒あるから取っちゃダメだよ…………」


「ママ!向こうにはキラキラのお魚さんいるよ!」


うんうん、みんな楽しそうでなによりだよ!

けど…………………どこかおかしい、なんでもっと弱い魔物が

の? ここら辺だったらサイレントシャークだったり、群体ウナギだったり、弱かったり、捕まえやすいやつがもっといても良いのに。まるで何かから隠れてるみたい………………………なんか、嫌な予感がする。

それに強い魔物が多すぎるし、どれも捕獲するのが難しい魔物ばっかり。こんなレベルの魔物がなんで大量に発生してるの?どれも魔力濃度が高い所でしか発生しないのに。


原因を探す為に超広範囲にソナー代わりに自分の魔力を発生させる。そしてそのソナーに何かがぶつかって………………………………嘘でしょ!? はヤバい……………………


「………………みんなこっち来て!!!!」


「ママ?」「「ナギサ様?」」


「いいから早く!!!」


セラは………………なんでいないのよ!! もう〜!!使いたくは無かったけど、緊急時だから!!! 私は空間魔法で強制的にセラをこっちに転移させる。


「あれ?ナギサ様?見て下さい、たいりょ……………」


「セラ!今すぐ最低限の魔力を残してバリアを貼りなさい!!!!」


「………はい!!」


私の必死の形相にすぐに察したのか、私のバリアの内側にバリアが展開される。私はそのバリアから更に重ねるように自分のほぼ無限にある魔力を使って今までにないレベルの硬さのバリアを展開させる。


「ソラちゃんとユキちゃんはセラに魔力を分けてあげて!ソフィーは私たちの真ん中に来なさい!」














バリアを展開させて4分が経過した。

周りにいた魔物達もみんな物陰に隠れて大きい空間が開けられていた。まるで、そこを通って下さいと言わんばかりに


「ママ……………?どうしたの?」


ソフィーが訳も分からない状態が続いているせいで少し泣きそうになっていた。けど、今の私にソフィーに構っている暇は無い。まだまだ遠く離れてるのに、もうアイツの魔力波が伝わって来てバリアがゴリゴリ削られていく。


「………………………来る!みんな固まって!!」


私がそう言った瞬間………………………



目の前に巨大と言っても足りないくらいの大きいが現れた。

その龍は私達を一切気にせず、7色に輝く鱗を煌びやかに輝かせながらゆっくりと壮大に泳いでいく。


「なに………………これ」


「この龍は…………………原初の水龍・レヴィアタン。この世の【水】を創造したと言われてる伝説の龍よ。物語でしか聞いたことなかったけど………………まさか実在したなんて」


全長何万メートルかもわからない巨体がゆっくりと進んでいく。かなり離れているのにその存在感はすぐ隣にいるのではないかと思うくらいに強大で気を抜いたら一瞬で意識が持っていかれてしまいそうだった。




















「やっと………………行った」


レヴィアタンが通り過ぎた所には見た事のない魔物が生み出されていた。そりゃああんな魔力の塊があったら生まれるわ。…………………もしかしてここら一帯に強い奴が多かったのはレヴィアタンのせい?


「……………………戻ろっか」


私達は転移でテントの中に戻った。

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