第26話
「あなたの作品は、全く素晴らしいですね!あれの価値がわからないなんて、世の中には、物のわからない人間が多いんだなぁ」
Tは、おっとりとしたようすで、ニコニコしながらそう言いました。
それを聞いていた作家が、皮肉に口を歪(ゆが)めながら言いました。
「全くその通りだよ。そして、僕が苛々(いらいら)させられるのは、文学作品をキチンと評価出来ないような馬鹿者が、自分では少しもそのことに気づかずにいることなんだ。
あのFなどは、いっぱしの大評論家気取りなんだからね!」
「いやはや!相変わらず君はキツいことを言うなぁ。まぁ、君の気持ちがわからないわけじゃないけど、Fだって全く無能というほどでも無いだろう?」
Tが、やんわりとそう言いました。
すると、作家はすかさず馬鹿にしたように、「いや、無能だね。あの男には評論家としての能力なんて、欠片(かけら)も無いよ」と、キッパリと言い切りました。
穏やかな性質のTは、困ったふうに笑って、「僕は、Fも君が言うほど悪くないと思うけどなぁ」と、ボソボソと言いました。
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