第24話

作家がある本屋に入って行くと、二人の女の子が平積みされた本の前に立って話をしていました。派手な化粧をした女の子と、ジーンズ姿の普通っぽい女の子でした。


スカートの女の子は、赤く紅(べに)を引いた唇を、盛んに動かしながら、「この人の小説って、すっごく面白くってよ。

私って、結構本を読んでるから小説にはうるさいほうなの。この人の作品はかなり質が高いわ。

これも有名なO文学賞とったのよ」と、まるでその小説を自分が書いたかのように自慢そうに言いました。


それを聞いたジーンズの女の子は、「へえぇ、そうなの?私も読んでみようかしら」と、すっかり感心したように言いました。興味津津といったところです。


彼女は、世の中で話題になっているものを、いつも追いかけていました。たとえ興味の無いことでも、話題になっていると聞くと、それに関心を示しました。


手を出さずにはいられませんでした。本に限らず何に対してもそうなのでした。それで彼女は、その本を手に取ると、もう一人の子と一緒に、二人してレジの方へ向かいました。


作家は、ひょいと肩をすくめ、やれやれとばかりにため息をつきました。そして、その場を離れて行きました。

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