第24話
作家がある本屋に入って行くと、二人の女の子が平積みされた本の前に立って話をしていました。派手な化粧をした女の子と、ジーンズ姿の普通っぽい女の子でした。
スカートの女の子は、赤く紅(べに)を引いた唇を、盛んに動かしながら、「この人の小説って、すっごく面白くってよ。
私って、結構本を読んでるから小説にはうるさいほうなの。この人の作品はかなり質が高いわ。
これも有名なO文学賞とったのよ」と、まるでその小説を自分が書いたかのように自慢そうに言いました。
それを聞いたジーンズの女の子は、「へえぇ、そうなの?私も読んでみようかしら」と、すっかり感心したように言いました。興味津津といったところです。
彼女は、世の中で話題になっているものを、いつも追いかけていました。たとえ興味の無いことでも、話題になっていると聞くと、それに関心を示しました。
手を出さずにはいられませんでした。本に限らず何に対してもそうなのでした。それで彼女は、その本を手に取ると、もう一人の子と一緒に、二人してレジの方へ向かいました。
作家は、ひょいと肩をすくめ、やれやれとばかりにため息をつきました。そして、その場を離れて行きました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます