第21話
作家が喜んで嬉しそうにしていることが、作家が幸福そうであることが、娘の幸福でもあったのです。
作家が帰ってしまうと、娘とN夫人は、二人で手を取り合って喜びました。
いつになく娘も大はしゃぎをしました。娘は、全く夢を見ているような気分でした。自分の気持ちを伝えることこそ出来ませんでしたが、それでも若者と知り合いになれたのです。
これだけでも、大変な前進です。もしかしたら、いつか、恋人同士にだってなれるかも知れないではありませんか?だって、知り合いにもなれたのですから。
それに、自分の詩や小説を本にしてくれるというのです。これも、本当に娘にとって嬉しいことでした。娘は、文学が大好きでした。少しも大袈裟でなく死ぬほど好きでした。
ユゴ―を、ジョルジュ。・サンドを、魯迅を、トラ―クルを、心から愛していました。あの人達のようになりたい、と熱烈に思っていました。
ずっとずっとあんなふうになれたら、どんなにいいだろうと、夢に見て来ました。もっとも、自信ときたらさっぱりありませんでしたけれど。
自分には、どうしてあの大芸術家達のようなものが書けないのだろう、と思い、それでも少しでも良いものを書くために、何度も何度も、恐らく人が見ていたら、驚き、呆れ果ててしまうくらい文章を書き直しました。
そんな娘にとって、本を出して貰えるというのは、とてもとても嬉しいことでした。
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