第13話

馬鹿にされ、笑われ、冷たくされて、最後に追い出されたこともありました。

こうして、あちこち親戚の家を移って行きました。けれど、どこも娘にとって住み心地の良いところではありませんでした。


親戚には優しい子がいて、友達になることもありましたけれど、やはり他人の家としての冷たさが家全体を支配していました。

娘が十八歳になった時のことです。その頃身を寄せていた親戚の知り合いに、N夫人がいたのでした。


N夫人はその親戚から娘のことを聞くと、是非自分が引き取りたいと、申し出たのでした。親戚は、N夫人の申し出を受け入れました。

こうして娘は、N夫人に引き取られることになったのです。N夫人は、未亡人で子供もいませんでした。それで娘を養女として迎えると、実の娘のように可愛がったのです。


N夫人は今までの娘の、痛みに必死で耐えている、といった様子がほとんど無くなり、幸福そうにニコニコしているのを見て驚きました。


N夫人は娘に言いました。

「おやまあ、大変なはしゃぎぶりね。あなた、とっても明るくなったわ。いったい、何があったの?さぁ、おっしゃい!私に隠したりしないでね。人に話せば喜びは倍になると言うわ」


娘は顔を真っ赤にして、「あら、そんなこと」と言いました。真っ赤にしながらも、その顔はとても嬉しそうで、眼はキラキラと輝き、身体全体が光を発しているようにも見えました。


人生経験豊富なN夫人には、すぐピンと来るものがありました。

「あなた、誰かを好きになったのね?」

「いいえ、そうじゃありませんわ。いいえ……」


娘はますます真っ赤になりながら打ち消そうとしましたが、N夫人がニコニコしながら、ごまかされはしませんよ、といったようすをしているのを見ると、涙が出て来ました。

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