第12話

でも……と娘は考えます。あの人も私の足を見たら、まるっきり関心をなくしてしまうに違いない、障害を持った娘など、どうして若い男の人が相手にしてくれるだろう?

だけども、あの人は優しい人だ、やっぱりそんなことはあるまい、とも一方で思うのでした。


娘は毎日作家を見ているうちに、好きという感情が高じてきました。雨が降って若者が来ない日などは、惨めなくらい悲しい気持ちになりました。

けれども、そういう日の次の日などは、作家が通るといつもの二倍も三倍も嬉しくなりました。


この頃は気持ちまですっかり明るくなり、伯母のN夫人を相手に、長い間おしゃべりをしたりするのでした。


N夫人は、大変しっかりした女性でした。落ち着いていて、何事にも取り乱さず、平然としていました。細長いその顔には、静かな威厳(いげん)と慎(つつ)ましさが表れていました。


今までになく明るい娘の様子を見て、N夫人は娘がすっかり変わったな、と思いました。


このN夫人というのは、娘とは血の繋(つな)がりが全くありませんでした。娘は母親が亡くなった後、親戚の家に引き取られたのですが、そこの家族と全くうまくいかなかったのです。


その親戚の人達も悪い人ばかりではありませんでしたが、どこへ行っても歓迎はされませんでした。


娘のところが羽振りの良かった頃は、皆呼ばれなくてもやって来ました。いつも、ニコニコ笑いながら、盛んに愛想を振りまき、思いつく限りのお世辞を並べました。


けれど、今やお金がすっかり無くなってしまった娘のことは、ただ迷惑にしか思われなかったのです。それで娘は、かなり冷たく扱われました。

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