第2話

向こうでは少女達が華やかに笑っています。赤やオレンジや黄色い服を着た少女達は、春風のようにさわやかで、太陽のように元気でした。手を取り合ったり、高い美しい声でしゃべったりしています。


妙(たえ)なる楽(がく)の音(ね)にも似た美しい声をして、優しい姿をした少女達は、地上に舞い降りた天使のように見えました。彼女達は今にもまた天へと舞いあがっていきそうでした。


黒髪は風になびき、唇は声なき歌をうたい、その腕は軽やかに宙を舞いました。生きている詩といってもいいほどでした。


詩の女神達の前を、あまりふさわしくない一人の男が歩いていきます。若くはありません。ちょうど少女達のお父様くらいの年齢です。その眼はドロンと濁(にご)っていて、まるで生き生きしたところがありません。


肩はがっくりと下がり、いかにもだるそうに歩いていて、口の中では何やらぶつぶつとつぶやいています。別にどこに行くという当てもなさそうです。ただぶらぶらと歩いていて、何をする気も無さそうで、やる気といったものが全く感じられませんでした。


男は、娘が窓から見ている間じゅう、そうしただらしのないようすをしていました。顔つきといって特に目立ったところはありません。どこにでもいる人で、服装もちゃんとしています。


ホームレスとか、そういう人ではなさそうです。でも、どうしてあんなふうにしているのでしょう?

まるで生きながら死んでいるように見えました。希望も何もなく、それだからといって死にもせず、男は歩き続けて行っているようでした。

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