第142話 カスタディアの悲劇

ある日アレクセイ王子は従姉妹であるメリジェア王女の元を訪ねて何やら話し込んでいた


「わかったわ…貴方がやれば良い事だけど貴方は次期国王になる身だから自分の手を汚したく無いのよね?リスクを犯すのだからそれなりの報酬は貰うわよ?」


「ああ…上手くやってくれよ…くれぐれも一目に付かないように実行してくれ」



その夜エルシド王子は修道女セシリアと共に部屋で過ごしていた


2人きりでする事と言えば決まっているがそれには触れないでおこう


「ああ…セシリア…ずっとこのまま君と一緒にいられたらどんなに幸せだろう…」


「エルシド様…私も同じ気持ちです…このまま朝が来なければ良いのに…」



ベッドの中でいちゃついてると部屋の隅から声がした



「その願い今すぐ叶えてあげましょうか?」



エルシド王子はその声に飛び起きて辺りを確認した


「誰だそこにいるのは?姿を表せ!」



部屋の隅の暗がりから現れたのはメリジェア王女だった


そしてその手には鋭利な長めのナイフが握られていた


「お前達はここで死ぬのよ!2人仲良くね!」



メリジェア王女はエルシド王子に斬りかかった


上手くかわすもセシリアを庇いながらでは難しい状況だった



「くそ…セシリア君だけでも逃げるんだ!」


「嫌です!エルシド様を置いて行けません!」


「僕のわがままを聞いてくれ!君だけでも逃げ延びるんだ!頼む!」



セシリアはドアに向かって走った


しかし行手を阻む者が道を塞いだ



「何処へ行く気だ?ここでお前達は朽ち果てるのだ…俺を邪険にした報いを受けろ!」


そこに居たのはアレクセイ王子だった


アレクセイ王子はセシリアに手に持っていた剣でから掛かろうとしていた


「きゃあああっ!」


上手くかわすも左腕を切りつけられてしまった


「セシリア!」


次の瞬間…アレクセイ王子の剣がエルシド王子の胸を貫いていた


エルシド王子はセシリアの上に覆い被さるように倒れ込んだ


「エルシド様!なぜ私を庇ったのですか?」


息も絶え絶えでエルシド王子はセシリアの頬を撫でながらこう言った


「愛する女性を守るのが男の役割だろう?だからだよ」


セシリアはアレクセイ王子を睨みつけながらエルシドに回復魔法をかけた


「そんな事をしても焼石に水だぞ?ここで2人仲良く死ぬが良い!」



アレクセイ王子が剣を振りかぶったその時


エルシド王子の体内の魔力が暴走し始めた


部屋中に溢れかえる魔力は膨大に膨らみ部屋を突き抜け城全体に広がりそして爆発を起こした



砂埃が辺りを包み込む


砂埃が風に乗って取り払われた時辺りは光景が変わっていた



城は瓦礫の山になりあちらこちらから泣き叫ぶ声が聞こえた



アレクセイ王子は咄嗟にバリアを張ったので難を逃れたがメリジェア王女は爆風に巻き込まれ息絶えていた



その場にエルシド王子とセシリアの姿は消えていた



数時間後…出かけていたエルロイ王が帰って来て城が跡形もなくなり瓦礫の山と化しているのをみて何が起こったのか生存者に聞いて回り出した


兵士や侍女は突然爆発が起こったと口々に答えた


そしてエルロイ王はメリジェア王女の亡骸の前で立ち尽くしているアレクセイ王子を見つけた



事情を聞くとアレクセイ王子から帰って来たのは信じられない言葉だった



「メリジェア王女がエルシド王子に襲いかかりその時にエルシド王子の魔力が暴走して爆発を招いたのです…俺は咄嗟にバリアを張ったので難を逃れる事が出来ましたが被害は尋常ではありません…」



なんとアレクセイ王子は亡くなったメリジェア王女に自分の罪を被せたのだ



「そうか…エルシドは何処へ?」



「分かりません…見つけて彼の暴走を止めなければ更なる被害が増えるでしょう」



「お前はエルシドを探すつもりなのだな?」



「そうです…許可を頂ければ幸いです」



「あい分かった…旅立つが良いアレクセイよ」



こうしてアレクセイ王子はエルシド王子とセシリアを探しに旅立つ事になるのだった



アレクセイ王子の目的は1つ



エルシド王子を見つけ出しトドメを指す事



そしてセシリアを奪い返す事だった



表向きは世界の為



実際は自分の欲望の為にアレクセイ王子は旅に出るのだった



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