第7話 クエスト
「よっしゃ! クエスト行くぞ!」
「ほう! 初っ端からクエストか! して、その異様なやる気はなんぞ?」
「ゴアッ! グゥ……?(俺の出番だな! だよな……?)」
俺はウィンドウを操作して、そう言った。
クエスト。
一日一回来るデイリークエストの他に、ノーマルミッションなるものがある。ミッションを達成することでゲーム内通貨を貯めることができ、その通貨でパックを買うことができるのだ。
「おう……
「ふむ? 障害か? 何か言葉がブレて聞こえたような……はて? 障害があったのは頭のほうかの?」
「ゴアア!(有り難き幸せぇ! ……か?? あれ……?)」
「お前ら辛辣すぎだろ!! 俺にとってSSRってのはなぁ……!」
俺の言葉に、二人がそれぞれの反応を返した。
俺は今、森のエリアに向かっている。
各町エリアの他に、NPCが多く初心者向けな「森エリア」、守りに富むカードをNPCがドロップする「川エリア」、NPCが少なく変則的なカードを落とす「山エリア」、そしてNPCが全くいないガチ勢の溜まり場……「荒地エリア」。
俺は、森エリアで落とすカードが目当てで、なおかつNPCが多く戦闘回数を手早く稼げるという点で「森エリア」に来ていた。
「むむ! バトルしようではないか君!」
「望む所だ!!」
案の定、NPC達と戦っているプレイヤーが多く見受けられる。
当然俺も、その輪に混ざって、時にPvPもしつつ、NPCと一日中戦うのだった。
「おい! 俺と勝負しろ!」
そんな時だった。
奴が勝負を挑んできたのは。
7年前……いや7年後……分かりづらいので回帰前とする。
回帰前、一人の男がいた。
その男は、最速で『二つ名』をつけられたプレイヤーだ。
大会で活躍したり、今後現れる『ギルド』というシステムのリーダーや重鎮になったプレイヤーは、畏敬の念を込めて皆に固有の『二つ名』で呼ばれた。
当然俺はなかったが、『二つ名』プレイヤーともなれば全員覚えてる。
こいつは……
「……『侵攻のオウガ』」
「えっ? なんて?」
回帰前、『侵攻のオウガ』として君臨していた
圧倒的な速さと展開力でギルド【恐竜帝国】を立ち上げたプレイヤーだ。
当然、ギルド実装はまだだし、大会もやってない。
なんならこのゲームができて3日だ。
ガチ勢ですら、色々なカード能力を覚えるのに、今ある1弾だけで10日ほどはかかっていた。
まだ『二つ名』なんてないだろう。
「なんで俺の名前を知ってんだ?」
そんなことより、オウガは俺が名前を知っていることに驚き、不信感を隠さずに問いかけてきた。
「は……?」
だが、俺は未来の知識を持っていることを、片鱗すら見せずに隠せるとは思っていない。
こういう時の言い訳は考えてきたぜ! 学校でな! ※学校は勉強する所です。
「え? 何お前? どうした?」
「はっ……いや、俺の名前をお前が言うから!」
「え? まじ? なんて名前?」
「今オウガって言わなかったか?」
「あ〜悪ぃ、こっちの話なんだ」
俺はそう言うと、珠蒼のカードをクルクル回して見せた。
「ぬおっ!? なにをする!」
「あ、あぁ、そうか……そうだ、お前バトルしないか? 折角だし」
オウガは少し困惑しながらも、俺に勝負を挑んできた。
(やっぱそれが目的か……)
大方あのチンピラ二人組やら誰かが言ったんだろう。俺がレアカードを持ってるって。
コイツはかなり好戦的で、欲しいカードを持ってるやつを見つけたらすぐバトルを挑んで奪い取るような性格だ。
そういえば、あの二人組もこいつの手下か何かだったんだろうか?
初日からPK組が存在してるとかどうなってんだよまじで……
(でも、未来のアグロ王と対戦できる日が来るとは思わなかった。これはラッキーだ)
以前の通りなら、オウガは初の大型大会で優勝する。滅多に戦える人物じゃない。
「ああ、いいぞ。(このゲーム対戦申し込まれたら拒否出来ないし)」
どうせここで断ってもシステムを介して申し込んで来るのは分かってるので、俺は快く引き受ける。
「じゃぁ……勝負だ!!」
こうして、俺と未来のアグロ王、オウガの戦いが始まった。
「先行は……俺だな!」
俺はランダムで先行を手にした。
最初に最大三枚まで手札を交換出来るが、俺は交換せずバトルを始める。
「俺のターン、ドロー」
まずは手札6枚。
「アサルトスケルトンを召喚! プレイヤーを攻撃!」
俺は毎度おなじみアサルトスケルトンを召喚する。
アサルトスケルトン……コスト1 スタッツ2/2 能力:なし
「ターンエンドだ」
俺はアサルトスケルトンで攻撃し、ターンエンドした。
「よし、俺のターン! ドロー!」
オウガがドローし、アグロらしく速攻モンスターを召喚する。
「召喚、ダイノラン!」
ダイノラン……コスト1 スタッツ1/3 能力:死亡時にデッキからランダムに恐竜族モンスターカード及び恐竜族付属カードを1枚手札に加える。
「おお、ダイノラン」
「やっぱ知ってるか? コスト1SRだぜ?」
コスト1のSRが珍しいのは今だけだよ……と言いたくなるが、実際こいつが入ってるのは想定内だった。
ダイノラン……こいつは
範囲が広く絞りづらいとはいえ、レベル1で壁になりつつサーチが出来るのはかなり優秀だ。
(しかし、もうちゃんと手に入れてたんだな……)
確かこいつは、初期からかなりのカードバリエーションを誇ってたと言う噂があったな。やっぱPKで手に入れてたのか?
「攻撃!」
オウガは俺のセンターにいるアサルトスケルトンに攻撃する。今ダイノランが1/1でアサルトスケルトンが2/1の状態だな。
「ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー、ターンエンド」
「!?」
俺の番になったので、出せるものもないし即ターンエンドする。
このゲームは、攻撃する時にセンター区域という場所に行き、相手のセンターが空いてる場合にプレイヤーを攻撃出来るというゲームだ。
つまり、攻撃しなければ直接ダメージを食らうことになる。
「お前……ドロー!」
オウガは、自分が速攻で削る必要のあるアグロデッキということを知らないと思い、ニヤリと笑ってドローする。
「召喚、ナイトビー!」
ナイトビー……コスト2 スタッツ3/1 能力:なし
「ナイトビーで攻撃! ターンエンド!」
「ドロー」
だが、俺はわざと
「ゴーレムを召喚、ターンエンド」
(最初に少々ダメージを喰らおうが、体力が0にならなきゃこのゲームは負けじゃねぇんだよ!)
サーチされたりするのもめんどうだし、最速レックスの4、5ターンまでは何もしない。実は、これがアグロの攻略法だったりする。
「はっ! モンスター貯めようとしても無駄だぜ! 地震!」
地震……魔法カード コスト3 能力:自身の場に、恐竜族がいるなら使える。恐竜族以外に2ダメージ与える。
地震……アグロによく使われる、汎用魔法だ。これによってゴーレムが0/2となり、アサルトスケルトンが死亡する。
「ナイトビーで3ダメージ!」
これで俺の体力は24。
「ドロー」
俺はカードを引く。
「召喚……」
そして、俺はここでオウガに対して切り札となりえるモンスターを召喚する。
「
灼降魔術師……コスト4 スタッツ0/1 能力:自分の手札を好きな数捨て、その数山札からカードを引く。その後、相手の手札を1枚ランダムにデッキに戻す。
「行け!」
「なにぃ!?」
灼降魔術師……後に禁止となるSRカードのうちの1つだ。このために貯めてきたカードを俺は全部捨て、山札から6枚引く。
(よし……来たな)
「なっ……チッ!」
そして、オウガの割れた手札は……
レックスーAssaultーだった。
リゾガル〜最強カードゲーマー〜 星影 迅 @Lvee
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