21 鉄格子の残響

 暗い鉄格子が私には似合う。鉄の女と称される私の心には人間らしい感情は見受けられない。生まれた時から私は感情を錆び付かせていかなければならない宿命にあった。だからこそ、今の私を理解できない私がいる。


「……はあ……本当にこれで良かったのかしら」


 ……まただ。気がつけば溜息。気がつけば心が軋む。錆が少しずつ剥がされていくような感覚。人間らしさを捨て、徹底した機械となることを良しとしたはずが、逃れられない人間としての矜持との板挟みとなって私が私を苦しめる。


「……っ。何を今更……。私に帰る場所はない。私はマナ・ルーランド。上に立つ者。甘えも理想も必要ない。ただただ機械の心を持って、闇から敵を葬るだけだ」


 急かすように私は装備の点検を開始する。これから始まる。戦いが。人間から機械へ心を入れ替えろ。


 “常時展開型魔力障壁起動正常”

 “対精神干渉迎撃システム起動正常”

 “魔力炉開度上限数値96.5%確認”

 “粛正武装魔素血管マナベッセル伸縮正常”

 “壊滅原理デスルール残量五十八発”


「こちらNo.コード2セカンド。武装システム異常なし、迎撃体制完了。いつでも出られる」


 “了解。ご武運を”


 ……さて、殺るか。向こうも死ぬ覚悟でやってくる。こちらも殺す覚悟を用意しておくのが義理というものだ。


 ──ププー。着信。着信──。


「……こちら2セカンド。どうしましたか、1ファースト


  着信の主は一番隊を指揮するNo.コード1ファースト。我々に粛正武装をもたらした影の者。本来であればこのような者を招き入れるはずはないが、事態は一刻を争う。


『作戦変更だ。お前は第一秘匿対象を死守せよ。レビン・ムートフリードは俺の獲物だ。しかし、恐らくだがスパーダ・リンドバーグとピーター・カーマックを取り逃がし、そちらに向かわせることとなる。なんせ相手にはあのルーナ・エルヴィロードがいるからな。そちらの対処はできるか』


「……問題ありません。あの程度の者であれば軽く捻り潰せます」


『了解した。武運を願う』


 プツッと連絡が切れる音が響いた。……彼らとの戦いは避けられない。彼らはどう思うだろうか。まだ私を同じ仲間として見るのだろうか。それとも、裏切り者として私に武器を向けるのだろうか。


「……スパーダ君。君ならきっと、その剣を抜いてくれるよね」


 らしくない願望を呟いて私は鉄格子を開いた。重く軋む鉄の音が反響する。その音は心なしか、救いを求める誰かの悲鳴のように聞こえた。

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