第34話 岸森くんに教えてもらった戦い方、その2
岸森くんに教えてもらった戦い方、その2。
「ヴァジュラとヒビワレは基本的には同じだ」
「それはわかるけど、じゃあ、どうすればいいの?」
「ヴァジュラで全身を覆う」
そう言うと岸森くんは上着を脱いで、上半身裸になった。
「ただ、そのやり方は二種類ある。ひとつは大気中に散らばるヴァジュラを集めて具現化する方法」
光の粒が岸森くんの頭部に集まる。
駐車場で見た禍々しい鬼の仮面が岸森くんの顔半分を覆っていく。
「もうひとつのやり方は皮膚自体をヴァジュラ化する」
岸森くんの右手に無数のヒビ割れができる。
やがて皮膚の表面は黒く濁り、鍾乳石のような隆起がボコボコと盛り上がっていく。
岸森くんの右腕は禍々しい姿へと変貌した。
「25%ってところか」
「……すごい」
「殴ってみろ」
ボクは岸森くんをぶんなぐった。ボクの拳が岸森くんの拳にぶつかる。
「痛ッ!」
冷たい大理石を殴ったような痛みが拳に広がった。
「顔も殴れ」
また痛かったら嫌だなぁと思いつつも、ボクは岸森くんの顔を殴った。
頬に拳が触れた瞬間、黒い仮面は砕け散った。
「あれ?」
手応えのなさにボクは驚いた。
「違いがわかるか?」
「硬さ?」
岸森くんは黙っている。ボクはボクなりの仮説を言葉にした。
「大気中のヴァジュラを集めて物質化したことはボクもあるけど、意識を集中させておかないと、すぐに拡散した。たぶん岸森くんは、ボクのパンチが当たる瞬間に意識の集中を解いた」
「正解だ」
「でも、手の方はすごく硬かった。それに今も硬質化は解けてない」
岸森くんが腕を掲げる。腕から光の粒が煙のように散っていく。やがて手は元の形に戻ったが、腕には無数のヒビが入っている。
「こっちは、なかなか治らないね」
岸森くんはペットボトルを取り出し、水をかけた。
そして、ボクがもらったものと同じ軟膏を取り出し、塗りたくった。
「わかったか?」
岸森くんは唐突に質問してくる。
時々、主語がないから何を言ってるのかわからなくなるし、質問しても一度しか答えてくれない。
だから短い言葉から前後の意味をしっかりと読み取らないといけない。昔気質の職人みたいだ。
この「わかったか?」はおそらくヴァジュラの原理についてわかったか? って意味だろうとボクは理解した。つまり。
「ボクに必要なのは皮膚をヴァジュラで覆う方法を覚えること……ってこと?」
「そうだ」
「でも、どうやって」
「原理は同じだ」
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