第64話 安田の居場所
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美沙が両親に「前より可愛いと思わない?」黒髪のショートボブの鬘の顔を鏡の中に見て、すっかり元気を取り戻していた。病院を退院したのは、その二日後だった。
「お願いだからもう危険な事は止めてね!」母の忠告も耳には入らず、早速モーリスの本社に乗り込む勢いの美沙。
美沙はモーリスと交渉するか?小島部長の一億の事を追求するか?安田の居場所を捜すか?選択肢に迷う。
その時、三宅刑事が「新和商事の新垣社長が持っていた手帳に安田俊幸って人の住所が書かれているのだが、これは今回の事件に関係が有る人ですか?」
この言葉を聞いて美沙は既に選択肢はひとつだと笑みを溢した。
小南に岡山に向う事を告げて両親の制止も聞かずに家を飛び出した。
もう少し逮捕が遅れていたら、新和商事の連中が安田さんを抹殺していたかもと思うと背筋が寒くなる。
西大寺だから、元のみどり青果の場所に近い。安田さんに聞けば、全ての事が解決するのは間違い無い。美沙が新幹線に乗り込んで直ぐに小南から小島部長が飛行機で岡山に向かったと連絡があった。
事務の加納が探偵気取りで小島部長を監視していたので、小南に直ぐに知らせてくれたのだ。
小南も三木と木村を連れて直ぐに新幹線に乗り込み岡山に向った。
京都府警と大阪府警は、親和商事の取り調べの結果、吉高厚子さんの人身売買と父孝吉さんの中之島病院での殺害を認めたが、それらは、暴力団と香港マフィアの仕事で、モーリスの糀谷専務の関与は無いと自供した。
吉高厚子さんの行方がその日から捜索されたが、簡単には発見出来ない事は想像出来た。
事実発見されたのは事件が発覚してから半年後だったが、吉高厚子は華僑の資産家の愛人になっており日本に帰る事を拒否したのだ。
三宅刑事は名古屋の管轄のひき逃げと詐欺の容疑で、桐谷及び梶谷不動産の関係者を逮捕する段取りを着々と進めていた。
美沙は新幹線の中で新聞記事を読むと事件の進展が、モーリス本体に及んでいない事に安堵した。
モーリスの悪事が明るみに出れば多くの取引企業は倒産して、喜べない事態になる。
多くの企業がモーリスの道ずれとならずにモーリスを追い詰める方法がないか考えていた。
昼過ぎに岡山駅に到着した美沙は、小南達との合流を待つことにした。
同じ頃、岡山空港に到着した小島部長は岡山空港に到着した。安田俊幸を巧みに呼び出して会う事になっていた。
小島は安田に電話で「今がチャンスです!糀谷専務の死亡と松永部長が逮捕された今が糾弾する時期です。お会いして詳しい話を聞かせてもらえますか?」と言った。
「部長さんだけならお会いしても構いません!妻も一緒に行きたいのですが宜しいでしょうか?」
「奥さん?」
「はい、みどり青果に変更する前のみどり果樹園の娘です」
「詳しいことをご存じですよね。是非ご一緒にお越し下さい!」
「それでは岡山駅の中央改札でお会いしましょう」
「駅に着いたら電話をしますので、宜しく!」と言って電話を終えた。
安田は妻の由貴を連れて岡山駅の待合室で小島部長からの連絡を待っていた。
偶然とは恐ろしいもので、美沙も小南達の到着を待つ為に待合室に入り、安田の妻由貴の隣に座った。
安田と美沙はお互い顔を全く知らない。
安田の携帯に着信があり「もしもし、小島部長さん?三時に中央改札ですね!」
美沙は小島部長という言葉が聞こえて聞き耳を立てた。
小島部長?もしかしてウィークジャーナルの?この人は安田さん?この様な偶然が有るのだろうか?電話は直ぐに終ったが、三時は小南が到着する時間と殆ど同じだ。
自分を証明する物を何も持っていない美沙は、安田に話し掛けて怪しまれたら元も子も無い。
由貴が「小島部長は三時に来られるの?何処でお話したら良いのかしら?」と安田に尋ねている。
「駅前のホテルで話をする事になるだろうな」
「あの?すみません!」美沙が堪らず声を掛けた。
「は、はい」突然声をかけられて驚く二人。
「な、何でしょうか?」
「もしかして、モーリスにいらっしゃった安田さんでしょうか?」
「貴女は?」
「私はウィークジャーナルの記者で、赤城美沙と申します!話が聞こえてしまって、すみません!」
「えっ、ウィークジャーナルの記者さんが何故?」
「今からお会いになる方は東京本社の小島部長でしょうか?」
「貴女は本当にウィークジャーナルの記者さんなのか?」安田は疑いの目で見ながら、立ち上がり場所を移動しようとしている。
「貴方、ちょっと待って!」
「どうした、早く行こう!」
「私、この女の人知っているわ!間違い無いテレビに出ていた!」と由貴が言って安田の腕を引っ張り座り直させた。
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