第65話 岡山駅の偶然
56-065
「村井課長の子供さんの誘拐事件を解決した人よ!」
「あっ、そう言えば確かに、だが何故ここにいるのですか?」
「実は安田さんと小島部長を捜しに来たのです!」
「えっ、僕達を?」
「はい、ここでは大勢いらっしゃるので、横のホテルのロビーに行きませんか?」
「まだ時間が有るので大丈夫ですが」
三人は直ぐに待合室を出て、隣接するホテルに向う。
「半時間しか時間はありませんが、説明して貰えませんか?」
美沙は事件のあらましを説明すると、二人は驚愕して「どうすれば良いのですか?」
「私はモーリスの犠牲になっている企業を助けたいのです。私が名乗り出ればモーリスは大きな打撃を受けて倒産するでしょう。だが、同じ位多くの企業も倒産すると思うのです。それで小島部長にはモーリスから奪った一億円を困っている企業に寄付させるのです。そして安田さんと一緒にモーリスに乗り込んで交渉をしたいと思っています」
「赤城さんはまだ皆さんを助けるのですか?」
「はい、私の父の会社も助けたいし、その他の企業も全て助けたいのです。モーリスに普通の取引をして貰いたいのです。一億円は僅かかも知れませんが、それらの企業には改善されるまでの運転資金の足しにはなると思います。安田さん協力して下さい」美沙の必死の願いに心を動かされた安田夫妻は、自分達の力で公平な商いが取り戻せるなら協力すると言ってくれた。
安田夫妻がこの場所に小島部長を連れて来ますと言って、待ち合わせの駅に戻って行った。
小南達には電話で経緯を話してホテルのロビーに来る様に連絡した。
しばらくして何も知らない小島部長は安田夫妻と一緒にホテルのロビーに来た。
「あの人も安田さんの?」美沙を見ると怪訝な顔で小島が言った。
機会を見て安田夫妻の始末を考えていたので戸惑いの表情になった。
「御社の名古屋支店の赤城さんですよ!」と安田が紹介をした。
「えー、名古屋・・・赤城」
「私の顔はご存じですよね!お判りになりませんでしたか?」
「少し雰囲気が・・・」
「部長の裏切りで精神病院に拉致監禁されていましたから!」
「裏切りって何の話しだ!」
「部長!モーリスから一億円を強請り獲りましたね?」
「知らない!私は何も知らない!」と逃げ腰になっている。
「部長!お金をモーリスとの取引で困っている企業に寄付をするなら、今回の事には目を瞑りましょう!もし嫌なら警察に直ぐに連絡します」
逃げようとした小島を「部長!諦めた方が良いですよ!」丁度着いた小南達三人が前を塞いだ。
「刑務所に行くか?元の編集部長のままで過ごせるか?よく考えたら直ぐに答えが出ると思いますが?」
皆に囲まれては逃げる事は不可能だと思った小島は「本当に罪に問わないのか?」
「それはお約束します。でも私達と一緒にモーリスの本社に行って貰います」
「えっ、お金を返すのか?」
「いいえ、三人でモーリスを脅しに行くのです。部長が一緒なら直ぐに記事にできるので、モーリスは私達の条件を飲むと思います」
「赤城君はモーリスで犠牲になった企業を救うのか?」観念した小島部長は、数日後に一緒にモーリスの本社に行く事を承諾して、一億も渡すと約束した。
翌日、宮代会長は美沙からの報告を聞き、一緒に千歳製菓に乗り込んだ。
社長室に入ると、数日間の美沙の苦難の事を全く知らない京極親子は「会長が何故赤城さんとご一緒に?」社長が言うと息子の晃が「お父さん!会長が仲人を・・・」嬉しそうに言う。
京極社長は、社長室に赤城信紀が入って来たので「赤城君!今から会長の話が有るそうだ!用事なら後にしなさい!」と厳しく叱った。
「馬鹿者!お前達はもう少しで会社を潰すところだったのだぞ!判っているのか?」
怒る宮代会長に鳩が豆鉄砲食らった様な顔の二人。
「赤城君親子の活躍で我社か救われたのだ!土下座をして御礼を言わなくてはいけないくらいだ」
「お、や、こ?」晃が驚いて尋ねる。
美沙は「そうよ、馬鹿な社長に格下げにされた父です!それからこれは鬘よ!」そう言ってボブの鬘を外した美沙の姿に「えーーーーーーー」「あっ、、、、」二人が仰天の表情に成った。
宮代会長が経緯を話すと、二人は項垂れ「会長!申し訳ございませんでした!」と深々と頭を下げて謝った。
「私じゃ無い!赤城部長親子に御礼を言いなさい!」
「ぶ、部長?」
「当然だろう?千歳製菓の最大の功労者だ!」二人は再び深々と頭を下げて赤城親子に謝った。
数日後、モーリスの本社に乗り込んだ四人に、社長は穏便に収めて頂けるなら今後は契約を見直す事を承諾した。
取材の内容を書いた文章と安田の存在、そして美沙に行った糀谷専務達の事が細かく書かれた原稿を見せられては納得する以外術は無かった。
四人が帰ると社長は竹田会長に報告に行った。
会長は「当分は自重だな!糀谷が居なくなったので、もう昔の様な手荒な商売は慎め!業績が相当落ちるが致し方無い」と諦めた様に言った。
正月からの頒布会は予想以上の売れ行きで、通常の約二倍の注文が殺到した。
それはモーリスの頒布会の称賛記事を、ウィークジャーナルが特集で数週間掲載したからだ。
モーリスの利益の落ち込みを完全に補い、関連企業も潤って千歳製菓の頒布会も上場のスタートを切れた。
赤城家では「お父さんが部長で、京極晃係長を使っているの?大丈夫?ノー天気な息子?」
「それが、最近は私をお父さんって呼ぶのだよ!お前の武勇伝に完全にいかれた様だ!」
「えー私あの様な男性嫌よー」と大笑いする平和な赤城家に戻っていた。
完
2019,11,10
甘い城 杉山実 @id5021
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