第60話  情報入手

  56-060

翌朝三宅刑事は、京都府警に教えて貰った後藤俊に連絡をして事情を聞こうとしたが、仕事中で昼休みまで待って欲しいと言われた。

一刻も早く中之島病院に行きたい小南達、だが迂闊に踏み込んで美沙の命が危険に晒される事は避けたい。


その頃美沙は朝食の最中に、吉永看護師から「十時から検査と治療が始まる様ですよ!」と告げられた。「あの、生理用品はありませんか?」

「えっ、直ぐに持ってくるわ、予備もトイレに置いておくわね」

食事の途中に再びやって来て、トイレに予備を置いていってくれた。

美沙はこの吉永は普通の看護師で、院長をはじめとして溝端先生、秋山看護師、静内看護師の四名は新和商事と関係が有るとノートに記載をした。


しばらくして、美沙を連れに秋山看護師が男性看護師二人を伴って病室に来た。美沙は抵抗するのは無駄と思って直に従うことにした。

対抗されるのを予想していた秋山看護師は拍子抜けして「桜木さん!生理になったのですか?」と言って美沙を連れて行った。

治療室に入ると、静内看護師と溝端医師、そして院長が待ち構えていた。美沙は抵抗することもなく検査用の椅子に座って腰にベルト、両手首も簡単に固定された。

直ぐに男性の看護師二人が部屋を出ると「今日は素直だね!」院長が不思議そうに言った。

美沙はこの部屋にいる四人が新和商事と繋がっていると考えていた。

「諦めた様だな!今日は色々な質問に答えて貰おうか?」

「聞きたい事は、私が録音したボイスレコーダーの隠し場所と私が誰かでしょう?」

「もう一つ聞きたい大事な事がある!」

「他に聞きたい大事な事?」

「一億円を強請り獲った男との関係だよ!」

「一億円を?いつ?」初めて聞く話に驚く美沙。

「お前がクラブJで録音した内容で強請って来て、一億円を獲った男だよ!」

「昨日?」


情報は小南と小島部長しか知らない。美沙は自分が一億円恐喝男の仲間になっている事に衝撃を覚えたが、小島部長の犯行は自分の推理の範疇で証拠も何も無い!

もしも最初から恐喝が目的なら、自分がした事は何だったのか?虚しさが込み上げる。


「自分が今どの様な立場か判る?」

「私は一億を強請り取った男とは関係ありません!」

「関係無くても我々の秘密を知り過ぎたのよ!男なら殺されるが、貴女は可愛いから外国に売られるのよ!」

「えっ、それって!」

「好き者がいて既に売れたらしいわよ!」

「そんな・・・」

「この病院で昔も手術と調教をして一人売り飛ばしたのよ!モーリスの関係でね!父親の入院を不審に思って調べに来たのよ!中々の美人だったわ!」

「その人って吉高フーズの社長さん?」

「よく知っているわね・・・無駄話は終わりにして、院長始めましょうか?」

「ボイスレコーダーの隠し場所と、一億円を獲った男を教えて貰おうか?」

注射器を持って秋山看護師が美沙に近づく「これが何か判る?」バンダナの様な物に複数の電気のコードが付いている。

「これはお前の頭に弱電流を流して、拒絶している言葉を吐き出させる装置で、前回の注射と併用すれば隠し事を全て喋ってしまうのだよ!諦める事だ!」と言って院長が目の前に機械を持って来た。

「でもね、脳に直接低電流を流す為に素肌に取り付ける必要が有るのよね!判るでしょう?」と言いながら静内看護師が電気バリカンと剃髪道具を載せたワゴンを運んできた。

美沙は怯えて「やめてーゆるしてー」と叫んだ。

「素直にボイスレコーダーの場所を白状しなさい!それと強請ってきた男は誰なの?」

「・・・」美沙はどの様に喋るのが良いのか?ボイスレコーダーの隠し場所を喋ると直ぐに調べに向うだろう?小島部長の事を喋って、もしも違っていたら?その様な事を考えていると「ガーガー」と電気バリカンを動かして脅された。

「やめてー」美沙の腕に秋山看護師が自白剤を注射した。

「うぅ」この注射で美沙の思考力が奪われ、計画的に話す事が出来なくなってしまった。

「前回より少し薬を多くしたので、拒絶できなくなったと思うがどうかな?」

「うぅ、うぅ」美沙は目が回り天井を見たり床を見たりしている。

「クラブJに勤めた目的は?」

「モ、モーリスと、し、しん、わの、せってん」

「中々頭が良いな!録音したボイスレコーダーは何処に隠した?ここに連れて来られた時には無かったが?」

「か、んけい、しゃが、こないときは、かくしている・・・」

「その場所は?」

「・・・」

「仲間の男は誰だ?」

「み、き、きむ、ら」

「二人か?」

「・・・」頷く美沙。頭がもうろうとしているので間違えて同僚の名前を言ってしまった。

「三木と木村が仲間なのだな!」

「は、はい」

「何処にいるのだ!」

「な、ごや」

「名古屋なら、話が合いますね!新大阪から東京方面に逃走した様ですから」

溝端医師は昨夜、新和商事の新垣社長から今後の対策等を話し合っていた。

院長は携帯で松永部長に仲間が二人で三木と木村だと伝えると「証拠品の隠し場所を早く聞き出せ!私の声も専務も新垣社長の声も残っている。警察も動き始めているので、急げ!」と電話口で怒鳴っていた。



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