第61話  尋問

 56-061

「ボイスレコーダーの隠し場所は?」

「いえ、く、ら、ぶ」

「はっきりしませんね!始めますか?」

「そうだな!この器具を付けて質問すると、すべてを話す。始めなさい!」

項垂れた美沙の頭を持って秋山看護師が支える。

電気バリカンを手に持った溝端医師が「ガーガー」と音を立てて美沙の頭に近づけると「や、めてーーー、うぅ、あぅ」急に反応を始める。

溝端医師は、美沙の額の中央から電気バリカンの刃入れて一気に後頭部までバリカンを走らせた。「ガーガーガー」音とともに金髪が美沙の頭から滑り落ち肩から胸に散乱した。

美沙は朧気ながらも「わあーーー」と声を上げ抵抗するが頭を押さえられているので身動きできない。溝端女医はそのままバリカンを止める事なく頭を刈り上げた。

直ぐに見る影も無い無惨な頭になった美沙。

静内看護師が横でシェービングクリームを泡立てている。

「も、う、やめてー」

「もう髪は無くなったわよ!もっと綺麗に剃り上げてあげるわ!」

「・・・」

「馬鹿な事をするからよ!新和商事の社長は恐い人なのよ!香港マフィアとも親交が有るのよ!貴女も吉高の娘と同じ様にマフィアに売られる運命なのよ!」

「う、られる?」

「美人の女は幸せよ!吉高の娘も今頃は楽しく過しているわ!」

秋山看護師が蒸しタオルをターバンの様に美沙の頭に巻き付けると静内看護師がシェービングクリームを美沙の頭に塗った。

「うぅーうぅー」顔を振るが、やがて頭が白く盛り上がる程クリームが塗られた。

「桜木さん、綺麗に剃ってあげるからね!そうすればボイスレコーダーの場所は直ぐに喋れるわ」

「いえ、く、らぶ!」口走るが曖昧で判らない。

二台のボイスレコーダーは自宅とクラブJの両方に隠してあるが、それが頭の中で区別が出来ない。


その頃ようやく後藤俊から三宅刑事に連絡が届いた。

「昼休みではありませんが、時間が空きましたのでお話します」

「助かります!」

「実は二人で病院に厚子さんのお父さんに会いに行ったのです。もう既にお父さんは廃人の様な状態で僕達の話が判らない様子でした。院長から娘さんだけなら多少は心を開くかも知れないとアドバイスを受けて、自分は面会の場所から離れたのです。しばらくしても厚子さんが戻らないので面会の部屋に戻ると、帰られたと看護師に言われ携帯に連絡したのですが、電源が入っておらず繋がりませんでした」

「それでどうされたのですか?」

「何度も携帯に電話をしたのですが、連絡が出来ませんでした。新幹線の指定席の切符をお互い持っていましたので、新大阪駅に向いましたが結局厚子さんは現われませんでした」

「その後は?」

「警察に連絡をしたのですが、大人の失踪は殆ど調べて貰えません!翌日再び病院を訪れましたが、その後は連絡が無いと言われて捜す術を失いました。二ヶ月後お父さんも亡くなられて葬式になりましたが、厚子さんの姿はありませんでした。お兄さんも捜されていた様ですが行方は判らず今日に至りました。あの病院に何か有るとしか考えられないのですが、誰も動いては貰えませんでした」

「判りました!私も今から知り合いを捜す為にその病院に乗り込むのです。何か判りましたら連絡致します」

「彼女がどの様になったのか?それを教えて頂ければそれで結構です。今妻と子供が居ますので昔の女性の話を聞かせたくないのです」

既に年月が経過している事を感じた三宅刑事は、御礼を言って中之島病院に向った。


「後藤さんも苦しんだ様だが、吉高親子はモーリスの悪事を知りすぎた事と、娘さんが美人だった事が命取りになった可能性が大きいですね」

「美沙も美人だから、同じ様な道になったりしないでしょうか?心配です!」

「それは、判らないが、新和商事がモーリスの手先で働いているのは確かだ!」

三宅刑事を乗せたパトカーは赤色灯を回しながら、高速道路を中之島病院に向かって疾走した。


「ジョリ、ジョリ」白く盛り上がるクリームを短い頭髪と一緒に剃り上げる溝端女医。

美沙はもう完全に精気を失って身を任せている。

質問しないと、半分眠っている様に見える。

「院長!この様な状態でも低電流を流せば質問に答えるのですか?」

「答える!脳が生き返るのでな!」

「ボイスレコーダーの行方と、強奪犯の詳しい潜伏先を聞き出すのですね」

「多くの事を聞く事は不可能だ!薬と電流の併用は脳の機能を壊して、白痴化を招く恐れがある」

「ジョリ、ジョリ」と剃り進んで、美沙の頭は青く光る。

しばらくして「中々可愛い感じになったわね、坊主も魅力的だわ」自画自賛の溝端女医。

「この器具を頭に巻付けて貰えるか?」

静内看護師が美沙の頭に巻付けて、横の機械とコードを繋ぐ。

「じゃあ、始めるか?」

機械のスイッチが入れられると「あっ!」急に眼が開いた美沙。

「先ず名前は?桜木絢奈か?」

「うぅ、うぅー」そう言ってから、頷く様な仕草を見せる美沙。

「ボイスレコーダーの隠し場所は何処だ!」

「ボ、イス、いえ、クラブ、J、ロッカー、のてん、じょう」

「クラブJのロッカーの上に貼付けているのか?」

「・・・」頷くと今度は「い、え」と口走る。

「これはごまかそうと抵抗しているのだ!直ぐにクラブJを捜させろ!」自信を持って言う院長。


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