第58話 特別病棟
56-058
先日と同じ診察室に連れて行かれた美沙は前回と同様に、椅子に座らされて腕に器具を巻付けられる。
「一日経過したので少し変化が有るか調べましょう」
「名前は?」
「桜木絢奈です」
「職業は?」
「学生ですがバイトで、クラブで働いています」
今日は全く針が動かない。
「バイトの目的は何ですか?」
「奨学金の返済です」この時針が大きく動く。
「正直に答えなければ、今日の検査は終りませんよ!」
「・・・」
「例の薬を持って来なさい!」
「はい!」いつの間にか看護師が静内と秋山に変わっていた。
「あっ、貴女達は!」
「昨日は結構頑張っていましたね!今日も頑張れるかな?」
「何をする気なの?」
「この部屋は防音装置が完璧で、幾ら騒いでも外には聞こえないのよ!」
「そうだ!これから質問する事に正直に答えるのだ!」
「この注射を打たれたら隠していても、自然と喋ってしまうのだけどね。それでも駄目なら向こうにある電磁波で貴女の脳を刺激して聞くのよ!そうなれば全てを喋るのよ!」
「何者?私をどうするの?」恐怖で逃げようとしても腰にベルトを巻付けられて動けない。
「院長!注射を!」
「やめてー」美沙の抵抗も虚しく、注射針が腕に突き刺さる。
「薬が効いてから質問をするから、正直に答えるのよ!答えないとあの電磁波の機械を使う事になるよ」そう言って不気味な笑みを見せる。
目の前のモニターに一人の女性が同じ様に椅子に座らされている画像が映し出される。
頭には電磁波の器具が鉢巻きの様に取り付けられ、頭の各所にパットの様な物が貼付けられている。
「この様にして調べるのですが、坊主にならないと駄目なのよ!判る!貴女のその髪も剃り上げられるのよ!」
「えっ!」美沙はすでに注射の影響で頭がぼんやりとし理解ができなくなっていた。
「院長!そろそろ薬が効いて来たと思います!」
「桜木さん!モーリスという会社を知っていますか?」
「モ、モーリス?」抵抗を見せる美沙。
「それでは、新和商事を知っていますか?」
「し、しん、わ」そう言って大きく首を横に振る美沙。
「これは葛藤しているのです。もう少し薬が効いてくると素直に答えるはずです」
「クラブJは知っていますか?」
「はい、私のアルバイト先です」
「そこに勤めた目的は何ですか?」
「し、し、せん、に、し、せ・・・」
「潜入ですか?」そう言われて頷く美沙。
「誰に頼まれたのですか?」
「じ、じぶ、んのいしで・・・す」
「自分の意志で?誰かに頼まれたのでしょう?」
「じぶん、できめ、ました」
予想外の答えに戸惑う院長と二人の看護師。
「どの様な話をクラブJで手に入れましたか?」
「J、ク、ラ、ブ、ひ、き、にげ」
「他には?」
「しんわ、し、ょうじ、きり、たに、むら、なか、」
「他にはありませんか?」
「クラブ、Jの、し、ごと」
「聞いた話を誰かに伝えましたか?」
「こ、み、なみさん」
「小南と言う男ですか?何処の誰ですか?」
「おん、な、な、ご、や、し・・・」
「女で、名古屋市の人ですか?」頷く美沙。
「変な話が多いですね!自分の意志で潜入した!小南という名古屋の女に情報を伝えた?小南が恐喝男の女の可能性が有るな?」
「恐喝男は名古屋の人間ですね!」
「もう少し聞いてみよう!」
美沙の近くに行って「もう一度尋ねる!潜入は誰に頼まれた?」
「じ、ぶ、ん、の、いし」
「何故自分の意志で行った!」
「ち、と、せ、せいか、どれい、モーリ、スから、あく、ぎょう」
三人は美沙の言葉に驚いて離れると「モーリスが千歳製菓を狙っている事を知っている様だな!」
「これは重大な秘密を知っている可能性がありますね」
「これ以上聞き出すには、電磁波を与えて薬を投与しなければ自白は難しい!専務にお伺いをしよう!一度病室に戻せ」
夢遊病の様な美沙を車椅子に乗せると院長は吉永看護師を呼んで部屋に移動させる様に指示した。
「お、わ、ったの?」検査室を出ると吉永看護師に辿々しく尋ねる美沙。
「治療が大変だったのね!夕方迄眠れば元気になるわ」
「あ、おね、がい、がある、の!」
「何?欲しい物でもあるの?」
「ノート、ペ、ぺンが欲しいの」
「判ったわ、その程度の物なら大丈夫だから、食事の時に持って行くわ」
それだけ喋ると美沙は疲れて眠ってしまった。
吉永看護師は治療の影響だろうと、ベッドにもう一人の看護婦と一緒に、美沙を寝かせて病室を後にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます