第57話  現金受け渡し

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丁度昼頃、美沙は睡眠薬を飲まされた長い眠りから目覚めた。

潜入取材がモーリスに知られたのでこの病院に閉じ込められた?美沙はシャワーを浴びて昨日の悪夢を消し去ることにした。病室には一応生活ができるようにシャワールームとトイレが常備されていた。

目覚めた事を監視カメラで確認した看護師が、食事を運んで来たのは美沙が風呂場から出て来た時だった。

昨日の診察時にいた看護師とは別の看護師でこの病室の担当の様だ。

名札を見て「貴女昨日も食事届けて下さったわね!吉永さんっておっしゃるのね!」とわざと明るく話しかける美沙。

「今朝は普通ですね。治療を受けられたからですね。でも、発作的な病気だから、気を付けてくださいね!」

「本当にこの病院は精神病院ですか?女性専用の診察室が在る様ですが?」

「この病院は特に女性の患者さんを中心に受け入れています。桜木さんの様な性的な患者さんも多いのですよ!その為婦人科の先生が来られます」

「私は、病気では・・・」と口籠もる美沙。

「昨日はどの様な治療を受けられたのですか?今日も院長の検査がある様ですよ!」

「えっ!」

目の前にサラダとトーストそしてコーヒーが並べられると空腹の美沙は直ぐにでも食べたかったが、堪えて話を聞いた。「昨日の看護師さんはここの病院に常にいらっしゃるの?」

「静内さんと秋山さんは溝端先生が連れて来られたのよ!院長が桜木さんの治療の為にね」

「えっ、あの先生と看護師さんは私の為だけに?」

「そうですよ!ですから桜木さんは何方かお偉い方のお嬢様なのかと看護婦の仲間では噂になっています」

その時、吉永のイヤホンに「余計な事を喋るな!」と院長の声が聞こえ、驚いて「はい!」と言って直ぐに美沙の病室を後にした。

食事をしながら、美沙は自分の為だけにあの女医と看護婦達が来た?なぜ?これは明らかに監禁するためではないか思った。


小島は、新幹線のトイレで鞄の中身を確認すると、思わず笑みを溢した。

自分が犯人だと誰も知らない!馬鹿な新人記者が大スクープを取って来たことで大金が手に入った。

小島は、この後安田を上手くモーリスの連中が始末してくれたら、全ては闇の中に消えると考えている。帽子を脱ぎサングラスと付け髭を外すと、グリーン車の自分の席に戻った。


封筒を受け取った松永部長は糀谷専務の元に急いで戻ると、封筒の中身を確かめた。

安田俊幸の携帯番号が記載されて、検討を祈りますとワープロで打たれていた。

「専務!安田と犯人は通じていたのですね!」

「その様だな!だが携帯に電話をしても登録していない番号には出ないでしょうね。どの様にしたら良いでしょうか?」

「方法は有る!この番号から持ち主の住所を割り出すのだ!」

「承知しました!早速手配します!」

「安田を捕まえればこれ以上の混乱は起らないだろう?あの潜入した女に恐喝男の手掛かりを吐かせたらお金も取り戻せる可能性が有る」

「女を売り飛ばす準備は出来ている様ですが、肝心の情報は未だに得ていないようです」

「お金を持ち去った男の年齢と特徴は?」

「五十代後半でしょうか?中肉中背でひ弱な感じでした。髭とサングラスで表情は判りませんでした。ただ新幹線で上り方面に行った事は確かです」

「髭、帽子、サングラスでは殆ど人相は判らないな!」

「あの女子大学生との接点が問題ですね!必ず知っている男だろうと思います」

「今日、自白しなければ薬を使用する事なる」


その頃、三宅刑事と三木は別れて、高槻のインターチェンジからラブホテルまで半時間以内で美沙を監禁出来る様な施設を捜していた。

三木は、一般の家とかに監禁するのなら、この様な高槻まで来る必要が無い。おそらく、簡単に預けられる何らかの施設ではないかと思った。ナビと地図を使って捜し始めた三木は、確か眠らされていたな。病院?そう閃いた。すぐ様三宅刑事に連絡して、北の方の病院を調べて見ますと言った。

三木は、入院施設の有る病院を順番に捜し始めた。


月曜日、宮代会長は電話で赤城から娘の美沙が行方不明になったこととその経緯を聞いた。

モールスの件で一応出来る事を全て完了してから、京極社長に談判に行く予定にしていた宮代だったが、予期せぬ自体に深刻な表情に変わった。

赤城課長には事件が解決するまで出社せず自宅で待機しても良いと伝えた。

宮代会長は、自分の会社の為に身を挺して動いてくれた美沙の安否を気遣った。


中之島病院では何もできずに病室で待機している美沙に「桜木さん!院長先生の診察ですよ!」吉永がもう一人の看護師と一緒に鉄格子の向こうから声をかけた。

「この病院には今、何人の患者さんが入院されているのですか?」

吉永は先程院長から叱られたので喋らないが、もう一人の看護師が「この病棟には重症、軽症の患者さん合わせて三十名の女性が入院されていますよ!」と答えた。

「勿論私は重症ですよね!」笑みを浮かべて言うと「はい!早く治って下さいね」そう言って右手に手錠をはめて鉄格子から連れ出した。

「病棟は他にも有るのですか?」

「本館には男女の患者さんが五十人程入院されていますよ!この病棟は女性専用で、患者さん同士の接触は殆どありません」

特別病棟なのだと理解した美沙。

厳重な警戒体制は女性専用だからなのか?他に理由が有るのか?注意深く観察しながら廊下を歩く美沙。

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