第55話 精神鑑定?
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美沙は、昨夜のことを思い出そうとした。
昨夜、シャンパンで乾杯して、眠ってしまった。薬が混入していた事は明らかだ。誰の仕業なのか?そして、この病院は何処に在るのだろうと考えながら、食パンを食べて牛乳で流し込んだ。
お腹の空き具合から昼に近いと推測した。
しばらくして先程の看護師が食器を片づけに来たので「私の持ち物は?」と尋ねた。
「何も持っていませんでしたよ。救急隊員の話では、道端に倒れていて、救助しようとすると突然起き上がり錯乱状態だったと聞いています。
「私救急車で運ばれたのですか?」
「はい。裸足で服は泥まみれだったと聞きました」
「えっ」美沙は全く記憶が無く呆然とした。
唯、桜木と呼ばれたので桜木を名乗るのが良いのだと思った。
しばらくして「桜木さん!院長先生の診察ですよ!」二人の看護師が鉄格子を開けて入って来ると「手を前に出しなさい」と言った。
手を出すと「えっ、何をするの?」差し出した右手首に手錠をはめられた。
「病室から出る時は、必ずしなければ出せません!暴れると危険ですからね!」
「私は病気ではありません!」美沙が訴える。
「行きましょう!」美沙の言葉を無視して歩き始める。
囚人の様に連れられ診察室に入ると、看護師が数名居て「色情狂で入院された桜木さんです!」と背中を見せている院長と呼ばれる男に告げた。
「色情狂って?違います!何かの間違いです!ここは何と言う病院ですか?」
「ここは中之島病院という精神的に障害の有る人が入院する所だが?」
そう言いながら院長が身体を正面に向けた。
細身で神経質な感じの院長は「椅子に座りなさい!発作的に暴れるらしいが、今は正常の様だな!」
「何処も悪くありません!気が付いたら病室にいたのです!」
「そうですか?では、検査をいたしましょう?検査室に連れて行きなさい!」
美沙は、手錠をはめられたまま看護師に両脇を抱えられ連れて行かれた。
検査室は薄暗く、大きな椅子が中央に置いてあった。
「その椅子に座りなさい!今から目の前のスクリーンに写真が映し出されると同時に院長が質問をします。それに答えるあなたの脳の反応が横のグラフに表示されます。その数値で結果が判定されます」
「はい」検査をすれば自分が正常だと証明されると美沙は思った。
椅子に座る美沙の腕を、肘置きにベルトで固定してから血圧を測る様な物を巻き付けた。
「院長先生!準備で来ました」
「名前を言って下さい!」
少し考えて「桜木絢奈です!」と答えた。
「仕事は?」
「大学生です!」横のグラフが動く。
「他に何か仕事かバイトをしていませんか」
「北新地のクラブJでバイトをしています」
「目的は何ですか?」
「奨学金の返済です!」そう言った時、大きく針が動く。
「何か隠していますね!」
「いいえ!何も隠していません!」再び大きく針が動く。
院長が操作してグラフの針を動かしているのだ。
「変ですね、正直に答えていませんね!次は写真を見て何をしているか答えて下さい!色情狂の検査です!」
いきなり前に男性自身のアップが映し出された。
「あっ」顔を横に向けて頬を赤く染めた。
グラフの針が大きく動くと「早く答えて下さい!」
「ぺ、ペニスです!」グラフの針が動いて止まらない。
「もう少し正確にお答え下さい!」
「男性の方のペニスです!」
「次!」
画面にSEXのアップ写真が映し出されて、動揺しながら「もう辞めて下さい!」大きな声で叫ぶ美沙。
「もう一度質問します!グラフJで働いている目的は何ですか?」
「奨学金の返済です!他に何もありません!」
再びグラフの針が大きく動くと、今度は画面に女性の性器が大きく映し出されて、針が大きく動いている。
「辞めて下さい!私は病気ではありません!」
「いいえ!確かに色情狂の症状が認められます!入院治療が必要です!」
「違います!助けて!」必死に訴える美沙。
その頃、美沙の危険を知った小南と木村が急いで大阪にやって来た。
少し遅れて三宅刑事も若い刑事を連れて、大阪府警に入って捜査状況を尋ねていた。
確かに、車は高速道路で移動して高槻のインターチェンジで降りているのですが、二人の姿は、防犯カメラに映っていたが赤城美沙の姿は確認出来なかったと話した。
その後高槻インターの近くに在るラブホテルに入った事も確認されていた。
大阪府警がクラブJに聞き込みに行った。
沙紀子ママが応対して「その日は、ホステス達は殆どがタクシーで帰り、数人は彼氏かご主人が迎えに来ていました。私たちにはお店を出た後の事は判りません」と言って微笑んだ。大阪府警はそれ以上の事は聞き出せなかった。
緊急用携帯電話のGPSも、店の近くで電源が切られて所在不明になっている。
「僕はあの黒木の車に乗せられていたと思うのです」と木村が言った。
「でも防犯カメラに美沙の姿が無かったのでしょう?」
「横たわって後部座席にいれば映りません」
「でも二人はラブホテルに行ったのを確認されて、昼前に出たと大阪府警が調べているわ」
「僕は高槻インターの付近を調べます」と三木が言った。
三木は黒木を疑っていた。
小南は美沙の借りていたマンションに何か手がかりになるものを残していないかを調べ、木村はグラフJの動きを調べる事になった。
三人は美沙を見つけるために奮闘した。
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