第53話 連れ去られた美沙
56-053
「あの女が情報を流したかの確認が一番だ!至急調べろ!」
「はい、持ち物検査と行動を監視させます!」
「泳がせて脅迫してきた男との接点を探れ!」
「お金は用意しますか?」
「準備はしておけ!あの女が仲間なら、人質にできるが違う場合は厄介だ!」
直ぐに沙紀子ママに指示が飛んだ。
早速クラブの更衣室を監視する洋子とママ。
絢奈が常に持ち歩いているポーチの中に入っていると目星を付けると、洋子とママの連携プレーでポーチを置かせたまま絢奈にお酒の交換に行かせた。
絢奈は洋子と一緒に席を立つと、ポーチの中を調べてボイスレコーダーを見つけた「あった!」と小さく叫んだママ。
二人が戻る前に松永部長に連絡し、次の指示を待つ事になった。
「やはり、専務の予想が的中しましたね!どう致しましょう?」
「脅迫男との関係を調べなければ、まだ手は出せない」
「簡単に自白しますか?」
「我々の本丸に潜入する様な女だ!普通では口を割らないだろう?それにもし脅迫男と仲間で無い場合は?」
「それではどの様に致しますか?」
「中之島病院に放り込め!院長には頼んでおいた!」
「精神科ですね、吉高フーズの社長を入院させた病院?」
「あそこなら、自白させる薬も有るので真相が判る!その後は新垣に頼んで海外に売り飛ばせ!知り過ぎたのが命取りだった!可愛いので油断した!糞!」舌打ちする専務。
松永部長から沙紀子ママに明日の土曜日の夜、中之島病院に連れて行くよう指示があった。
何も知らない美沙は、今夜もモーリス関係の客が来なかったと肩を落として帰って行った。
近所に部屋を借りて見守っている三木は、美沙のアパートの灯りを見て「今日も無事に帰ってきた」と安堵して眠った。
翌日の昼間、松永部長のメールに「金は鞄に入れ新大阪駅の新幹線中央改札の一番右に来い!私はハンチング帽子にサングラス姿で受け取りに行く!小細工をすれば直ぐに記事が出る!口封じに桐谷を始末しても証拠は有るから、諦める事だ!他にも沢山の悪事の証拠は握っているから一億は安いぞ!」
直ぐに松永部長は糀谷専務に相談に向かった。
「確約の証拠を貰わなければ払えないと伝えろ!あの女の情報以外にも何か持っているな!」
「女の話で揺さぶりますか?」
「それもしてみろ!」
松永部長はメールで確約の証拠を要求して、お前の情報源の女を知っていると伝えた。
「漸く判ったのか?その女は差し上げる!煮て喰おうが焼いて喰おうがお好きに!」
馬鹿にした文章の返信に、益々怒りがわいてくる糀谷専務。
再びメールが届いた「安心しろ一億貰えば、その女意外に情報を知っている人間を教えるから好きな様に処分すれば良い!」。
「信用する以外無い様だな!この男も相当な悪者だ!あの様な若い娘に恐ろしい仕事をさせて、自分は一億を手に入れて逃げるのか!」
糀谷専務も脅迫男に呆れる。
「あの女は予定通りにするのですね?」
「脅迫男との接点が必ず有るから明日実行だ!知り過ぎているだろうから、どこまで知ったかを聞き出せ、そして男も見つけ出してから二人とも始末しろ!」
「新垣社長にも詳細を伝えますか?」
「今後の事もあるから、全ての段取りを話して準備をさせろ!」
数日後に一億を支払う準備をした専務は会長に許しを得る為に報告に向かった。
会長は「全てを任せていますから、闇に葬って揉み消して下さい!」
それだけ言うと闇の資金の出金を許可した。
会長は長年糀谷専務に闇の部分を任せていたが、過去にはこの様な大金の出金は無かった。
土曜日の夜、仕事が終わるとママが「今夜もご苦労様でした!売り上げ達成が出来たので乾杯しましょう!皆さんには金一封が出ています!」
「はい、シャンパングラスを持って下さい!」
「嬉しいわ!金一封って幾らなの?」
「久しぶりね」
封筒とシャンパングラスが洋子の手で配られる。
洋子から受け取ったホステス達は口々に「一万だわ!」「ありがとうございます」とお礼を言った。皆に金一封がいきわたると「乾杯!」と大きな声で全員が一気に飲み干す。
「帰りましょう!」
「詢奈さんは、今夜も黒木が送ってくれますからね!」
「いつもすみません!」
努めた日の半分程度は、黒木に送って貰っているので美沙は全く警戒をしていなかった。
ホステス達が部屋を出ると急に睡魔に襲われる美沙、今夜は酔う程飲んでないのに疲れかな?と思ったが先日の酔いを思い出し、薬!?専務の所に連れて行かれる。そう咄嗟に思った美沙は携帯の緊急電話のボタンを押した。
三木の携帯が鳴った。
「もしもし!」直ぐに電話に出たが「たす・・け・・」美沙の声が弱々しく聞き取れない。
「どうした!直ぐに向かう!待っていろ!美沙!」
「・・・」
その後は全く美沙の声が聞こえ無くなった。
三木は近くのコンビニで夜食を食べていたのを、放りだして飛び出して行った。
「美沙!」叫びながら走るが、信号は無情にも赤に変わった。
「眠った様だわ!運びましょう?」
ホステスたちが着替えてからの乾杯だったのでお店にはもう誰も居ない。
黒木が美沙を抱き抱えて、通用口から出て車に運び込む。
店に三木が着いた時に、車の助手席にママが乗りこみ発進した。
その時、「あの車かも?」そう思ったが、美沙はまだ店に居るかも知れないと通用口を叩いた。しかし中からは反応が無かった。
「ママ、誰か店に来た様ですが?」
ミラーを見て黒木が言うと「酔っ払いでしょう?女の子の帰りを待つ男がいるのよ!」
そう言って笑った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます